釉薬(ゆうやく)テストピース・データベースを公開しました
産業技術センター 瀬戸窯業試験場

記事更新日.20.1

あいち産業科学技術総合センター 

■問合せ先
〒489-0965 瀬戸市南山口町537
TEL 0561-21-2116  FAX 0561-21-2128

1.はじめに 

皿や茶わんなど、やきものの表面にはガラス質の釉薬(ゆうやく)が掛けられており、水分の吸収を抑えたり、肌触りを良くしたり、やきものを華やかに彩ったりします。特に瀬戸産地は「瀬戸の七釉」と呼ばれるように、「灰釉(かいゆう)」、「古瀬戸釉(こぜとゆう)」、「志野釉(しのゆう)」、「黄瀬戸釉(きぜとゆう)」、「鉄釉(てつゆう:写真1左)」、「織部釉(おりべゆう:写真1右)」、「御深井釉(おふけゆう)」など、古くから多彩な釉薬を使いこなしてきた産地です。

釉薬の基本的な原料は、長石やケイ石、石灰などで、これに金属酸化物(鉄釉:酸化鉄、織部釉:酸化銅など)や顔料を加えることで、様々な色を出します。これらを調合したものを成形品に掛け、焼成することにより成分が化学変化し、ガラス質の釉薬となります。 釉薬は、調合の微妙な違いや焼成条件の違いにより様々に変化するため、陶磁器メーカーは製品開発の際、調合を変えたり焼成条件を変えたりして何度もテストピースを作製し、イメージに合う釉薬を得るために膨大な労力を費やします。


2.産業技術総合研究所から瀬戸窯業試験場へ 

国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)中部センターにおいて脈々と引き継がれてきた陶磁器研究・釉薬研究ですが、平成30年、多くの成果を残し終了することとなりました。 長年に亘る陶磁器研究・釉薬研究の過程で作製された釉薬テストピースは、約30万点に及びました。これらは研究の成果としてテーマごとに作製されたもので、適切な調合や温度で焼かれたものばかりでなく、白濁したもの、結晶が出たもの、溶けきっていないものなど様々な状態のテストピースが一枚のボードに20枚ほど貼付されており、釉薬開発・釉薬研究には非常に有効な資料であり、貴重なものであると言えます。


瀬戸窯業試験場では、産総研から釉薬テストピース15万点を譲り受けるとともに、平成30年10月20日に、これらを検索するためのデータベースの使用許諾を得ました。


3.釉薬テストピース・データベース一般公開

瀬戸窯業試験場では、譲り受けた釉薬テストピースを整備するとともに、データベースをさらに改良し、令和元年5月23日に一般公開しました。
データベースは釉薬相談コーナーに設置の来場者用パソコンで検索できます。検索は、釉薬の専門知識が無くても検索可能な簡易型検索と、ゼーゲル式の値や様々な窯業原料などが入力できる専門家向け検索があります。
簡易型検索は釉薬名、色彩、焼成温度などを入力して検索します。
釉薬名による検索は、「織部釉」、「天目釉」など伝統的な釉薬名の他、「石灰釉」や「バリウム釉」など主な成分が釉薬名となっているもの、「透明釉」や「マット釉」など、見た目の性状が釉薬名となっているものなど、最大3つの釉薬名が入力できます。候補が出てくるので、正式な釉薬名を知らなくても入力ができます。
色による検索は、画面の色相環(しきそうかん)を用いることで容易に入力できます。外側の「主要5色」の色相環では大まかな色彩が、内側の色相環(20色)では細かな色彩が選択できます。
焼成温度や焼成雰囲気を入力することで、検索精度を高めることができます。
「検索」では、候補を1つずつ見ることができ、「検索・一覧表示」では、同時に複数の候補を見ることができます。

4.おわりに

釉薬は調合の微妙な違いや焼成条件の違いにより様々に変化します。この釉薬データベースでイメージ通りの釉薬を見つけたとしても、実際にはテストピースを作って、同じものが得られるか、確認する必要はあります。
しかし、確実に、労力やコストを削減できると考えています。製陶業の皆さん、ぜひご利用ください。

5.釉薬データベースご利用にあたって

〇ご利用は無料です。
〇ご利用の際は電話等であらかじめご連絡ください。
〇利用記録簿に必要事項をご記入いただきます。
〇担当職員が対応します。
※ご連絡なくお越しの場合は、お待ちいただいたり、ご利用できないなど、ご希望に添えない場合があります。
※得られた釉薬データ等の利用については、申請した目的のための利用に限定し、再配布や目的外の使用を禁止します。
※個人情報等についてはデータベース拡充のために使用し、他の目的には使用しません。