ニットの新しい技術について
愛知県産業技術研究所 記事更新日.11.11.01
尾張繊維技術センター

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■はじめに
400年以上前のイギリスで靴下編み機(ヒゲ針)が発明され、現在主流で用いられているベラ針は150年以上前のイギリスで発明されました。編み機は手動から自動化、高速化され、コンピューター制御の編み機によって、ニット製品はますますその可能性を広げています。近年コンピューターの発達により、編み機の機能はさらに多様化しました。ここでは、よこ編みの編み機である丸編み機と横編み機の新たな機能とニットの新技術について紹介します。

■丸編み機の新技術
丸編み機は円を描きながら円筒状の生地を編成します。多数の給糸口があり、生産効率が良いのですが、編み幅を変えられません。 表裏2枚の編地をつなぎの糸でつないだ編地があります。つなぎの糸を編み込む時、表裏の編地の距離を広くあけることができる編み機があります。この編み機を用いると、2枚の編地の間に空間ができるスペーサーファブリックを編成できます。つなぎの糸にモノフィラメントを用いると弾力・厚みのある生地を編成することができます。 表裏2枚の編地の中間にかさ高の糸を挿入することによって、キルティングを編成できる編み機があります。コンピューター制御のジャガード柄と組み合わせることで高級感のあるキルティング生地の編成をすることができます。 両面選針電子柄編み機を用いれば、表裏でジャガード柄のあるリバーシブルの生地を編むことができます。 ウルトラファインゲージ(60G)の編み機では、超極細繊維の編成が可能で、非常に薄い編地を編成することができます。

■無縫製ニットの原理
横編み機は左右の往復運動で平状の生地(組織によっては円筒状の生地)を編成します。生産効率は丸編み機と比較して劣りますが、編み幅を変えることができます。 近年コンピューター制御技術の発展で無縫製ニットが開発されました。従来セーターなどニット製品は、袖・身頃などをパーツで編んだのち縫製することによって作製されていました。無縫製編み機では、この袖・身頃を同時に編成し、つなぎ合わせることで縫製することなく、製品の作製が行えます。 前後で2枚の生地を同時に編成し、端の部分で糸を渡す組織にすれば、横編み機でも筒状の生地を編成することができます。幅の広い筒状生地の左右に幅の狭い筒状生地を配置することで、身頃と左右の袖を同時に編成することができます。

横編み機では筒状の生地を編む場合でも編み幅を変えることができるため、袖口・ウエストなどの部分の幅をしぼったり、裾などの部分を広げたりすることができます。身頃と左右の袖の3枚同時に編成した筒状編地を、わきの部分で一つの筒状編地につなげ、襟ぐり部分にむけて徐々に編み幅を減らすことでセーターの形状を編成することができます。減らし目の位置と柄組織の組み合わせであたかも縫製したかのような袖ぐりのラインを作ることもできます。


■デザインの多様化・産業用資材への応用
編み機の機能の多様化で、編める糸の素材と服飾製品のデザインの幅が広がっています。また困難であった資材向けの糸の編成や無縫製の製品作製が可能となり、産業資材・医療向け製品など非衣料の分野へのよこ編みニット製品の用途拡大が期待できます。