来年2008年からの5年間が、京都議定書が拘束する期間です。つまり、排出権取引がいよいよ現物として動き始めます。簡単に言えば、排出権取引とは削減したCO2排出量を売買できる仕組みです。CO2がお金に換わる、ガラガラと音を立ててそんな時代に突入しようとしています。CO2を排出することは、お金がかかること、という認識を持たなければ企業経営の原価を押し上げる大きな要因になりうるでしょう。逆にCO2を減らすこと、CO2を出さないことは企業競争力になると言えるのではないでしょうか。 いまEUで取引されている排出権はCO21tあたり 1,800円です(2007年7月時点、CDM排出権<CER>価格)。御社ではCO2は年間何トン排出していますか? それに1,800円/tを掛け算してみてください。カーボンオフセットするには、新たにそれだけの費用が発生します。仮に御社が、電気と熱をあわせて原油換算で年間1500kℓを使っていたとしましょう(省エネ法、第二種エネルギー管理指定工場相当)。すると、二酸化炭素は約4千トン発生しますから、これをカーボンオフセットするには720万円の費用が必要となります。4千トンの二酸化炭素のうち、日本の削減目標である6%を削減するとしても、単純に排出権を購入するならば240トン分43万円の費用が必要となります。削減目標がさらに厳しくなり、排出権の市場価格があがれば、企業にとっての負担は厳しくなるばかりです。ただでさえ、原材料や燃料の価格が高騰している中でこのような対策が企業に求められるとしたら、作り方や商品自体を変えてしまわなければならないくらいの大きなインパクトとなります。古くは公害対策に始まり、最近ではダイオキシン対策やアスベスト対策など、環境問題の場合、中小企業にも有無を言わせない規制の波が押し寄せてきますから、今回の気候変動に対する規制も、どんな企業でも対応せざるを得なくなる未来が目に浮かびます。
(参考)
地球温暖化対策の推進に関する法律施行令で定める排出係数一覧(環境省)
このように、カーボンオフセット商品が話題になり、売れ行きが好調な一方で、CO2削減のノルマを課せられた場合には重い負担が発生することになるのでしょう。一方で、血のにじむような省エネ対策を行っている企業も多く見かけます。気候変動問題が進展した場合の企業への影響を見通すことができれば、その真剣味が良く理解できます。いま省エネ対策への投資や取組みに対してあぐらをかいていると、アリとキリギリスのお話のように数年先には痛い思いをすることになるかもしれません。実際に気候変動の経済学に関するスターン・レビューという英国の報告書では、国家レベルのコストですが、温暖化対策が遅れるほど対策コストが膨らむと予測されています。皆様もくれぐれも先手、先手の対策をとっていくことをお勧めします。
スターン・レビュー「気候変動の経済学」の日本語版作成について(環境省)
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