前回は「飼育されたクレーム」と題して、職場の人間関係がクレーム対応に表れやすいことを解説しました。企業の繁栄と私たちの生活はお客様がいてこそ成り立ちます。この点を職場のメンバーがきちんと共有していれば、今回ご紹介する技術は上滑りなものになりません。
クレームは一次対応者が行き詰まったら、『人を変える、場所を変える、時間を変える』のいずれかを使います。これは感情のたかぶりをクールダウンしてもらう狙いです。本ケースではセンター長に変わることで、偉い人に対応してもらえるという自尊心を満たしています。
クレームを寄せるお客様は、十中八九、まず怒りの感情を押し出してきます。時には自分の気持ちに翻弄されてうまく言葉にできない人もいます。
ここは聞くことに徹する段階です。まくしたるお客様であれば、こちらは言葉を挟めませんので相槌を入れるにとどめます。
この相槌は熱心な人ほど「はい」や「ええ」といった単調なワンフレーズを繰り返しがち。だから意識的にバリエーション多く繰り出します。「なるほど」「そうでしたか」「ああ」「そんなことが」……これらは“本番”でいきなり出てこないので、普段の生活で準備しておきます。ちなみにバリエーション豊かな相槌は、クレーム対応に限らず、日常会話で相手に気持ちよく話してもらえるスキルです。
まくしたてていたお客様がペースダウンすると、こちらが言葉を挟める「間」が徐々に出てきます(上記の会話は、スペースの都合でお客様がまくしたてている段階を割愛しました)。
この「間」でフィードバックの技術を使います。これはお客様の発言を繰り返したり、感情を推し量って言葉にするやり方です。フィードバックは“私のことを理解してくれる”と潜在意識に訴える効果があります。
とりわけ感情を言語化するやり方が顕著です。6.の「○○様を不愉快にさせてしまいましたし」がそうです。推し量るだけにハズしてしまうこともありえますが、お客様の気持ちを当てることが目的ではありません。“私はお客様を理解したい”と、こちらの気持ちを伝えることに意味があるのです。
センター長はお客様の発言を繰り返すフィードバックを、随所に繰り出しています。
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