企業存続と繁栄の鍵
小川英次 記事更新日.07.01.04
中京大学 学長 
■PROFILE
中京大学学長、名古屋大学名誉教授。
1931年名古屋市生まれ。
名古屋大学工学部、経済学部を卒業後、64年経済学部助教授、同教授、同大学院国際開発研究科長を経て、94年中京大学経営学部教授に就任。2000年4月から現職。
生産管理、中小企業経営論などの著書多数。

連絡先
中京大学
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■はじめに

企業の有り様を長年にわたって観察してみると、改めて企業の存続と繁栄は決して容易なことではないことがよくわかります。2002年初頭からの景気回復の報道のなかでも、大企業も中小企業も倒産あるいは吸収合併されています。老舗企業も倒産しますし、ベンチャーも短時日の間に消えてしまいます。企業の盛衰は変転極まりないものだということがよくわかります。そこで本稿では限られた字数ですが、企業とくに中小企業の存続と繁栄の鍵について考えてみたいと思います。

■存続と繁栄の鍵―中小企業の場合―

企業の存続と繁栄は、経営者にかかっています。とくに中小企業の場合、経営者の役割は大きいのです。そこで経営者としてあるべき条件は何でしょうか。もっとも大切なことは、(1)学習する経営者であることです。学習するとは、自ら体験し、あるいは他の人に学び、自らの経営者能力を不断に向上することです。読書も大切なら、講演会等の学習機会を積極的に活用することも有意義です。いうまでもなく経営の実践のなかでは「計画―実践―反省―新たな活動の策定」と続く 、いわゆるP−D−C−Aのサイクルを回すことです。  

経営者の力量向上にあって次に大切なことは、(2)厚い人脈の形成です。企業の存続と繁栄を確実にしている経営者の持つ人脈の豊かさには全く驚かされます。多彩な人脈はアイデアの源泉となります。新しい事業の情報、市場の新たな動き、国際情勢の変化、マクロ経済の動き等々は企業を取巻く環境として、企業の存続と繁栄に直接影響する要因となるでしょう。必要とあればとるべきアクションは俊敏でなければなりません。  

経営者の力量は確かに持てる人脈の厚さで示されますが、もう一歩踏込みますと、(3)人脈の背後に存在する信頼の深さも大きくものをいう要因です。その信頼も、(4)企業の持つ専門性の高さにも大きく関係します。したがってこれらの4点に配慮し、それらを保持、強化することが経営者として必須と考えられます。

■むすび

企業の存続と繁栄は、基本的には変化する事業環境に企業がいかに対応し続けることができるかにかかっています。中小企業の場合その戦略決定は、一人の経営者によって行われます。その経営者の力量によって成長企業となったり、停滞企業となったりします。したがって経営者の能力増進こそ企業存続と繁栄の鍵といってよいでしょう。