三彰電工は1984(昭和59)年に創業した。大手電機メーカーの製品梱包用木箱を製造していた縁から、同メーカーより三相モーターの組み立てを勧められた先代社長が起業したのが発端だという。当初、機械の組み立てからスタートしたが、翌年機械加工に着手する。1989(平成元)年さらに精密な作業が可能なNC複合旋盤を導入し部品加工に取り組むこととなる。1996(平成8)年にはサーボモーターの部品加工を開始した。大手電機メーカーの数ある協力会社としては後発であったが着実に実績を上げていった。
「運なんですよ、本当に」と夏目社長は、笑顔で謙虚に語る。
しかしその謙虚さの根底には、自社の実績と行動への自信が見える。
三彰電工のつよみは「多品種、小ロット」を可能にする製造体制だ。製造部品を2,000種類程度扱いながら、それらを1個から数千個のオーダーで製造する。こうした特徴は、数ある協力会社の中で後発であったことから磨かれたものであった。
「初めは小ロットの発注しかなかった。お客さまに喜ばれるよう要望にしっかり対応した」(夏目社長)
お客さまの要望に応えるため、小ロットに対応できるNC複合旋盤の導入が必要だった。その設備投資を早い段階で決断したことが、結果的にその後の発注増加につながった。
夏目社長が経営で大切にしていることは3点ある。「お客さまに信頼され喜ばれる会社、社員に愛される会社、そして適正な利益が上がる会社」である。お客さまに喜んでいただくために何が必要かを常に先回りして考え結果を出す。その対価としての利益は次の設備投資や社員への還元に充てられる。
夏目社長が挑戦した経営革新は、このような経営方針の軌跡である。
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