中小企業施策と事業化の促進
山田基成 記事更新日.06.08.01
名古屋大学 助教授 
■PROFILE
名古屋大学大学院経済学研究科助教授
1954年生まれ。
77年名古屋大学経済学部卒業。85年同大学大学院経済学研究科博士課程修了後、同大学助手となり、91年10月から現職。日本中小企業学会常任理事他委員として活動中。
専門は生産管理論、中小企業経営論。
「トヨタ生産方式の研究」「中小企業21世紀への展望」などの著書多数。

連絡先
名古屋大学大学院経済学研究科
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■日本の開業率と廃業率
先月号の『時代の目』、中京大学小川英次学長の「日本経済の動向と今後の中小企業」を引き継いで、今回も「中小企業の近況」をテーマに取り上げることにしたい。

1990年代半ばから日本の中小企業政策は、一貫して起業の促進と新事業の創出に重点を置いてきた。その背景には、1970年代後半よりわが国の開業率は長期にわたる低下傾向にあり、80年代後半からは廃業率が開業率を上回る状況にある。平成18年版「中小企業白書」によれば、1986年には533万社を数えた日本の中小企業は、2004年には約100万社減少して433万社となった。  

ただし、近年は様々な施策の導入効果もあって、一時よりは新規に開業する企業の数は増えており、直近の01年から04年の間では年平均16.8万社の企業が開業している。しかしながら、それ以上のペースで廃業する企業が増えており、同期間の年平均では約29万社が廃業しているので、依然として開業率より廃業率のほうが高くなっている。

■技術開発への支援
新規創業やベンチャーへの支援とは別に、大企業を含めた日本の産業政策として新技術の開発に向けた支援に多額の資金が投入されている。詳細は前月の小川先生の論述に譲るが、科学技術立国を目指して中小企業の技術開発にも手厚い支援が行われてきている。

こうした政策の結果として、一方で創業支援策を通じて新たな企業が生まれ、他方で既存企業を含めて技術開発支援によって新たな技術が開発されている。そのこと自体は大変結構なことであるが、国の経済活動あるいは企業の成長という観点からすると、手放しで喜んでばかりはいられない。なぜならば、真の課題はその先にある。

新たに企業が設立され、新技術が実用化された後、その経済的成果として売上を伸長させて資金を回収し、これを再投資して事業を拡大し、さらに多くの人に雇用と所得の機会を提供するというサイクルにまで到達しているかどうかである。すなわち、事業としての成長を実現することが課題であり、その観点からは新設企業のその後の動向は決してバラ色ではない。

■創業後の動向
国民生活金融公庫総合研究所の新規開業に対するパネル調査(2001年に同公庫の融資を受けて開業した2,181社に対する追跡調査)によれば、04年末時点での存続企業は1,836社(存続率84.2%)であった。その存続企業を売上高の伸びで4つのグループ(四分位)に分けると、最も業績の好調なグループ(第W分位)では月商は平均約2.5倍に増え、1社平均の従業員数は開業時の3.9人から10.7人(04年末)に増えている。しかし、次のグループ(第V分位)になると、雇用面では3.9人から7.1人と約3人増え、売上は月商で平均50%の増加であるものの、その伸びは年々鈍化している。

こうした結果から推測すると、創業して4年目に入った段階で、存続企業の約1/4では事業拡大の軌道に乗りつつある企業が多いものの、残りの約3/4については未だ成長段階には到達できていないと考えられる。

■新連携施策の活用
昨年度より、新たな中小企業施策として「中小企業新事業活動促進法」が施行され、中小企業が他組織との連携を通じて事業化に取り組む活動を支援する試みが行われている。今年3月の年度末までに全国で165件の取り組みが認定され、中部地域においても22件がその認定を受けて活動に取り組んでいる。こうした新連携の試みから、1つでも多くの事業拡大の成功事例が生まれることを願っている。