こんな“先端”ITはいかがですか?
小栗宏次 記事更新日.06.06.01
愛知県立大学情報科学部  教授 
■PROFILE
愛知県立大学情報科学部教授。工学博士。
昭和35年名古屋市生まれ。
平成2年名古屋工業大学大学院工学研究科博士後期課程修了。同年名古屋工業大学助手。6年愛知県立大学助教授、10年同教授、11年より、ドイツ連邦共和国ミュンヘン大学客員教授、14年より、大学院情報科学研究科教授(兼任)現在に至る。
<専門> 生体工学、知的情報処理、メディア情報システム。
<その他> 2005年国際博覧会企画調整、高度情報通信社会検討委員会、愛知県高度情報化推進会議、あいちIT活用推進本部有識者会議などの各委員として活躍。
<主な著書>
ポスト「万博、空港」を考える−中部の識者が語る−(唯学書房)、「100年後の中部」(日刊工業新聞社)、「インターネット時代の情報発信入門」(リバティ書房)、「未来を拓く情報科学」(リバティ書房)など。

連絡先
愛知県立大学情報科学部情報システム学科
〒480-1198 愛知郡長久手町大字熊張字茨ケ廻間1522-3
TEL 0561-64-1111
FAX 0561-64-1108
http://www.aichi-pu.ac.jp/ist/~oguri/

毎年3月には、ドイツ、ハノーバで開催されるCeBITに行く ようにしている。10年間ほど継続して参加しているのだが、今年のヨーロッパはと ても寒く、雪の残るCeBIT2006は初めての経験だった。
 

ここ数年は、モバイル通信機器のブースがとても人気が高く多くの人でにぎわってい た。
今年のCeBITの特徴は、ハードウエア、ソフトウエア、コンテンツに加え、「Digital Living」というテーマで、ITを活用した「生活」をテーマにしたブースが新設され たことにある。 ここでは、大画面テレビを前に、皆で対戦型テレビゲームをしたり、ホームシアター システムを前に、恋人同士で映画を楽しむ・・・といった生活スタイルを“展示”し ていた。
日本では、見慣れた光景かもしれないが、欧州では新しいスタイルなのだ。若い人た ちを中心に注目を浴びていた。

さて、本日紹介したいのは、少し変わった“先端(?)のIT”だ。

CeBIT会場の隅のほうで小さなブースを見つけた。
携帯電話のアダプタを提案するベンチャー企業だ。
携帯電話はとても便利だが、それでもやっぱり持ちにくい。また小型化されて口のと ころまでマイク部分が届いていない。電話はやっぱり受話器だ!

そこで、固定電話の受話器をそのまま携帯電話に取り付けてしまった。最近、携帯電 話を腰のベルトのケースに入れている方も増えているが、写真の女性の腰を見ていた だきたい。携帯だけでなく受話器を“携帯”している。携帯電話より大きい受話器な んてナンセンス!と言わないでいただきたい。これが結構使いやすい。何よりも通話 するときに声が聞きやすいし話しやすい。日本円にして5000円程度の値段だったが、 すべての携帯電話に接続可能なアダプタが用意されているという。 お一ついかがだろうか?

もう一つ紹介したい話がある。
CeBITの帰り、ドイツ鉄道ミュンヘン中央駅での出来事だ。
ホームに1つの広告があった。駅でよく見かける光景だ。

何気なく通過しようとした瞬間、私は「あっ」と声を出してしまった。
次の瞬間、広告は静かに動き出したではないか。
駅を急ぐ旅行客に向かい広告が自走している。確かに自走している。

時には誰かを追いかけ、そして、誰かが近づけば自動停止する。
「私を見て!」と言わんばかりに、無視する観光客につきまとっている光景もあっ た。
これぞ最新の広告ロボットか? さすが、技術の国ドイツ!
新しい広告のスタイル発見!・・・と、ばかりに、センサはどこにあるのか? どの ようなシステムなのか・・と思いを馳せていると、一人の女性が指をさす・・・その 先を見ると、リモコンを持ったオペレータが2人。・・・ああ遠隔操作だったのか・ ・

それでも、効果抜群、多くの人々の注目の的だったことは言うまでも無い。
ただし、「動く広告」としての記憶はあるが、何の広告だったか覚えている人はどれ だけいるか定かでない。広告の世界でも、単なる看板から、ITを駆使したいろいろ な広告システムが登場していることは言うまでもないが、こうした擬似ロボット広告 も楽しいではないか。
駅を後にしてミュンヘンの中心市街地に行くと、そこは、ワールドカップムードで盛 り上がっていた。

いよいよワールドカップがはじまる。
日本はもちろんのこと、参加各チームがすばらしい試合を繰り広げてくれることを期 待している。そしてまた、この試合を通じて情報通信技術及び、それを利用したサー ビスが発展することを期待している。