一宮市を中心とする尾張西部地域は、国内最大の毛織物産地を形成して、紡績、撚糸、織布、染色整理業などの羊毛関連企業がそれぞれ分業体制をとり、原料から加工・製品開発までの生産を行って来ました。
しかし、近年は、毛織物関連製品の需要の減少、中国製品をはじめとする低価格製品の流入などの影響を受け、産地の企業数及び生産量(工業出荷額)は大きく減少しています。この様な現状から脱却するために、羊毛の新しい利用技術を開発して、毛織物以外に羊毛の新規用途展開を行うことが地元企業から強く要望されていました。
愛知県産業技術研究所尾張繊維技術センターでは、この産地のニーズに対応するため、羊毛の主成分である「ケラチン蛋白質」に注目して、羊毛からケラチン蛋白質を抽出し、パウダー・再生繊維・成形体(フィルム)・カプセル・スポンジ(多孔体)等に加工し、試作研究を行ってきました。これまでに当センターで行った研究内容の概略を以下に紹介します。
1. ケラチンパウダー
羊毛のケラチン蛋白質を抽出する方法には、酸化法と還元法との二つの方法があります。当センターでは高分子量の蛋白質が得られる還元抽出法を用いて、羊毛からケラチン蛋白質を抽出・精製し、この溶液を微粉末化して水に可溶性の活性ケラチンパウダー(粉末)を開発し(写真1)、これを原材料として各種製品を試作しました。
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