1. はじめに
熱を持った物体に近づいたとき、触れてもいないのに熱を感じることがあります。これは熱を持った物体から熱線(赤外線)が放射されているからであり、熱エネルギーを持った物体であれば常に起こっている現象です。しかし赤外線を放射しやすい有機物やセラミックスのような物体もあれば、金属のような放射しにくい物体も存在します。この放射具合を表す指標として放射率が定義されており、様々な分野で活用されています。放射率は光の反射率や吸収率と強く相関しており、温度平衡状態の場合ではエネルギーの保存則の関係から放射率と吸収率は等しくなります。つまり、光を吸収しやすい物体ほど放射率が高い傾向があるため、熱を逃がすための放熱材料としてよく使用されています。
代表的な使用例としてはスペースシャトルの先端部があげられ、高い放射率と高い耐熱性をもった塗料を用いることで、大気圏突入時に機体の温度上昇を防ぐ役割を果たしています。逆に放射率が低い物体に関しては、反射率が高いため熱線反射材料として用いられており、熱線を防いで高温から内部を守る消防服に応用されています。
また最近では、快適な住宅環境を設計するため放射に注目した空調システムも登場しています。これはトンネルの中と外を比べた時、外気温がほとんど変わらないのにトンネル内の方が涼しく感じる現象を基に設計されており、熱線を壁面に吸収させることで快適な環境を作っています。対流を伴うエアコンのような空調では温度ムラや気流、騒音が不快感を与えるのに対し、放射を利用した空調ではそれらの問題を大きく改善することができます。今回、様々な分野で注目を集める放射率の測定法について紹介します。
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