『ワシントン州における航空宇宙産業の歴史は、航空機の歴史とほぼ同じである。ライト兄弟の初飛行から13年後の1916年、ウィリアム・ボーイング氏がワシントン州に航空機製造会社を設立したのが始まりである』(January 2006, Aerospace Future Alliance of Washington調査報告書より引用)。ワシントン州シアトルで16人の従業員からスタートしたといわれるこの会社が、今や世界最大の航空宇宙企業であるボーイング社(2001年にシカゴに本社を移転)でした。 ワシントン州には、現在ボーイング社の巨大な製造工場が立地し、その周辺に警報システムや通信機器、表示計器、電源システム、客室インテリアなどをはじめ、航空宇宙関連の様々な部品供給企業、システムサービス企業が集積しています。ワシントン州政府によれば、州内では11万人がこの産業に従事しており、年間生産額は360億ドルにのぼるとのことであり、航空機製造の世界的な拠点地域となっています。
今や航空機の製造は国際連携により行われる時代と言われていますが、ワシントン州内の企業には、ボーイング社のみならず、エアバス社、エンブラエル社、ボンバルディア社など米国以外の複数の航空機メーカーに部品を供給しているところも多くなっています。現在、大型航空機の製造はボーイング社(米国)とエアバス社(フランス)の2社が激しい競争を繰り広げていますが、航空機部品の製造・取引が国際間で多角的に行われており、ワシントン州の航空宇宙産業はこの激しい競争の真っ只中にあり、かつ国際的な注目を浴びている状況にあります。
そうした国際的な競争下にあって、同州においても、この競争を生き抜き、地域全体としてさらなる発展を遂げていくために、エアロスペース・フューチャー・アライアンス・オブ・ワシントン(AFA: Aerospace Future Alliance of Washington)とパシフィック・ノースウェスト・エアロスペース・アライアンス(PNAA: Pacific Northwest Aerospace Alliance)という2つの組織が活発に活動しています。
AFAは、ワシントン州内の航空宇宙関連企業で組織する業界団体(所在地:ワシントン州シアトル)で、2006年に設立されました。会員数は約200社(2008年6月末時点)にのぼり、地元の航空宇宙産業の発展に必要な施策のとりまとめや政府への働きかけなどを行っています。一方、PNNAは、米国北西地域(ワシントン州、オレゴン州)における航空宇宙産業の振興を目的に2002年に設立された非営利組織(事務局:ワシントン州シアトル)で、2008年7月末現在、60の会員を抱え、航空宇宙産業の最新情報を会員向けに発信しているほか、セミナーの開催や人的交流の機会を提供しています。世界有数の航空宇宙産業の集積をもつワシントン州において、これらの組織が地域全体の牽引役として重要な役割を果たしていると言われています。
また、同州内には、航空宇宙分野における教育・訓練や高度技術研究を行う組織・施設として、ワシントン州立大学航空宇宙工学部や米国連邦航空局(FAA)先端材料航空センター、エベレット・エドモンドコミュニティカレッジ材料・製法開発センター、コミュニティカレッジセンター(製造関係)などがあり、人材育成や技術開発などの面で大きな役割を果たしています。
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