三次元CADシステムにおけるデータ交換
愛知県産業技術研究所  記事更新日.11.01.05
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■はじめに
CAD(キャド)とはComputer Aided Designの略で、コンピュータ支援による設計の事を言い、一般的には「コンピュータ上で製品設計をするための専用ソフトウェア」(CADシステム)として使われます。元々はアメリカで航空機の設計を目的として開発され、その後、コンピュータの急速な発展とともに、機械や建築、電気などの各産業用に様々なCADシステムが開発されました。立体形状を設計できるCADシステムを三次元CADシステムと呼び、高スペックの三次元CADシステムでは三次元自由曲面を有する複雑な立体形状も精密に設計することが可能です。特に自動車を中心に機械産業が盛んな愛知県では、大企業のみならず中小の部品メーカーでも三次元CADシステムの導入が進み、CADはものづくりにおいて必要不可欠なツールとなりつつあります。

■CADデータの交換
CADシステムごとに設計データ(CADデータ)のファイル形式が異なるため、異なるCADシステム間でCADデータを交換する場合には、CADシステムのトランスレータを用いていったん中間ファイルに置き換える方法がとられることが一般的です(図1)。中間ファイルとして代表的なものとしては、IGES(Initial Graphics Exchange Specification:ANSI(アメリカ規格協会)の標準規格)があり、ほとんどの三次元CADシステムが対応しています。しかし、完全に互換性が保たれているわけではないので、複雑な形状や設計条件によっては、データの一部が破損するなどの不具合が生じることがあり、データ交換時のトラブルによる損失が重大な問題となっています。そこで新たに三次元CADの中間ファイルとしてSTEP(Standard for the Exchange of Product model data:ISO(国際標準化機構)の標準規格)が規格化されました。IGESより正確なデータ交換が期待できるため、今後はIGESからSTEPに移行していくものと思われます。
また、異なるCADシステム間で中間ファイルを介さずに直接データを変換するダイレクトトランスレータを用いたデータ交換の方法もあります(図2)。ただし、ソフトウェア内部での処理は中間ファイルに変換した場合と同じことが多いため、この方法でも完全な互換性が保たれるわけではありません。
自動車産業においては、企業城下町が形成されてきた歴史的背景もあり、関連企業同士で使用するCADシステムを統一する傾向が強く、CADデータの交換に際する不具合を回避しています。ただし、CADシステムも他の一般的なコンピュータソフトウェアと同様に、時々バージョンアップします。同じCADシステム同士でもバージョンが異なればファイル交換ができない場合も起こり得るため、常に関連企業同士でバージョンを揃えておく必要があります。