三河繊維技術センターが立地している東三河地域は、漁網、ゴルフネット、建設用安全ネットなどを製造する製網業や、繊維ロープを製造する製綱業が盛んです。このため、当センターには、漁網やロープなどの引張強さや摩耗特性などに関する試験依頼や技術相談が多数寄せられています。
そこで、当センターで実施している種々の依頼試験の中から、他の試験研究機関ではほとんど手がけていない、網やロープ等の摩耗特性を評価する試験についてご紹介します。
1. 漁網やロープの摩耗試験の必要性
サケ・マス流網漁船による操業では、漁網を操作する場合に揚網機や船べりでこすられて網が摩擦されます。そのため、網の耐摩耗特性が必要となります。また、網の表面が毛羽立つと網糸が太く見えたり、夜光虫が付着して網糸が光り、魚の掛りが悪くなることもあります。
また、トロール船による機船底びき網操業では、近年の船の大型化に伴い網も大きくなったため、網には20〜30トンもの負荷がかかり、より強力な網やロープが必要になっています。とりわけ、アフリカ沖あたりでは、荒場操業といって海底の起伏の激しいところで操業しているため、網を岩に引っ掛けたり、海底と摩擦することの多い使い方をします。また、現状では人手を省くために漁具を省力化、機械化する傾向にあり、網を機械で巻き揚げることで起きる擦れが大きな問題となっています。
このように、操業中の網やロープは幾つかの摩耗現象に遭遇しますが、海中における実際の挙動は良く分かっていません。従って、大漁の時には問題になりませんが、不漁のときに網が損傷していたりすると、たちまち、製網業者に「耐摩耗特性が悪かったのでは…?」といった苦情となって跳ね返ってきます。その結果、当センターに相談が寄せられ、原因を究明するため摩耗特性を評価する試験などを行うことになります。
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