お客さまの要望は「応える」から「読みとく」へ
代表取締役社長 夏目 洋一  
三彰電工 有限会社
■主要事業
機械用モーターなど電気機械器具製造
■問い合せ先
三彰電工 有限会社
〒441-1335 愛知県新城市富岡字向小吹58
Tel 0536-26-1211

三彰電工は1984(昭和59)年に創業した。大手電機メーカーの製品梱包用木箱を製造していた縁から、同メーカーより三相モーターの組み立てを勧められた先代社長が起業したのが発端だという。当初、機械の組み立てからスタートしたが、翌年機械加工に着手する。1989(平成元)年さらに精密な作業が可能なNC複合旋盤を導入し部品加工に取り組むこととなる。1996(平成8)年にはサーボモーターの部品加工を開始した。大手電機メーカーの数ある協力会社としては後発であったが着実に実績を上げていった。 「運なんですよ、本当に」と夏目社長は、笑顔で謙虚に語る。 しかしその謙虚さの根底には、自社の実績と行動への自信が見える。 三彰電工のつよみは「多品種、小ロット」を可能にする製造体制だ。製造部品を2,000種類程度扱いながら、それらを1個から数千個のオーダーで製造する。こうした特徴は、数ある協力会社の中で後発であったことから磨かれたものであった。 「初めは小ロットの発注しかなかった。お客さまに喜ばれるよう要望にしっかり対応した」(夏目社長) お客さまの要望に応えるため、小ロットに対応できるNC複合旋盤の導入が必要だった。その設備投資を早い段階で決断したことが、結果的にその後の発注増加につながった。 夏目社長が経営で大切にしていることは3点ある。「お客さまに信頼され喜ばれる会社、社員に愛される会社、そして適正な利益が上がる会社」である。お客さまに喜んでいただくために何が必要かを常に先回りして考え結果を出す。その対価としての利益は次の設備投資や社員への還元に充てられる。 夏目社長が挑戦した経営革新は、このような経営方針の軌跡である。


整然と機械が並ぶ工場内



従業員から

トラブルも減って、ムダ遣いがなくなった。
機械工作部 工程課長 鈴木 宏幸さん
「経営革新計画」によって素材の仕入れから外注まで一元管理できるようになったおかげで、職場がきれいで働きやすい環境になった。作業の精度が向上し、在庫問題も解決できた。我々だけでなく協力会社の方にも好評なのがうれしい。


要望に対応できる環境づくりが必要だった。

転機は、それまでの実績が功を奏し、さらに高いレベルの要望が生じたことだ。ダイレクトドライブモーターの主要部品の製造に関する依頼があったのだ。ダイレクトドライブモーターは主に産業用ロボットのアーム関節部分に使われる。それまでの製品と比較してモーターの力と動きをより高い精度でコントロールする必要がある。そのため各部品の精度もこれまでの製品と比較してさらに高いレベルが求められた。 技術レベルの高度化に加え、電機メーカーからの供給に頼っていた材料を自社で調達する必要も生じた。 「お客さまと常にコミュニケーションを取っていることで、その先のヒントが見えてくる」(夏目社長) そんな中、設備投資を考えていると、新城市商工会から「経営革新計画」の存在を知らされることになる。



日々意識している管理が役立った。

お付き合いのある税理士事務所と新城市商工会に相談しながら事業計画を作成していった。毎月の数字を細かく観察することが習慣づいていた夏目社長にとっては、税理士と事業計画を練り上げていくことは難しくはなかった。定期的に会社の状態を見ることは先代社長から続く会社経営のコツだったが、それが経営革新に役立ったのだ。 「経営革新計画」の「新企業育成貸付」を活用してCNC旋盤機を導入した。また在庫管理のために専用ソフトウェアを開発した。

精度と生産性の向上


高精度な切削加工と穴あけ加工を同時に実施可能なCNC旋盤機を購入したことで、自社のつよみである「多品種、小ロット」の幅をさらに広げることに成功した。電機メーカーからの要望にも確実に応えることが可能になった。また、在庫管理の精度も格段に向上した。原材料の調達から製造、出荷までの一元的な管理が可能になった。それによってムダな在庫が減り「多品種、小ロット」を支える大きな力になっている。

社員が働きやすい環境へ


新しい機械の導入は現場にとっても作業の効率化につながった。最新鋭の機械は数値を入力することで管理できる部分が多くなっており、人的ミスを減らすことができた。また、在庫管理システムの導入は、受発注のミスを削減することが目的だったが、工場内の整理整頓にもつながり、きれいで働きやすい工場の実現に成功した。


お客さまの要望、その先を読みとく。


経営革新を実現した三彰電工は電機メーカーからの受注が好調なこともあり、現在の工場スペースが手狭に感じるようになってきた。次は新しい設備投資が可能な新工場の建設を視野に入れ経営を進めている。 「お客さまに期待し続けていただきたいからね」(夏目社長) 夏目社長は常にお客さまの要望のその先を見据えている。


経営革新のポイント