中小企業の皆様とともに40年、あいち産業振興機構の新たな出発
絶えざるイノベーションと未知への挑戦をめざして
藤井 敏夫 記事更新日.11.12.01
(公財)あいち産業振興機構 理事長

■問合せ先
公益財団法人あいち産業振興機構
〒450-0002 名古屋市中村区名駅四丁目4番38号
愛知県産業労働センター(ウインクあいち) 14.
15階

当機構が、中小企業の皆様とともに、この地域の産業の振興に取り組んで40年が経過しました。40年の年月を重ねるなか、現在、約8000に及ぶ県内企業の皆様とインターネットを通じ情報交流をさせていただくまでになり、また、当機構の取組を通じ20の異業種交流グループが活動しておられます。さらに、経営面、技術面、資金面に関して、毎年4000件を上回るご相談もいただいております。これもひとえに、中小企業の皆様が積極的に当機構をご活用いただき、当機構を盛り上げていただいている結果であると心より感謝申し上げます。 
 
 40年を経たということは「不惑」を迎えたということです。しかしながら、中小企業を取り巻く国内外の環境は、「不惑」とは程遠い、まさに息つく暇のない激変に襲われています。とりわけ、自動車産業を中心に日本のモノづくり拠点地域である本県地域の中小企業の皆様方は大変深刻な影響を日々痛感され、戸惑っておられることと存じます。 
 
 しかし、「ピンチがチャンス」という言葉があります。このような時代だからこそ、新たな展開が可能で、また求められているといえます。この新たな展開はけっして易しいことではないと承知していますが、機構40周年に当たり、その参考となればと思い、私が当機構の理事長となって1年半、この間見聞きし、体験した明るい話題をご紹介申し上げます。  

■企業・経営者の強みを生かしたビジネス展開
理事長就任直後、企業経営のトップの方々と懇談させていただきその中で、経営者の皆さんがわが社のビジネスモデルをしっかり認識され、最大限いかしておられることを痛感しました。そのビジネスモデルの例のいくつかを紹介します。

1.業態上或いは長い歴史の事業活動のなか、取引先の数がきわめて多いことに、ビジネスチャンスを見出し、業態とは直接関係しない商品の販売を手掛け、効率的に売上を伸ばすとともに、顧客満足度を高める。

2. アジア地域との経済交流が深まる中、コスト面で資源の最適調達を図るという視点から、資材(現地法人による一部加工品を含む)或いは集積回路の試作品等を人的ネットワークなどを活かし調達する。

3. 将来市場の伸びが期待できない中、コアー技術をベースに「健康」や「環境」など成長性が見込まれる異分野に積極的にチャレンジ。その可能性を探る専門スタッフが様々な機会をとらえ情報収集し、可能性の高いものについて試作品をつくり、展示会などで商品評価して、ブラッシュアップを図る。

4. ブログ、ツイッターなどSNSが急速に普及している中、板金加工の家族規模の企業が、ホームページの立ち上げ経験を踏まえその重要性を認識。皆無な営業力をカバーするため、ニッチな商品についてSNSを活用した語りかけを展開。ニッチな商品に関心を持つグループとの間でコミュニケーションから、製品アイデアも生まれ、確固たる販路を確保した。  
 
■経営資源持ち寄り型ニュービジネスの展開
中小企業の皆様に次世代産業分野展開の可能性を探るセミナーを度々開催しておりますが、その都度多くの中小企業の皆様から異句同音にでてくる言葉は「新事業展開の必要性は十分認識しているが、うちでは、<人材が>、<金が>、<技術が>なく、難しい。」ということです。機構ではこうした皆様に対し、個別にその可能性を一緒になって探る相談を日々重ねておりますが、各中小企業の皆様において、経営資源は限られお悩みは深いものがあります。こうしたなか、個々の中小企業1社では限界がある新分野へ、持っている経営資源が異なる中小企業が集まって挑戦しようという取組がいくつか始まっています。それらには以下のような特長があります。 
 
1. 理念・志の高いビジネスプランで同志を募る。 
「子供たちにいい環境を残したい。」、「需要が落ち込み傾向にある業界に新たな需要創出を図りたい。」、「多くの中小企業とのコラボにより相互に活性化を図りたい。」という高い志・理念のもと、先ずはこれに賛同する有志企業により新会社を設立。(誰かが独り勝ちするのではなくまた、社会的意義のある分野で共存共栄を図ろうとするもの) 
2. それぞれの強みを相互に組み合わせて総合力で競争に打ち勝つ。 
新事業分野への参入では、「独自商品」づくりとその「販売」がカギとなるが、それぞれで強みを有する企業との連携が進められている。開発・部品調達・製品販売という大企業では1社が有する機能をこの協働体がうまく形成できるかがポイントです。因みに、こうした協働体形成に向けて、当機構も支援に努めているところです。   
 
■海外ビジネス展開は待ったなし
国内需要が収縮する一方で、経済がグローバル化するなか、人口が多く、また個人所得が着実に増加しているアジア市場は今後飛躍的に拡大することが予測されている。したがって、アジア市場の可能性をしっかり探っていくことは中小企業にとって重要課題と考え、本年3月には当機構の事業として、中国北京で常滑焼の商談会、展示会を行った。結果は予想を超えるものであった。焼き物が中国で始まり日本に伝来したものであるが、創りこまれた日本のいい製品が評価されたといえる。ここで学んだことは、様々な人的ネットワークを活用することの重要性とともに、「予断を持たず、自信を持って海外市場に問え!」ということです。  
 

■絶えざるイノベーションこそ先進国ものづくりのコアー(核)
超円高や海外へのものづくり移転が進むにつれ、この地域のモノづくりはどうなるのかという不安の声をよく耳にします。確かに、昨年度県内のものづくりの企業数は1年で5%減少しました。一方、時々中小企業の経営者からは、驚くような先進技術を用いた製品づくりのお話をよくお伺いし、いつも経営者の皆様の気力、知力、体力に敬服しております。少なくとも、これまでの一定の品質のものを大量に安く早くつくることを競争力の源泉とするものづくりの持続は厳しいということは明らかであり、今後求められるのは、経営者の皆様の逞しさであり、これまでのものづくりの経験や各分野の先端ものづくり研究の成果を生かして、次世代自動車、環境・エネルギー、航空宇宙、医療、防災等、今後国内外で需要の拡大が予測される新しい分野に挑戦し、新製品を提案していくことではないでしょうか。そのためには、きめ細かな情報収集、技術開発・製品づくりなどで、他の企業、大学などと連携した取組むことが重要です。この地域は、金属、繊維、セラミックなど素材分野に大きな強味があります。また、大学研究機能は質量ともに、充実しており、さらに、今後の技術開発に不可欠なナノレベルサイズの極微細研究において、効果を発揮する超高度解析顕微鏡施設がすでに整備され、また、シンクロトロン光施設も間もなくオープンします。こうしたものづくりにおけるソフト、ハードの優位性を最大限生かすことができれば、日本のものづくり拠点の地位は揺るがないと確信しております。 
 
 以上、この地域の中小企業の皆様に元気になっていただきたいとの思いで、駄文を記しました。 また、このたび愛知県から公益認定を受け、公益財団法人として新たに出発することととなり、これを機に絶えざるイノベーションに向かって未知なる挑戦を志しておられる中小企業の皆様に対し、当機構は職員一丸となって、今後一層ご支援申し上げていきますことをお約束し、40周年に当たってのメッセージとさせていただきます。