電子商取引市場が今後順調に拡大し、消費者も事業者もメリットを受けるためには、電子商取引市場が、誰にとっても安心して利用できるものでなくてはいけません。そのために、市場参加者は「情報モラル」を守ることが必要です。「情報モラル」は、「社会的公正(への配慮)」という言葉に置き換えることもできます。法律やガイドラインをはじめ、明文化されていないものも含めて様々な「ルール」をきちんと守ることが「社会的公正に配慮すること」であり、これによって初めて、信頼できる電子商取引市場が実現していくのです。
電子商取引に関する「ルール」の中でも重要なのは、消費者保護ルールです。ルールを守らなければならないのは売り手も買い手も同じですが、取引の条件を提示し、主導権を握る立場にあるのは、通常は売り手です。また、消費者は事業者に比べて、持っている情報が少なく、交渉などでも不利な立場に置かれることが一般的なので、様々なレベルで消費者保護ルールが定められています。
最も重いものは法律です。日本国民である以上、法を守らなければ罰せられます。その次に、「ガイドライン」や「行動規範」といわれるルールがあります。これに違反した場合は、所属する業界団体や自主規制機関から指導や勧告を受け、是正されなければ除名、というのがペナルティです。
もう1つ、ルールというにはやや違和感がありますが、重要なのが「顧客重視の姿勢」です。広い意味では、これも消費者保護において大切な役割を果たしています。そして同時に、事業者にとっては、他の事業者と差別化するための強い武器でもあるのです。
前述の通り、ネットショッピングを利用する消費者は、価格が安いショップを探すとともに、信頼できるショップかどうかを見て購入を決めています。ネット上で検索をすれば、たくさんのショップが表示されますから、一度トラブルになってイヤな思いをしたショップには、二度と注文をしないでしょう。それだけではなく、イヤな体験をした消費者がネット上の掲示板に書き込みをすれば瞬く間に悪評が広がり、売上に大きく影響することになります。これについては、後編で、実際のトラブル事例やその対処法などもご紹介しながら、もう少し触れてみたいと思います。
|