AARIアジア中小企業レポート
株式会社愛知アジア総合研究所(AARI)

記事更新日.12.07.13

製造業を中心とした愛知県および東海地域の中小企業に向けて、アジア各都市とのコネクションと様々なソリューションに関わるノウハウをもとに、技術支援、品質管理支援、環境対策支援等、ソフト面での海外進出をサポート。第一弾として、中国江蘇省常州市への進出サポートを展開中。
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■第3回 江蘇省常州市プロジェクト その1

執筆者:株式会社愛知アジア総合研究所 代表取締役 乗松薫
1970年名古屋市生まれ。1996年早稲田大学法学部を卒業後、岩手朝日テレビを経て、2000年ヤフー株式会社入社。2003年、名古屋にて株式会社ミルゲート(旧 有限会社エヌ・プランニング)を創業。以後、WEB領域を中心に、ナショナルクライアントから中小製造業まで、数多くの企業の国内およびアジア地域へ向けたプロモーション業務に携わる。専門領域は国内およびアジア市場へのプロモーションプランニングおよびコピーライティング。2012年3月、株式会社愛知アジア総合研究所を設立し、代表取締役に就任。

初めての常州市訪問

AARIの当面の取り組みとして、愛知県の中小製造業の皆様と常州市中小製造業との技術面や管理面での交流をサポートしていくプロジェクトを開始したことは、第1回のレポートで既に紹介させていただきましたが、今回からはそのプロジェクトの具体的な内容をお伝えしていきます。

上海から西に約160km、南京行きの新幹線で蘇州、無錫と著名な都市を通って約1時間の距離に位置する常州市。人口約460万人のこの地級市を私が最初に訪れたのは2010年9月。上海での広告会社との打ち合わせと、ちょうどその時期に開催されていた日系メーカー中心の展示会見学を終えた翌日のことでした。ちなみに、その時一緒に常州を訪問したAARI取締役の原と深井は、その数年前から常州を頻繁に訪れており、既に現地でパートナー企業と接触を開始していました。

当時の常州市副市長ほか市政府幹部の歓待を受けた私たちは、常州市の投資環境について説明を受けた後、常州市にいくつかある開発区の中でも最も新しい「武進開発区」を案内されました。蘇州シンガポール工業園区の総デザイナーによって設計されたというこの開発区の総面積は58平方キロメートル。最新のインフラが整備され、開発区内には六つの大学(日本で言うところの専門学校を含む)があり、その内のいくつかでは機械加工・金型加工・溶接・ITなどの専門指導をしていて人的資源が豊富。そして区内の就労者向けアパートは総戸数2,500あまりと、常州市が威信をかけてプロジェクトを推進する巨大な開発区でした。その後の訪問で、私たちは国レベルのプロジェクトである常州市高進区(国家高進技術産業開発区)なども案内されるわけですが、いずれの開発区も日本語が堪能な担当者による手厚いサポートが確立されており、製造拠点としての常州進出を考えている企業にとっては十分に魅力的な場所だろうな、との印象を受けました。

ちなみに、最初の常州訪問時に政府から渡された資料には「常州に進出した世界のトップ500社」なる表が掲載されており、その錚々たる顔ぶれに予想以上の常州の発展度合いを感じるとともに、「だとしたら我々にできることなんか何も無いじゃないか・・・」などと、会議室のスクリーンの横で私たちに対して熱心にプレゼンをしている政府担当者前に、私は少々冷めた気持ちになったりしていたのでした。

プロジェクトの始まり〜熱処理業界と〜

その後、企業誘致の仲介役になることを求める常州市政府に対して、その期待に応えることができないことを分かりながらも常州訪問を続ける私たち。そんな私たちに転機が訪れたのは約一年前のこと。この辺りのところは本サイトに掲載済みの「AARI創業の経緯」の中で既にお話しさせていただきましたが、AARIの現取締役である原との会話の中で、「中小製造業のソフト面での海外進出をサポートできないか?」ということが話題にのぼったのがきっかけで、私たちは常州市へのソフト面での日本企業の進出を媒介すべく、市政府の中でもそれまでの開発区系の担当者ではなく、「中小企業局」というところと頻繁にコンタクトをとるようなっていきました。

中小企業局は、いわば常州版あいち産業振興機構とでもいいましょうか。中小企業の発展のために様々な支援や指導を行うところで、特徴的なのはその傘下に金型協会、鋳造協会などの製造業系からアニメ協会や豆協会などまで、実に多種多様な業界団体を抱えているところにあります。その中で私たちが最初のパートナーとして選んだのは熱処理協会。AARI取締役の原が真空熱処理メーカーを経営していることもあって、まずは私たちが得意とする分野から常州とのソフト面での連携プロジェクトを開始したのです。

その後、いくつかの熱処理工場を視察して感じたのは、「常州の熱処理業界は、今、バブルの中にいるのだろうな」ということ。たった一台の炉から始めた家族経営の会社から、大きなグループに属する会社や外資との合弁まで、規模や経営基盤は様々ではあるものの、少なくとも私たちが視察した会社に限って言えば比較的仕事が潤沢にある様子で、新しい工場を建設中だったり、新たに導入した日系メーカーの設備を私たちに披露したりと、一様に今まさに波に乗っている勢いのようなものを感じ取ることができました。

とはいえ、見た限りでは日系メーカーの認証を得られるぐらい管理体制がしっかり整った企業は少なく、各工場を視察して経営者と話をする中で、殆どの熱処理メーカーが抱える共通の悩みも明らかにってきました。同時に、AARIが媒介役となって愛知県の熱処理メーカーから常州市側に提供し得る技術的なポイントも定まってきたのです。

 

常州市視察団招聘に向けて

そして、この8月、常州市熱処理協会との最初の取り組みとして、AARIでは十数社の工場経営者からなる視察団を愛知県に招聘します。まずは常州の皆さんに、実際に愛知県内のいくつかの熱処理工場を視察していただいて、私たちが技術支援できる具体的な項目を探していこうというわけです。

バブルの中にいる工場経営者とはいえ、視察団のほぼ全員が初めての海外への出国です。信じられないようなどんでん返しの繰り返しでしたが、何とか8月には視察団招聘が実現できそうです。その模様は、次回以降のレポートでご紹介していきます。

(次回に続く)

 


※AARIが提供するサービス、及び常州市プロジェクトの最新情報はAARIのWEBサイトhttp://www.aa-ri.co.jp をご覧ください。情報は随時更新予定です。