専門家のノウハウを活かし経営の活性化を目指す
加藤知夫 記事更新日.06.11.06
丸ウ製陶所 取締役副社長 
■問合せ先
株式会社丸ウ製陶所
〒489-0885  瀬戸市萩殿町4丁目18番地
TEL 0561-82-3487 FAX 0561-82-2589
http://www.maru-u.com/index.html
日本六古窯の一つとして古くから焼き物の街として栄えた瀬戸市。この歴史ある街にファインセラミックス製小物・高精度部品の製造でユーザーの高い評価を得ている株式会社丸ウ製陶所があります。 主力製品は国内のみならず世界中の繊維機械メーカーの設備に用いられる糸道(ヤーンガイド)。耐熱、耐摩耗性に加え、滑らかさや複雑・高精度な品質を要求される同社の高級糸道は優れた技術力が評価され国内トップのシェアを占めています。
 

耐熱、耐摩耗性、滑らかさ、複雑・高精度な品質をもつ高級糸道

■ファインセラミックスへの挑戦

同社の歴史は昭和元年、祖父にあたる先々代加藤丑ノ之氏の電磁器(絶縁碍子)製造から始まりました。昭和44年、父である先代社長が、絶縁碍子から付加価値の高いファインセラミックス事業に特化し、現在の基礎を作りました。

「絶縁碍子を作りながら、小さくても付加価値の高いものを作ろうと考えました。繊維機械部品も陶器の糸道を作っていました。アルミナで作るといい性能が出るということを聞きつけてそれをヒントに材質を変えて行きました」。

やがて長男である現在の代表取締役 厚氏が入社をします。同社の発展において一番のポイントとなったのは次のことでした。「父が兄に“今までの成形方法ではダメだ。小物のアルミナ製品を作るために射出成形の技術を開発しなさい”という命題を与えたのです」「1年以上かかりました。兄が試行錯誤しながら成功をしました」。

この努力と執念が同社の売り物である小物・高精度部品製造技術として結実し成長の基盤となりました。

同社の競争力の源は優れた製造技術だけではありません。

「当社は繊維機械に特化しているので、お客さまの仕様要求を聞き、どのようなものを作っていくかの提案ができるのです」と言うように、開発から原材料の調達、金型、成形、加工、焼成、研磨、検査、そして専用治工具まで社内で一貫生産できる体制が取引先から高く評価されています。

■生産管理システム改善に取り組む

同社の製品は糸道から丸棒、パイプ、ノズル等、多岐にわたり、一貫生産のためお客様の要望にあわせて製造、納品するまでに多くの工程が伴います。

「以前から生産工程の管理システムに取り組みたいと考えていました。10年ほど前に大手コンピューターメーカーのハードを入れたのですが途中で誰も使わなくなって捨ててしまいました。また入れてもダメじゃないかという思いもありましたが、どうしてもシステム化を図りたかったのです」。

そこで、利用したのが「あいち産業振興機構」の専門家派遣制度でした。

「専門家の方に相談したらパソコンベースで安くできるということでした。わずかなお金で始めることができるということでしたので失敗してもいいかなと考え、コツコツとやり始めたらいい形になって行きました」。

専門家の支援を受け、平成14年、15年度に取り組んだ生産管理システムの導入は業務の効率化に貢献しています。

「お客様からの納期等の問い合わせに、今まではファイルの注文書を見て現場に走り、今どこを流れているか探して回答をしていました。今はパソコンで品番、注文番号から工程が表に出てきますからどこまで進んでいるか画面を見ながら即答できるようになりました」。

 

業務の効率化ができた“生産管理システム”

専門家の存在は担当者にとても心強かったようです。

「システムの骨組みを作ってもらいました。ソフトメーカーにソフトを組んでもらうときなど分からないこともあります。専門家の方に入っていただけるので、こちらの要望をうまく伝えることができました」。

「本当によかったですね。はたして当社だけで、コンピューターメーカー、ソフトメーカーと打ち合わせをしてうまく行ったかというと疑問です」。

平成16年度は生産管理システムの充実を進めながら次のステップとして、5S、改善活動に取り組みました。

「改善はぜひやりたいと思っていました。どうしても経営者側からアイデアを出してしまいます。それで効果が上がっても少しもうれしくはありませんが、社員が些細なことでも提案してくれてそれで変わっていくと本当にうれしいですね」。

改善活動を定着させるには大変な苦労が伴います。多くの改善提案が出るようにもっと社内でPRをしていかなければと内容の充実を検討中です。

■ユーザーの声を製品作りに活かしたい

取引先の繊維機械メーカー、商社からの製品に対する評価は高いものでした。しかし、ユーザーの声を直接聞きたい、その声を製品作りに活かしたいという思いが募ってきました。

「井の中の蛙になっていないかと思いました。おそらくそうなっているだろうと。これはいけないと思い、お客様を回ってどんな製品を要求されているのか、コスト的に競争力が本当にあるのかを知りたかったのです」。

そこで平成17年、18年度と新販路、新用途開拓を目指しマーケティング戦略について専門家の支援を受け行動を開始しました。

ユーザーの声を聞く、その一歩は足を使っての情報収集から始まりました。

「ジェトロで中国のメーカーを調べてもらい、当社の製品を売り込みに行っています。試験的に使っていただいてよければその後商談をしましょうということで、現在多くの企業にサンプルを提供しています」。

「18年度は日本の大手繊維メーカーにサンプルを提供させていただきました。“こんな形状までセラミックスでできるの”と驚かれるなどいろいろ興味を持っていただいきました。その反応がうれしいです」。

足を運んで直接ユーザーの声を聞く、この地道な努力の積み重ねが同社の製品開発に活かされています。

■夢 下請からメーカーへ

現在は会社の将来を担う人材の育成に力を入れています。その一環として新製品、新用途開発を担当する開発チームを発足させました。

「ホームページで新規問い合わせがあった場合、従来は私や社長が対応していました。それを開発チームに任せて、作り方、コスト、納期について責任を持って対応させています。そうすることで自立心が芽生えるのではないかと考えています。何でもやれる開発チームに育て上げなければいけないと思っています」。

 

若手社員の開発チーム

「下請からメーカーに脱却したいと思います。“丸ウ”オリジナルで設計をして“丸ウ”の名を入れてメーカーとして売りたいですね。当社は金型部門がありますのでアイデアさえあれば形にすることは簡単です。丸ウ製陶所が開発した製品であればどこにでも売っていくことができます」。

同社は専門家派遣制度を活用して経営の活性化を図ってきました。

平成16年度には愛知ブランド企業の認定を受け愛知県を代表する物づくり企業として更に評価を高めました。丸ウブランドの製品が世界に打って出ていく姿を今から楽しみにしています。

(取材・文 小藤経営労務事務所 小藤省吾)
 

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