びっくり中国輸出入事情(輸入編 その2)

横澤 正博

記事更新日.12.02.20

有限会社マミック 代表取締役
■PROFILE
1959年名古屋生まれ名古屋育ち  大学卒業(文系)後、何故か金型&成形工場に入社後、封印していた三角関数を思い出しつつ製造技術&技術営業を学ぶ。
在職時に、海外調達(韓国)を学び、その経験を元にアジアの製造に関わる貿易&日本での製造経験のスキルUPを続ける。
2003年日本を離れる事となり、現在香港&中国を行き来し公私・昼夜問わず海外進出企業の調達等のお手伝いと情報交換。

連絡先:有限会社マミック
Room 2302-03 23/F Shenzhen Kerry Center 2008 Renminnanlu Shenzhen CHINA
中国電話:(86)755-2518-0602 FAX:(86)755-2518-0644
E-mail:yokozawa@wako-sz.cn

前号でもお伝えしましたが、異国であるここ中国では日本人にとって当たり前の事が当たり前でない中、何事もついつい「日本では…」と言いたくなり、この言葉は禁句であると気づかされます。
私もこちらに来た当時、全てにおいて日本と比較しがちでしたが、今ではこの言葉を考えるとかえってネガティブになるので封印するようにしています。また、中国には中国の良い部分もあるので冷静に判断するよう心がけています。


■ドM性格でなければやっていけない

日本と比較した場合、中国独自の税制、法制等により若干の違いはあるものの、かなり法的にもシステム的にも現在では整備されており、一般常識(世界的に見て)として何ら問題ないものも確立されつつありますが、時々納得のいかない事例もまだ多く、常に思うのは、「今回が問題なかったから次回も同様に問題がない」とは絶対に言えず、その都度状況に変化があり、言動も対応も変わることが多いという事を先ずは認識して頂きたいと思います。(極端な言い方をすれば、運良く通ったと思っても言い過ぎではないということです。)
 
一般的にどの企業も窓口担当者により対応の違いはあるものの、基本は会社内で取り決めた基本システムに乗っ取り対応します。しかしこの国の通関担当者の場合、法やシステムに乗っ取り対応しているはずなのに、そこまで自信を持って言い切っていいものかと思うほど費用もスムーズさもクレームも内容も、その都度処置方法が違う場合があり、時々窓口担当が中国の法律になっているのではないかと感じる事も少なくありません。
 そのため、輸出入代行業者は、常に頭を抱えており、クライアントとの板挟みに悩みます。とある業者は「ドM性格でなければやっていけない」と…ぼやくことも。

■根気のいる根回し

また多くの輸出入を独自に行っている企業は、通関担当者を社内に置きローカル同士で交渉させている事が多いのですが、通関担当を置かない企業は、輸出入代行業者に委託することになり前述の状況となる事が多々あります。

そんなトラブルを避けたいがために、最上層部に根回しする事を考えますがこれもくせ者で、根回しに最上層部の上司から攻めるのではなく、一番下の部下から根回しを始めなければならず、そしてその上の上司にうまく根回しを繋ぎたいのですが、この根回し連鎖を失敗すれば最初からやり直しとなり、不定期に変わる窓口担当者が変われば、この処置も振り出しに戻ってしまいます。

■こんなことも…具体例

今回もそのいくつかあった事例を紹介させていただきます。

  1. 数倍の手数料を払えばスムーズに通関が行われた
  2. 明らかに判別できる申請書類の文字が見えないとクレーム
  3. 企業名の漢字記載がない(実際は必要ない)とクレーム
  4. 箱のサイズが記載内容とわずかに違った
  5. 真空パッキングの必要な貨物を開梱チェック後、長期放置された
  6. 純水で洗浄済みの基盤を手づかみでチェックする
  7. 故意では無いかと感じるほどゆっくりと通関処理された
  8. 中央政府役人がいる期間中のすべての貨物を全数検査対象としていたのに、いなくなれば即通関許可が出た
  9. 書類記載のHSコードが違うとクレームされ、梱包品と全く異なるHSコードを指定され足止めを食らった
    (HSコード:"Harmonized Commodity Description and Coding System"(「商品の名称および分類についての統一システム」(=以下、HSと略す)として、国際貿易商品の名称および分類を世界的に統一する目的のために作られたコード番号のこと)

5.の真空梱包品は、開梱されれば再梱包が必要となりますが、納得のいく理由もなく開梱され梱包費の二重出費。開梱時は無造作に開梱するため、綺麗に梱包してあっても開け方がひどいので元に戻らず再梱包となります。
再梱包となれば梱包できる所まで戻さなければならなくなり、大型貨物であれば1〜2週間のロスタイムとなってしまいます。
 
開梱対策として比較的再梱包の簡単な資材であれば、梱包資材と申告書類を事前準備して積載し、通関後にドライバーや助手に再梱包させ輸出する事も出来ますが、真空梱包となるとそう言う訳にもいきません。
 
7.の年末年始、黄金週間、国慶節など長期休暇の1〜2ヶ月前は忙しくなるため、いちいち個別企業に対し優先処理する訳にはいかない事は分かるのですが、ここで効果が出るのが根回しやクレームに対するこちら側の対応の仕方次第で処理対応が変化する場合もありました。
 
通常、出荷企業側はただ待つのみ、交渉しても「待て」と言われるだけなのですが、何故か費用の上乗せ等の交渉手段をすると効果があった事もあります。またこれも不確定ではありますが、通関担当から指示のある対応方法通りに(納得いく内容でなくても)渋々対応すれば早く処理される場合が多いように思います。
 
9.は、書類記載のHSコードが違っているとクレームされ、実際は間違っていないのに「間違っているので」と一方的に受け付けてくれないことがありました。
 
例えば、金属加工品なのに石/ガラス類のHSコードを指定され、書類の再提出を要求され、仕方が無く言われたとおり再提出すれば、再度今日からHSコードが変わった(そんな事はあり得ないのだが)と言われ元のHSコードに戻し書類の再々提出となり、嫌がらせとしか思えないような事もありました。

仮に中国側から違うHSコードで通関できたとしても、今度はもっと不便なことに発展する場合があります。HSコード表記が違えば受け入れる国で中身とコード表記が違うため通関できなくなり、荷物の差し替えているのでは無いかと疑われ、結局困るのは輸入するこちら側になってしまいます。
 
皆さんもご存じのあの尖閣諸島事件の時は、希土類のレアメタルを表面上は合法に止め、各輸出入業者に関係筋より直々に電話連絡があり(記録の残る書類ではない)、物品の通関は全種類全品全検査となり、中国から日本への輸出にストレスを与え、表向き「通関止めなんかはしていない」と言っておきながら、いつ通関完了するかわからない状態に陥らせられ、酷いと数ヶ月足止めされた貨物もありました。(この期間、中国保税区倉庫には通関待ちの大量の貨物があったとか…)

今思えば、全品目全数検査と言うことは、開梱検査とほぼ同等の意味と言えますが、コンテナのまま保税区に放置されていた物品も多かったと聞いています。(全検していないということです。)


■コストを取るかリスクを取るか

裏技とまでは言えませんが、深セン地区であれば、隣接地区に香港やマカオがあるため若干輸送費はかさみますが、一旦香港(FOB香港)までの貨物としって処理すると通関が比較的スムーズになる時もあるので、先ずは国益問題に結びつかない第三国に出荷するのをお勧めします。
 
日本的発想であれば物流費を安くするためには、混載すれば輸送費は若干下がりますが、別の企業の混載荷物が、止まればすべての荷物が止まるので中国の輸出入の日程に余裕のない貨物は、わずかな荷物でコストUPになったとしてもコンテナ単位での物流手段を選んだ方がよいと思います。
 
税関の利益が増えるは、お国のための働くと言う理由、そしてその事例が昇格、昇給に繋がるため、窓口も努力する。言葉は失礼だが。個人的意見で申し訳ないのですが、一言で言えば「それがいちゃモンであっても」ということです。
 
以上今回はこんな輸入トラブル編でした。

皆様のご参考になれば幸いです・・では次回また