CFRTP中空部材の曲げ加工技術の開発
三河繊維技術センター

記事更新日.19.01

あいち産業科学技術総合センター 

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1.はじめに 

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、軽量・高強度・高剛性といった基本物性の高さからスポーツ用品、航空機、自動車などの軽量かつ高強度を求める分野を中心に用途拡大が進んでいます。CFRPにはマトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いたものと熱可塑性樹脂を用いたものがあります。熱可塑性樹脂を使用した炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)は、加熱により軟化し再加工できるといった特徴を持つため、幅広い産業分野での応用が期待されています。
今回、三河繊維技術センターが「知の拠点あいち重点研究プロジェクト(U期)」で取り組んでいる、CFRTP中空部材の作製技術とその曲げ加工技術の研究成果について紹介します。


2.フィラメントワインダーを用いたCFRTPパイプの作製 

当センターでは、連続した炭素繊維と熱可塑性樹脂をマンドレルと呼ばれる金属製の芯材に巻きつけて成形するフィラメントワインディング法でCFRTPパイプを作製しています(図1)。炭素繊維と樹脂繊維を分散させた繊維をカーボンヒーターで加熱して、樹脂を溶融させながらマンドレルへ巻きつけてパイプ形状に作製します(図2)。さらに、ラッピングテープ(フィルム状のテープ)を巻きつけて加圧することで、CFRTPパイプ内部への樹脂の含浸を促進することができます。作製したCFRTPパイプの内部をX線CTを用いて観察したところ、ラッピングテープの有無により、樹脂の含浸状態に差がみられ、ラッピングテープの有効性が確認できました(図3(a)、(b))。
また、作製したCFRTPパイプの物性評価として4点曲げ試験による曲げ弾性率を評価した結果、曲げ弾性率はCFRTPパイプの巻き角度が小さいほど(パイプ軸方向に近づくほど)大きくなりました(図4、5)。巻き角度15°でアルミ製パイプを超える弾性率になりました。



3.CFRTPパイプの曲げ加工

熱硬化性樹脂は成形後に曲げ等の変形をさせることはできませんが、熱可塑性樹脂は成形後に再加熱することで、樹脂を溶融・軟化し変形させることができます。そこで、フィラメントワインディング法でCFRTPパイプを作製した後、加熱装置付き自動曲げ加工装置を用いてCFRTPパイプの曲げ加工に取り組みました。曲げ加工は、CFRTPパイプを図6に示す曲げ加工装置に取り付け、加工部を再加熱した後、パイプに引張変位を与えながら金型に押し当てて行います(図7)。CFRTPパイプの曲げ加工においては、パイプ断面の変形や座屈などが問題になります。これらの課題を解決するため、本研究で開発した芯材をパイプの内部に挿入し、引張量を最適化することで加工後のパイプ断面の変形量を抑制することに成功しました。また、パイプの両端部を曲げ加工することでU字型、S字型および3D形状の曲げ加工を行うことが可能になりました(図8)。

4.おわりに

フィラメントワインダーを使用することでCFRTPパイプが容易に作製でき、曲げ加工技術を活用することで複雑形状のCFRTP中空部材の作製が可能になりました。
当センターではCFRTPパイプの作製技術や加工技術の研究を行うとともに、関連する技術相談・指導を実施しております。フィラメントワインダーを使用したタンク形状のCFRP部材の試作などにつきましてもご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。
なお、本研究は産学行政連携で実施する「知の拠点あいち重点研究プロジェクト(U期)」事業における研究テーマ「自動車軽量化のための熱可塑性炭素繊維強化樹脂の加工技術開発(平成28〜30年度)」として実施しております。

参考 公益財団法人科学技術交流財団 「知の拠点あいち」重点研究プロジェクト http://www.astf-kha.jp/project/