人間育成を基本に無限の可能性に挑戦
原 芳伸 記事更新日.07.10.01
株式会社三原工業  代表取締役
■問合せ先
株式会社三原工業
(本社) 〒448‐0008 刈谷市今岡町新田52-2
TEL 0566‐36‐4012  FAX 0566-36-2669
 http://www.mihara-co.com/
多様化する取引先のニーズ、厳しい受注単価、短納期への対応、高まる品質精度要求と、製造業を取り巻く環境は厳しさを増しています。 この現状を打開するためには的確な設備投資が欠かせません。

今回はあいち産業振興機構の設備資金貸付制度を活用し生産設備の充実に努め、より良いもの造りに挑戦する、株式会社三原工業 代表取締役 原 芳伸氏に人材育成にかける賭ける想いと設備資金 貸付制度の魅力、今後の目標を語っていいただきました。
■人材育成に賭ける想い
三原工業が位置する刈谷市は、大企業から中小企業まで数多くの工場が集積している県下でも有数の製造業の町。そのため人手不足は深刻でどの企業も若年労働者の確保に苦労しています。しかし同社は毎年のように高校卒の従業員を採用しています。

「従業員の平均年齢は32,3歳くらいです。毎年高校生を新卒で一人くらい採用して7年ほどになります。中小企業でも定着が良くて育ててくれる会社なら生徒を出したいという高校の先生の考えもあり今年も一人来てくれました」

今の若者は辛抱ができないといわれます。しかし三原工業が採用した新卒者はほとんどが定着し会社を支える戦力として活躍しています。

「10年かかっても生きていく力をここで身についてくれればいいと長期的な考え方で育てています。自立型の人材になってもらいたい、生きる力を身につけ社会に貢献できる人になってもらいたいというのが私の願いです」

「多くの企業は早く人を育て利益を生むようにしたいと考えますが、時間をかければ必ず一人前になるのです。あせったら教育というものはうまくいかないなと新卒を受け入れてからやっとわかるようになりました」
■人が育つことが会社経営の喜び
また自分は成長していると実感させることも大切といいます。

「私は働いている人が喜ぶことは給料の額だけではないと思いました。成長させてもらっているとわかったときは必ずやる気が出ると思います。人間を成長させるには目標と目的がいるといわれますが、たとえば資格を取るなど目標を持とうと勧めています。やはり目標を持つ人間は明るさが出ます」

「会社経営をやっていて一番の喜びは人が育ってくれることです。金儲けよりも従業員が一年たったらここまで育ったかという喜びは代えがたいものです。それが生きがいです。だから10年かかってもいいのです。経営者がどれだけ辛抱できるかです」

「10年たったときに結果が同じであれば直ぐに上にあがっていくより一歩一歩成長していくことが人生ではないのかと思います」

■設備資金貸付制度の魅力
三原工業は長年にわたり生産設備の充実に努めてきました。そしてその多くが設備資金貸付制度を活用しての導入でした。設備資金貸付制度利用の魅力とエピソードについて伺いました。

「20年以上前から利用しています。今年もお願いしました。設備資金貸付制度は県から借りられること(編集注:平成12年度以降は当機構が実施)、また中小企業を育成していくための制度であることに安心感があります」

「当時はわずかな人数で仕事をしている時でしたが、苦しい時でも中小企業を育成する制度だから利用すれば道が開けるのではないかと思いました。また個人でやっていたときは経理なども十分できていなくていろいろ指導してもらいました。内部体質を良くして税金を払うことが経営者の仕事だといわれ目が開きました。だったら税金を払える会社にしよう。そして胸を張って制度を利用しようと考えました」

原社長は継続した設備投資の重要性をよく知っています。

「以前はかなりの設備投資をしてきましたが、無謀な面もあり一時止めたのです。そうすれば財務体質はよくなるのですが、今度は設備の更新が急激に必要となります。そこで安定した設備投資が必要と思い 、利益と法定償却の範囲で毎年一定額の設備投資を行うことを方針としています」
■中期3ヵ年計画「無限の可能性に挑戦」
今年発表した中期3ヵ年計画ではこれからの三原工業の進む道を明確にしました。基本方針に「無限の可能性に挑戦」を掲げ、業種を切削専門加工業から横展開を図り、業態を量産から多品種中・小量切削加工業へ、市場・分野を異型物、難切削加工を中心に自動車産業から他の産業へシフトすることを目指します。現状に留まるのではなく新たな可能性にチャレンジする姿勢を打ち出したのです。

「継続を考えると今は儲かるといって量産品をやっていても仕事がなくなったら、ましてそのウエイトが2、3割あったら打撃が大きいのでそれは避けようと考えています。いま自動車はすごく進化しています。部品もあっという間に変わってしまいます。以前は10年以上続いたのですが今は短期間に変わってしまいます。量産品は私たちの分野ではなくなってきました。だから多品種少量にシフトするため今の従業員を育てています」


「今まで機械力に頼った部分がありました。これからは手を使った技術で利益を生んでいきたいと思います。私の基本的な考えは他社が嫌うものを手がけ利益を生む体制を作ることです。この体制ができたら強い会社になると思います。また完成部品で納められる体制をここ5年くらいで作ることをイメージしています。今の場所は焼入れメーカーなど多くの工場がある恵まれた立地ですから、グループ的な横のつながりを生かした展開をしていきたいと思っています」


現在、子息二人が社長を支えながら、これからの会社経営を担う準備が着々と進んでいます。
また従業員も社長の想いを受けとめ技能だけでなく人間性の向上に努めています。 会社も技術力の向上を目指し外部講師を招いての研修の実施、将来を見据えた設備投資と魅力ある会社作りに一丸となって取り組んでいます。
これからの三原工業の飛躍に期待しています。

(取材・文 小藤経営労務事務所 小藤省吾)       
 

■ 設備資金貸付制度についてはこちらをごらんください。