「知っている人だけがやっぱり得をする!」
〜公的支援制度の活用(10改訂版)
武田  宜久 記事更新日.10.02.01
有限会社アドバイザリーボート 代表取締役
■PROFILE
中小企業診断士・社会保険労務士
名古屋大学経済学部を卒業後、地元メーカー、愛知県庁に勤務後、2000年4月独立。
公的支援制度の実践活用支援、新事業立ち上げ支援、創業支援、経営戦略・計画策定、人材育成型成果報酬制度の策定等のコンサルティングが中心。
中でも公的支援制度活用セミナーでは、様々に展開される公的支援制度を
・役所【施策展開主体】視点でなく
・利用者【事業ステージ別】視点で
・多くの選択肢【事業本位・役所横断型】 の中から整理、活用法、申請書作成法まで解説、「わかりやすく、実践的でためになる」「支援制度を活用したい」と受講者より抜群の満足度評価を受けている。
中小企業・ベンチャー総合支援センターアドバイザー、名古屋市中小企業振興センター経営相談員。
 
連絡先  
有限会社アドバイザリーボート  
takekeiei@yahoo.co.jp
「『知っている人だけが得をする!!』〜公的支援制度の活用」は過去、2003/10、2008/8に寄稿致しましたが、その後、経済環境の激変などにより公的支援策をめぐる状況、事業者の期待感は大きく変わってきています。
そこで、近年の動向を踏まえ、前回の「改訂版」という形でご説明を進めたいと思います。

1 「公的支援制度」で720万件ヒットする情報を、どう絞り込む

「公的支援制度」というと何が頭に浮かぶでしょうか。大半の方はお使いになったことがなく、イメージが沸かない企業が多いのではないでしょうか。
その原因は「どんな制度があるか知らない」ということにあるのではないかと思います。
では、どうやって調べればいいのかをご紹介します。
実は、支援制度は多種多様で支援機関も非常にたくさんあります。「公的支援制度」と入力し、グーグル検索すると720万件以上がヒットします。とても1つ1つ見るわけには行きません。すべての支援制度を1ケ所でみられるサイトがあればよいのですが、国の制度でも所管する役所が違ったり、支援機関が違ったりすると掲載されていなかったり、「ここさえみれば」というサイトはないのが現実です。
1) ネットで検索、イチ押しサイトは?

そんな中で、まずまずお薦めなのが、次のサイトです。
中小企業ビジネス支援サイト J−Net21
ここには中小企業支援の様々な情報・成功事例などが掲載されています。

公的支援制度の検索は「支援情報ヘッドライン」 というメニューになります。

(特徴)他省庁の制度も情報提供されており使い勝手がよい。都道府県の指定、国の制度を検索に含める・含めない、募集中の制度だけにするか募集期間に関係なく検索するか、などの選択もできるため、効率的な検索ができる。
例えば「愛知県の企業が(募集期間か否かの区別なく)全部でどれだけの制度が活用できるか」を調べようとすると、@都道府県は「愛知県」、A全国を対象とした制度を「含む」、B「過去の記事を対象にする」にチェックをいれ、検索ボタンを押すと大変多くの制度が検索されます。一度ご覧になってみてください。

2) 愛知県内の市町村の制度まできめ細かい唯一の公的機関サイト
また、市町村の制度までより細かく見たい、という場合は、 あいち産業振興機構の補助金・助成金一覧サイト が便利です。愛知県内限定ですが、市町村独自の制度まできめ細かく検索できるサイトというのはおそらく他にないと思われます。
例えば蒲郡市を検索すると、蒲郡市独自の研究開発補助金や新規取得の事業用償却資産に対する固定資産税の減免制度が検索できます。
3) 一覧性は印刷物に軍配〜あいち産業労働ハンドブック
愛知県の支援制度については、「あいち産業労働ハンドブック」 が、よくまとまっています。愛知県の制度を中心として、国の制度も併せてコンパクトに紹介されていますので「どんな制度があるのか、一覧性を持って見てみたい」という制度とのファーストコンタクトとしては活用するのがよいでしょう。
県の機関や商工会議所・商工会などで入手することもできますが、ネット上でも見ることができます。ただし、ページ数が非常に多いので、印刷することはあまりお薦めしません。できるだけ、冊子となったものを入手することをお薦めします。
非常に多くの制度があること、その検索方法を理解いただいたところで、補助金・助成金についてのご説明に入りたいと思います。 

2 補助金・助成金 活用の実際

大きく分けて、必要条件を満たせば助成金が受けられる労働関連の制度と、公募採択により決定する研究開発支援の助成金とに分けられます。
1) 労働関連の助成制度:情報収集と申請のタイミングに注意
@雇用維持を最重要視した助成金が拡充
「中小企業緊急雇用安定助成金」。もう、多くの企業がご利用だと思います。
これは、景気の変動等により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業、教育訓練、出向を行って、労働者の雇用の維持をした場合に、休業手当の4/5を、3年間で一人当たり300日分まで助成されるという制度です。休業日に教育訓練を行う場合には、一人当たり6,000円/人の上乗せがされます。
また、6ヶ月平均の過去6ヶ月解雇を行なっておらず、労働者数が「初回の計画届を出した月」以前6ヶ月の労働者平均の4/5以上であれば助成率は9/10にアップになるなど、手厚い助成制度として知られています。
経済環境の悪化を受け、昨年の年初以降に申請を行った企業も多いのではないでしょうか。とすると、計画届は最長でも1年ですので、再度計画届を出す時期に差し掛かっていると思われます。
昨年計画届を提出した際には、生産量の落ち込みが急激に悪化した時期ですので。
○売上高又は生産量の最近3か月間の月平均値がその直前3か月又は前年同期に比べ5%減少している(ただし直近の決算等の経常損益が赤字であれば5%未満の減少でも可) という要件に合致する企業が多かったのですが、それ以後、徐々に生産量が回復し始めた企業はどうなるでしょう。
生産量もわずかながらでも徐々に回復し、経常利益もわずかだが黒字になったが、まだまだ充分な操業度ではなく休業する日もある、という企業は、この要件では助成金の適用外になってしまいます。
そのような企業が多くなりそうだ、と想定したのでしょう。2009年12月に新たな要件が追加されました。
○売上高又は生産量の最近3か月間の月平均値が前々年同期に比べ10%以上減少していることに加え、直近の決算等の経常損益が赤字であること(ただし、対象期間の初日が平成21年12月2日から平成22年12月1日までの間にあるものに限る)。
生産量の増減比較をまだまだ生産量が旺盛であった前々年と比較し、10%以上減っていて、直近の経常利益も未だ赤字だ、という企業は、まだまだ支援の対象にしますよ、ということです。苦しいながらも雇用を維持してくれている企業への手厚い支援は続いています。

A情報収集と申請のタイミングに注意
雇用保険が財源のこうした助成金は、このように要件は非常に細かく決められていますが、要件さえ合えば、大きな金額の助成であっても、ほぼ間違いなく助成金が受給できることは「中小企業緊急雇用安定助成金」で実感されていると思います。
ということは、「制度を知っているかどうか」だけが助成金をもらえるかどうかの大きな分かれ目、ということになります。
情報収集としては、厚生労働省のサイトがあります。
しかし、お薦めは「雇用の安定のために 事業主の方への給付金のご案内 」というパンフレットです。労働関係の助成金の全てが掲載されており、支給要件も詳しく記載されています。ハローワークに用意されていますので、入手されることをお薦めします。
以下は労務関係の代表的な制度です。

制度名 助成対象
■プレ雇用段階
職場適応訓練費 職安で紹介を受けた人を、実際の職場で作業訓練を行うことへの助成
試行雇用(トライアル雇用)
奨励金
45歳以上65歳未満の中高年齢者、40歳未満の若年者、母子家庭の母、障害者等を3ヶ月程度の短期間試用雇用した場合
■雇用段階
若年者等正規雇用化
特別奨励金
年長フリーター等(25〜39歳)や採用内定を取り消された就職未決定者の雇用・トライアル雇用実施者
特定就職困難者
雇用開発助成金
高年齢者(60〜64才)・母子家庭の母他の雇用(短時間労働者としての雇用でも助成対象)
高年齢者雇用開発
特別奨励金
高年齢者(65〜69才)の雇用(短時間労働者としての雇用でも助成対象)
中小企業基盤
人材確保助成金
新分野進出等(創業、異業種への進出)若しくは生産性の向上を目指し、中核となる人材を雇用した場合
中小企業基盤人材能力
発揮奨励金
生産性向上を目指し100万以上の設備の設置を行い6ヶ月以上1人以上の対象労働者を雇い入れる事業主の、雇用環境の高度化を図り生産性の向上につながる設備導入に助成
派遣労働者雇用安定化
特別奨励金
派遣先事業主が派遣労働者を直接雇用
中小企業雇用安定化
奨励金
有期契約労働者の正社員転換制度を定め、転換者が現れた場合
フルタイム有期契約労働者に対し、正社員と共通の処遇制度や教育訓練制度を新たに規定し、その対象者が一定以上出た場合
短時間労働者均衡
待遇推進等助成金
短時間労働者の正社員化・戦力化を目的として、正社員と共通の評価・資格制度を導入、また、正社員への転換制度導入・転換実績が出た場合
■従業員教育
キャリア形成促進助成金 事業内職業能力開発計画や年間職業能力開発計画に基づき従業員キャリアアップのための研修等をする場合
■雇用維持
中小企業緊急雇用
安定助成金
景気の変動等により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業、教育訓練、出向を行って、労働者の雇用の維持をした場合(本文参照)
残業削減雇用維持奨励金 事業活動の縮小を余儀なくされた場合において、その雇用する労働者や役務の提供を受けている派遣労働者の雇用の安定を図るため、残業時間を削減して雇用の維持を行う事業主の方に助成
■定年延長・高齢者活用
中小企業定年引上げ等
奨励金
65歳以上への定年の引き上げ、希望者全員を対象とする70歳以上までの継続雇用制度の導入または定年の廃止等を実施した場合
高年齢者雇用モデル企業
助成金
(1)65歳以上までの定年の引上げ(2)高年齢者を新たに雇い入れ60歳以上の割合を高める(3)70歳以上までの定年の引上げ、等を行い、職務設計や機械設備の導入等必要となった経費の1/2を助成

労務関連の助成金の活用をお考えの場合に、注意していただきたいことがあります。
それは「申請のタイミング」です。
対象となる新規雇用や就業規則等の変更等の事案が発生する前の「予めの申請」や、一定のタイミングで「受給のための請求申請」をする必要がある制度が多いのです。つまり、どの時点でどのようなアクション(申請)をしなければいけないかをよくつかんでおくことが非常に重要で、それを逸すると助成金がもらえなくなってしまうということです。
新規雇用をしてしまってから、後で「助成対象になる人を雇用したから助成金を下さい」といっても手遅れだ、というケースや、「受給の請求申請」を決められた期間内にし忘れたために助成金をもらいそこねた、というケースがよくあるのです。
ですから、対象となりそうな事案が出てきた段階で、助成金の申請窓口へ相談し、本当に要件を満たしているか、そして、申請の手続きはどの段階でどうしなければいけないか、というポイントについて、よく確認しておいてください。
2) 公募採択型助成制度(研究開発・サービス開発系の助成)
労働関連の助成金のように、要件がマッチすれば必ずもらえる、というものではなく、一定期間研究開発等の応募を広く受け付け、その中から優れたものについて補助を決定するというプロセスがあります。採択率は低いもので2〜3倍、高いもので10倍を超えるものまであります。
公募採択型の補助金・助成金は非常にたくさんありますので「どの制度に応募するか」ということがポイントになってきます。それは、自社の研究開発がその制度にマッチしているか(応募要件にあっているか)、そして採択の難易度がマッチしているか、という2つの意味があります。

●どの制度にマッチしているか
〜どのような開発(体制・分野)を行なうかで絞込み
研究開発補助金を、開発の体制(企業単独か産学連携か)、開発の分野(環境、福祉用具など)で分類すると、大きくは次のように分けられます。具体的な助成金例は2〜3しかあげませんが、実際は非常に多くの制度があります。
制度内容・制度例 補助率 金額(MAX)
単位:万円
■企業単独での研究開発(中小企業限定)
○全国で応募可
戦略的基盤技術高度化支援事業※認定必要 委託 4500
  中小企業ベンチャー振興基金の試作開発助成金 補助1/2 500
  UFJ技術育成財団の研究開発助成金 補助1/2 500
○県内企業のみ応募可
  知的財産活用促進事業費補助金 補助1/2 250
  中小企業ものづくり基盤技術開発推進費補助金 補助1/2 200〜500
  あいち中小企業応援ファンド助成金 補助1/2 300
○市内企業のみ応募可
  大府市、知多市、蒲郡市などに独自制度あり
■産学連携での研究開発(中小企業限定)
○全国で応募可
  重点地域研究開発促進プログラム 地域ニーズ即応型 委託 500
○県内企業のみ応募可
  共同研究推進事業 委託 800
○市内企業のみ応募可
  瀬戸市、春日井市、豊田市などに独自制度あり
■産学連携での研究開発(企業規模限定なし=大企業と競合)
  地域イノベーション創出研究開発事業 委託 1億/初年度
  研究成果最適展開支援事業 フィージビリスタディ 委託 1000
  研究成果最適展開支援事業 シーズ育成タイプ 補助2/3 2億/最長4年
■特定分野での研究開発
  【福祉用具】福祉用具実用化開発費助成金 補助2/3 3000
  【福祉用具】福祉用具研究開発助成金 委託 3000
  【環境】バイオマス等未活用エネルギー事業調査事業 補助1/2 1000
■設備取得支援(省エネ設備導入への支援)
  エネルギー使用合理化事業者支援事業 補助1/3 5億円

まず、その研究開発を企業単独で行なうのか、産学連携で行なうのか、が選択の大きな分かれ目となります。もし、産学連携であれば、経済産業省系の助成制度だけでなく、大学が応募元となって文部科学省系の助成制度の活用も可能になり、応募する助成制度の幅も大きく広がります。近年の傾向として、企業単独の制度は徐々に少なくなりつつあり、企業同士の連携や大学との共同研究向けの制度が増えつつあります。
なお、今年度6月頃にたくさんの企業が応募された、ものづくり補助金は補正予算によるもので2010年度の募集はありません。
その代わりに、ものづくり企業を応援するために、従来からあった『国が指定する特定ものづくり基盤技術20分野※』への研究開発支援を行う「戦略的基盤技術高度化支援事業」の予算が54億円から150億円へと大幅増額されることになりました。
チャンスが大幅に広がったことになりますので、2010年度は狙い目かもしれません。

※特定ものづくり基盤技術(20分野)
@組込ソフトウェアA金型B電子部品・デバイスの実装Cプラスチック成形加工D粉末冶金E溶射F鍛造G動力伝達H部材の結合I鋳造J金属プレス加工K位置決めL切削加工M織染加工N高機能化学合成O熱処理P溶接QめっきR発酵S真空の維持
※問い合わせ先: 中小企業基盤整備機構中部支部 経営支援課 ものづくり担当

3 国の認定で初めて受けられる「総合支援策」とは

近年見られる傾向として、「あるテーマ」に沿った事業を行なう企業に対し、事業性が認められれば国がその計画を認定し、その認定企業だけが支援制度を活用できる、という、いわば「自ら課題を持って、積極的・意欲的に取り組もうとする中小企業」を支援する制度が毎年設けられています。
「あるテーマ」として、現在は「新連携」「地域資源活用」「農商工連携」の3つが設けられています。
それぞれの支援対象事業で、国の認定が得られると次のような補助金や特別な融資制度等の支援を受けることができます。

  新連携 地域資源活用 農商工連携
支援対象事業 複数の企業がそれぞれの持つ特徴を組み合わせ実施する事業が対象。事業(販売)をスタートしようとするステージが対象。 県が制定する「地域資源」を活用して事業を行う企業・グループが対象。(企業単独で認定可) 農林水産業者と中小企業者がタッグを組んで行う、新たな取り組みが対象。
認定までの支援 認定に向けて連携体構築アドバイス、申請書ブラッシュアップ
中小企業基盤整備機構(愛知県は中部支部が担当)に事務局設置
認定に興味のある方は、下記連絡先まで個別案件の相談をして下さい。
・新連携チーム:052-201-3068
・地域資源活用チーム:052-218-8558
・農商工連携チーム:052-201-3068
【補助金】
連携体構築のための規約作成・コンサルタント経費が対象
(MAX500万円、補助率1/2)
なし 【補助金】
連携体構築のための規約作成・コンサルタント経費が対象
(MAX500万円、補助率1/2)
認定後の支援 販路開拓など市場志向型の手厚い支援
【補助金】
新商品開発、マーケティング調査等の経費補助
(MAX3000万円、補助率2/3)
【補助金】
新商品開発、市場調査、試作品開発等の経費への補助
(MAX3000万円、補助率2/3)
【融資・信用保証】
政府系金融機関による低利融資制度
普通保証・無担保保証枠の拡大
【その他】
対象事業への設備投資に対する特別償却等の優遇措置

認定に向け、中小企業基盤整備機構に設けられたそれぞれのテーマのチームが、認定のお手伝いだけでなく、認定後もその事業が軌道のるまで、積極的に販路開拓などの支援(市場化に向けたハンズオン支援)を行ないますので、補助金による資金面以外でのメリットも大いにあります。
こうした国の事業認定→認定事業者限定への支援という支援方法は、新連携を皮切りに3年ほど前から始まったものですが、新連携の認定案件では、業績をどんどん伸ばしている企業が数多く現れ始めており、新連携事業への政策評価は高まっています。したがって、今後もこうした手法による支援メニューが創設されるのではと予想しています。

4 販路開拓へも支援あり

10年ほど前には公的な販路開拓支援というのは全くなかったのですが、徐々に制度ができてきています。
販路開拓の代表的な方法の一つに「展示会」への出展があります。自社の商品・サービス等を見てもらい興味を持った方から声をかけてもらうことで、商談に結びつけようというのものです。
愛知県内でも様々な展示会が開催されていますが、ここでは、大商圏である東京・大阪で開催される、公的機関が主催する展示会をご紹介します。公的機関が主催する展示会の最大のメリットは出展料が格安であるということです。
  来場者実績 会場 開催時期
(募集時期)
出展料
(1小間)
 
ベンチャーフェアJapan 3万人 東京国際フォーラム 毎年1月〜2月
(前年7月頃)
52,500円 中小企業基盤整備機構
中小企業展in TOKYO 4.65万人 東京ビッグサイト 毎年11月頃
(7月頃)
31,500円
中小企業展in KANSAI 3万人 インテックス大阪 毎年5月
(1月頃)
31,500円

販路開拓の方法として、こちらから相手企業のニーズを想定して提案を行う、というものもあります。
しかし、この方法で商談に至るには、相手に響くプレゼンができるか(相手のニーズを捉えた提案になっているか)、提案相手はキーマンもしくはキーマンに近いか、ということが必要になります。
首都圏・近畿圏への新製品・新サービスの提案のブラッシュアップから想定企業のキーマンへの提案に至る、いわゆる「テストマーケティング」を支援してくれるのが、中小企業基盤整備機構の「販路開拓コーディネート事業」です。
中小企業基盤整備機構では、「登録販路開拓員」として豊富な人脈を持つ企業OBの力を借り、企業が希望するターゲット企業へプレゼンする機会を提供しています。そのプレゼンが最良の結果をもたらすようにプレゼン前には、相手に響く内容になっているか時間をかけプレゼン内容を練り上げるお手伝いをします。その上で、ターゲットを定め、販路開拓員の人脈によりターゲット企業の「キーマン」を訪問、プレゼンを行い、商品の評価を受けることになります。改良要望などの評価に対応、商品の改良を図り、再度評価のための訪問を行うという「PDCA」を繰り返す中で、相手の希望する商品・取り扱いたいと考える商品として提案ができれば、商談成立に至る場合があります。
企業への同行1回あたり4000円の企業負担が必要ですが、「企業OB」の人脈を借りて販路開拓をお手伝いをするという、公的支援制度としては目新しい手法ですが、ご利用された企業では実際に商談につながるケースも多く、好評を得ているようです。

中部地区でも独自の販路開拓手法をとっている機関もあります。
中部経済連合会では「中経連新規事業支援機構」という組織が、製品開発、共同研究などのパートナーの仲介、販路開拓の支援を無料で行なっています。販路開拓等企業の情報を中経連会員に情報提供、そのネットワーク(169社)が事業評価・技術評価を行なう中で、アライアンスの実現につなげようというものです。
先の中小企業基盤整備機構の支援が首都圏・関西圏であるのに対し、この中経連の支援は、中部の企業とのアライアンス支援となり、希望する商圏により使い分けをすることができます。

5 やっぱり、知っている企業だけが得をしている

公的支援策を積極的に情報収集し、可能な限りいろいろな支援策を活用している企業では、まさに「知っている企業だけが得をする」の言葉どおり、助成金・補助金などの公的支援策により、雇用維持、研究開発、新事業開拓などの自社リスクをなるべく少なくすることに成功しています。いわば国にリスクの一部を肩代わりしてもらっているようなものです。公的支援制度の非常に上手な使い方といえるでしょう。
支援制度を知らなかったばかりに、研究開発段階で企業リスクをまともに被り「自己資金で開発を進めてきた、あと一歩のところで資金がなくなった」あるいは「完成したが事業化しプロモーションしていく資金がない」という話はよく聞きます。研究開発費には助成制度が多数ありますが、事業化(いわば儲ける段階)での助成制度というのは非常に限定的です。このような方たちが、研究開発助成金を活用し、事業化段階で自己資金を投入するという方法を知っていれば、と思うと残念でなりません。これをお読みの方々は、そうならないよう、今回のご説明がお役に立てばと思います。

6 最後に〜まだまだあるよ、公的支援

公的支援策はこうした助成制度ばかりではありません。
販路開拓や事業承継、特許支援、ビジネスプラン発表会や展示会の実施などの「出会いの場づくり」など、「ソフト的な支援」も多数あります。
ここでは紙面の関係上、説明できませんが、身近な相談相手として 「財団法人あいち産業振興機構」 へご相談されてはいかがでしょうか。