環境対策と木材の利用
愛知県産業技術研究所  記事更新日.08.01.04
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■チーム・マイナス6%
最近、「チーム・マイナス6%」「クールビズ」「ウォームビズ」という言葉をよく耳にします。 どのような意味なのかご存じですか。

現在、深刻になっている地球温暖化対策のために世界が協力して作成した京都議定書が平成17年2月16日に発効しました。 この中で、先進諸国に対して、2008〜2012年の間に1990年比で温室効果ガスの削減が数値として義務づけられ、世界に約束した日本の目標が、温室効果ガス排出量の6%削減です。これを実現するための国民的プロジェクト、それが「チーム・マイナス6%」です。

プロジェクトでは温室効果ガス排出削減のために、私達が着ている衣服を調節してエネルギーの消費を押さえようというビジネススタイルを「クールビズ」や「ウォームビズ」などと呼んでおります。その他にも買い物袋持参や車のアイドリングストップなどいろいろな取り組みが行われています。 詳細は、 http://www.team-6.jp/を参照してください。

■バイオエタノール
また、「バイオエタノール」という言葉も最近よく聞かれます。一般にエタノールは石油や天然ガスを原料に化学合成して作られますが、「バイオエタノール」はトウモロコシなどの穀物を原料としてお酒を醸造するのと同じ方法で作られたエタノールのことです。

ところで、木材、もみ殻などのバイオマスが燃焼すると、石炭、石油、天然ガスのような化石燃料と同様に二酸化炭素(CO)が発生します。しかし、植物は成長過程で光合成によりCOを吸収していますので、種まき、収穫、加工、廃棄などのライフサイクル全体でみると大気中のCOは増加せず、収支はゼロであると考えられます。このように、COの増減に影響を与えない性質のことをカーボンニュートラルと呼びます。

「バイオエタノール」はカーボンニュートラルであることから、東京圏では車の燃料のレギュラーガソリンに「バイオエタノール」が添加されており、今後全国に広がっていく模様です。大阪圏でも「E3」ガソリンとして廃木材やチップから作られたバイオエタノール添加ガソリンのスタンドができています。

このように、温室効果ガスを削減するためにいろいろな対策が取られていますが、逆に「バイオエタノール」を作るために、収穫された食用にもなる穀物を転用したり、農地を確保する目的でオレンジ畑の木を伐採したり、大豆や小麦畑をトウモロコシ畑に転作したりしています。これにより、オレンジや大豆、小麦などの値段が上昇し、トウモロコシを餌とする牛や鳥、さらに卵、マヨネーズ、インスタントラーメン、お菓子など、これらに関連する商品も値上がりしています。

■木材の有効利用
ここで、木材などのバイオマス資源がカーボンニュートラルであるならば、燃焼せずに木材などの固体の状態で長く置いておくことができれば、大気中のCOを削減することが可能です。その中の一つの技術として、製材加工で出た「おが屑」などを燃料としないで、接着剤で固めてボードとして利用することも有効であると考えられます。

また、蒸気で蒸し焼きにした木粉や竹粉には、加熱・加圧によって流動し易く、自分で接着する力が強くなる特性があります。この性質を利用して、通常の「おが屑」に接着剤として蒸気処理した「おが屑」を混ぜて、熱をかけながらプレスすると、写真に示すような100%木質材料の環境に配慮したボードに生まれ変わります。さらに使い終わった後に砕いてボードの材料や別の材料にすることもできます。

このように元の材料からまた別の材料へ何度も利用することを「資源のカスケード利用」と呼んでいます。今後、このカスケード利用が重要になってくると思われます。
愛知県産業技術研究所では、木材の有効利用について研究を進めています。また、木材に関するいろいろな物性試験を実施しています。ここで得られたノウハウを活かして、一般の企業からの依頼試験なども実施しています。当研究所のご利用をお待ちしています。