| 身のまわりには金属製品が多くあります。金属製品は簡単には壊れませんが、外から力を加えると、それが材料の強度以上であれば、ひびが入ったり、折れたりします。 |
| ところが、例えばモーターのシャフトなど繰返し作動する部品を使用していると、突然折れてしまうことがあります。このような壊れ方が起きる原因の一つとして、金属疲労という言葉を耳にします。疲労破壊が鉄道車両、航空機などで起きると、大事故につながる恐れがあります。 |
| そのため、材料自身の性質や部品形状から寿命を予測し、一定の安全を見込んで疲労破壊が起きる前に取替えます。 |
| また一方で、交換時期を長くしたり、疲労破壊を起こさせない工夫も行われています。 |
| 金属は、プレス・切削・溶接などの加工をすると、容易に目的とする製品形状になります。しかし、加工が終わっても内部には加工で受けた力の一部が残っているものです。 |
| それを残留応力といいます。残留応力には、引張力と圧縮力があります。例えば、鋼板をプレス加工すると曲げ部の外側に引張力が、内側に圧縮力が残ります。また、溶接した場合も、溶接金属部のすぐ近くに強い引張力が、その周辺の広い範囲に圧縮力が発生し、両者がバランスを保っています。 |
| これらのうちで圧縮力は寿命を長くする効果がありますが、引張力は疲労破壊を誘導します。特に表面付近の引張力は影響が大きいので、圧縮力が残るような処理が施されます。 その例を、以下に述べます。 |
| 昔からよく行われてきた方法に、ハンマーで叩くことがあります。これをピーニングといい、表面付近の力を容易に圧縮力にすることができ、効果も大きいことが分かっています。 |
| そこで、より能率的に表面に外力を加える方法がいろいろ試みられてきました。代表的なものにショットピーニングがあり、当所でもピーニング装置を設置して研究を行っています。 |
| これは細かい粒子を吹き付ける方法で、表面から深さ0.3mm程度の範囲を圧縮力に変えることができます。最近では、より深くまで影響が及ぶように、あるいは効率や作業性を考慮した方法が考案されています。 |
| 最近の話題として、レーザピーニングがあります。レーザは光なのでレンズで集光でき、金属を瞬時に蒸発させるほどのエネルギーに高めることができます。金属加工の分野では切断、溶接、熱処理などに広く用いられています。このレーザを用いてピーニングと同じ効果を持たせる技術が開発されています。 |
| その原理を図1に示します。材料の表面に水の膜を作り、水を透過する性質を持った高ピーク出力のパルスレーザを照射すると、水の膜と材料の間で高圧プラズマが発生して、材料の表層部を塑性変形させ、圧縮の残留応力が形成されるためです。 |
 |
|
図1 レーザピーニングの原理 |
|
 |
|
図2 ピーニング後の圧縮残留応力の分布 |
|
| その効果は図2にみられるように、表面から深さ1.0mm近くまで及び、ショットピーニングの約4倍に達する測定結果が報告されています。この特徴を生かして、航空機のジェットエンジン部品の耐疲労破壊性の向上、原子力発電プラントの溶接部の応力腐食割れ防止などに適用した事例があります。 |
|
| 同じような目的で、レーザに代わるものとしてウォータージェット、超音波などを外力として利用する方法も開発されています。当所でも超音波ピーニングの可能性を検討しています。 |
|