まず、その研究開発を企業単独で行なうのか、産学連携で行なうのか、が選択の大きな分かれ目となります。もし、産学連携であれば、経済産業省系の助成制度だけでなく、大学が応募元となって文部科学省系の助成制度の活用も可能になり、応募する助成制度の幅も大きく広がります。近年の傾向として、企業単独の制度は徐々に少なくなりつつあり、企業同士の連携や大学との共同研究向けの制度が増えつつあります。
●採択の難易度を読む
ポイント1 倍率・採択事例で読む さらに制度を絞り込むには、公募採択型である以上、「自社の研究内容・レベルに相応した、『採択の可能性が高い』」制度を選択する必要があります。そのためには、応募しようとする制度の「採択されやすさ」をある程度見極める必要があります。
採択の難易度を予想するには「採択率」と「採択企業名・テーマ」を調べることが有効です。「採択率」は入学試験の「競争率」、「採択企業名・テーマ」は入学試験の「難易レベル・偏差値」とイメージしてください。「採択率」は応募件数に対する採択件数ですから、ライバルが多ければ、また採択予定件数が少なければ、当然自社が採択される確率も低くなることが予想できます。また「活用企業名・テーマ」からは応募している企業のレベルが想定できます。補助制度の中には大企業も応募が可能な制度も多くあり、採択企業を見ると、日本を代表するような名だたる企業が並んでいる場合があります。こうした制度の活用を考える場合には、ハイレベルな競争となり、相応の準備が必要となります。
ポイント2 中小企業限定・地域限定で探す
ですから、なるべく大企業との競争がない「中小企業限定」の制度がお薦め、ということになります。しかし、「中小企業」という考え方は、経済産業省所管の法律で、経済産業省(及び中小企業庁、関連の外郭団体)以外の環境省や文部科学省などの補助金・助成金では、「中小企業」のみを対象にしている制度は、まれにしかありません。この点も絞込みのヒントにして下さい。
また、中小企業限定の制度であっても、全国から応募を受け付ける制度に応募するのか、県内ないしは市内企業のみが応募できる制度を選ぶのかでは、その難易度も違ってきます。イメージで言えば、全国大会で戦う相手が手強いか、地方大会で戦う相手が手強いか、ということです。地方大会のレベルもあるかもしれませんが、一般に応募地域が限定的になるほどライバルが減り、また合格率が高くなる傾向があります。
ただし、県・市の助成制度は国の制度に比べ、助成金額が小さい場合がほとんどですので、助成を受けたい金額に達しないのであれば、強豪との競争を覚悟で、国の制度に応募することも考えなければなりません。
申請書の作成には相当の手間が必要ですので、その手間を無駄にしないためにも、慎重に制度の選択をされることをお勧めします。
ポイント3 委託と補助、その意味と選択のポイントは
公募採択型の研究開発制度には、上記表の『補助率』にも記載しましたが、「補助・助成」と「委託」の2種類があります。
「補助・助成」の制度は、応募した研究開発費総額の一部(多くの制度は1/2)を補助するものです。補助以外の部分は自社負担になりますので、補助率が高い制度を選ぶほうが企業にとっては負担が少なくすむことになります。
一方「委託」とは、採択されたテーマについて国や地方自治体が自らその研究開発を行なう代わりに、その応募した企業へ研究開発を委託する、という考え方です。委託するのですから開発費は全て国が出すことになります。企業にとっては、自らの持ち出しなしで開発ができることになり、感覚的には100%の補助率といってもよいでしょう。 しかし、委託の研究開発支援制度はあまり数が多くなく、また、企業負担も少なくてすむこととから、応募企業数が多くなり、必然的に応募内容のレベルも高くなります。自己負担が少ないからといって、委託事業への応募を一本に考えるのではなく、自社の負担能力や研究テーマ・開発能力レベルなどを勘案してどの制度に応募するかを決める必要があるでしょう。
●申請書作成時に外せないポイントは
申請書作成に当たっては、次のことだけは押さえておいて下さい。公募採択型である以上、採択の可否は専門家の審査をクリアしなければなりません。そこで問題になるのが、どのような観点で審査を受けるか、ということです。それがわかれば、逆に、評価を受けやすい申請書が作成可能となるわけです。では、評価基準は極秘事項かというと、そうではありません。
実は、審査のポイントは、助成金の公募要綱に記載されているのです。
先に表の最初に例としてあげた「実用化助成金」では次のような評価基準が示されています。
|