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適材適所のなかで「やる気」は起きる
人材には、それぞれ個性と呼ばれる思考行動パターンがあり、その個性の特徴となる強みと弱みがあります。その個性や強みにより、その人材を適当な職種や地位につけることを『適材適所』といいます。
人は、感情を持った生き物です。
自然界に存在するすべてのものが、『強み』で生きています。同様に、人間界でも、『弱み』で戦い成功した人は皆無だといえます。すべての力の源となる『やる気』という感情は、個性や強みに合う環境でしか生まれにくいといえます。
人の『やる気』やそこから生まれる結果を期待するのであれば、人材の個性や強みを考慮し、その人材に合った環境を用意すること、または、環境に合った人材を用意することが必要になります。
人の個性を大きく分ける
人材の個性は、大きく分けると、拡散型と保全型のふたつに分けることができます。
拡散型のタイプは、創造力や行動力があり、積極的に攻めに行こうとする人材です。狩猟移動民族に例えられ、開拓や変化を好む人材です。弱みは、持久力や協調性を必要とする守りの行動です。
保全型のタイプは、几帳面で持久力があり、協調性のある守りに適した人材です。こちらは、農耕民族型に例えられ、安定や秩序を好みます。弱みは、行動力や創造性を必要とする攻めの行動です。
人間は、強弱はあるものの、この拡散・保全のどちらかに優位性を持っています。
この特性は、先天的に決まるものであり、教育や本人の努力で変わるものではありません。最近の集団遺伝学では、このあたりの拡散・保全の性質を決定付ける染色体が解明されています。
企業の活動には、この攻めと守りのどちらの要素も必要であるといえます。
個性や強みで人材を活かす
拡散型と保全型の人材に適した仕事の例です。
拡散型の人材は、営業ならば企画提案型や顧客開拓型、商品開発ならゼロからの新商品開発に向くといえます。
保全型の人材は、営業ならば、人間関係を重視したルート営業や紹介を狙うスタイルが良いといえます。商品開発ならば、いまある商品の改善や、コスト管理、品質管理にも適性があります。
この上記の場面で、拡散型・保全型人材への対応を逆にするとどうでしょう。
拡散性の人材は、ルート営業という変化のない環境ではマンネリ感を覚え、開発のためのデータ採取という作業ではストレスを感じることでしょう。
逆に保全型の人材は拡散型人材と違い、飛び込み営業や企画のような変化や自由度の高い環境やミッションでは、ストレスを感じてしまいます。
人材を取り巻く環境すべてに
教育方法や人事制度、そして、人と人の組み合わせなどにもこの適材適所の考え方は当てはまります。
教育方法では、拡散型は自分で選択し判断したいタイプなので、細かい指示や制約を受けるとストレスを感じ、本来の良さである創造性や行動力を発揮できません。褒めて育てるのが良いでしょう。
それに対し、保全型人材は、手順を重視した段取りが好きで、物事を密画的に理解する傾向があります。資格取得や講習会への参加もよいでしょう。
人の組み合わせも、拡散型の上司に保全型の部下という組み合わせのように、そのチームの目的により組み合わせを検討していく必要があります。
人事制度では、成果主義のように結果を強く求められる環境では、保全型人材の行動が萎縮したり無難化するという事例があります。
『適材適所』とは、職種、職場、パートナーはもちろんのこと、教育方法、顧客、商品、営業方法、動機付けのしかた、人事制度など人材を取り巻く環境のすべてに当てはまることです。
配置ミスによる損失
人材を適性のある環境に配置できるか否かにより、その人材のやる気や仕事量に大きな差がでることは至極当然のことだといえます。教育の面でも、『やる気が起きない=主体性がない』の状態では、その効果は期待できません。
適材適所とは、成功すれば天国、失敗すれば地獄だといえます。それは、会社側にとっても、そこで評価される人材側にとってもいえることです。
人材に適していない環境に配置することは、生産性や教育効果などにとって、大きな損失といえます。コストカットや人件費抑制の努力も必要ですが、この人材の配置の段階で発生する一見してわかり難い、しかしとても大きなロスについて、一度考えてみることをお勧めします。
経営者や人事担当者は、人材の配置や環境との関係に熟考と細心の注意を払いたいものです。
システムと風土が適材適所を実現する
ここまで、適材適所の事例を挙げてきましたが、それ以上に大切な問題があります。
それは、組織とその組織の持つシステムの問題です。一時的に適材適所を実現しても、組織のシステムや風土ができていなければその効果を発揮することはできません。
適材適所を実現し、その効用を持続させるためには、組織とそのシステムを構築していく必要があります。
最後に適材適所を実現するためのポイントを挙げます。
(1)組織には偏りがなく、いろいろな人材がいること
適材適所ができていないという理由に、「人材の偏り」があります。
組織は、いろいろな個性の人材がいて、初めて活性化します。それが、組織の経年や人事施策などにより、似かよった個性の人材で構成されている組織では、斬新な意見や活発な討議は生まれ難いといえます。そして、その状態は、欲しいところに欲しい人材がいないという人材不足の状態も意味します。
人材の抜擢や今後の採用戦略の見直しなどにより、「人材の偏り」を正常な状態に戻す必要があります。
(2) 適材適所を実現するシステムの構築
組織は、適材適所を実現するためのシステムを持つ必要があります。
この仕事には、「独創性のある人材がいる」ということで、採用したとします。では、この目的にあった人材を採用するシステムが組織にあるでしょうか。特に、中小企業では、職種やポジションは限られますから、ギャンブルのような採用をして目的に合わない人材を採用するわけにはいけません。
そして、その採用した人材を活かすだけの器量が組織側にあるでしょうか。
独創性のある人材を採用しても、上司にこの人材を適切にマネジメントする力がなければ、その独創性が活きることはありません。ましてや、その上司に評価などもできるはずはありません。
採用 → 教育 → 配置 というインフラを適材適所という視点から組織内に構築する必要があります。
(3) 個性を出してもいい、という風土の構築
これまで組織の中で生き延びるために必須であった擬態や犠牲構造を排除しても不安はないという組織風土、すなわち「異端を認める風土」を創る必要があります。
この「異端を認める風土」とは、中小企業では経営者、部署ではその長の影響を非常に受けやすいといえます。
会議の場で、新しいアイディアを発言した人材に対し、『そんなことは、できるはずはない。つまらないことをいうな』と検討どころか否定的なことを言った場合はどうでしょうか。この人材や周囲の人材は、これから、自分のアイディアを口に出すことはなくなることでしょう。
組織の「異端を認める」という風土は、(2)のシステムの中で挙げた、人や個性についての教育のインフラの有無も影響してきます。
多くの企業で求められている会社を変えるような人材の発生は、そうなりえる人材とその人材の意見に耳を傾ける上司の存在、そして、その人材や上司が育ち活きるインフラが組織にあって初めて成り立つものであるといえます。
| プロフィール・連絡先 |
矢田祐二(やだ ゆうじ)
ワイズサービス代表(組織人事コンサルタント)
三重大学生物資源学部卒業後、総合建設業社勤務後、組織人事採用を専門とするコンサルタント事業・講師活動を開始。
組織心理学・組織編成理論を用い、理念からの一貫性を持つ組織を構築するためのコンサルティングを行う。専門領域は、組織デザイン・人材採用・教育研修プログラムの構築・プロジェクト支援。
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