「やさしさ」を実現する経営革新 地域密着の多店舗経営への挑戦
代表 松浦 茂  
ハミングバード
■主要事業
サンドイッチ・ハンバーガーなどの製造・販売/イタリア料理店経営
■問い合せ先
ハミングバード
〒490-1111 愛知県あま市甚目寺山之浦109
Tel 052-443-4877

カントリー調の音楽が流れ、お客さまの笑顔があふれる店内。キッチンには、仲睦ましく店を切り盛りする夫婦がいた。1998(平成10)年、松浦代表の飲食店を経営したいという夢が実現し、サンドイッチ・ハンバーガー専門店「ハミングバード」を開店。「人が集まるお店にしたい」と考えていたが、座席数が20席しかないことと、駅近くという立地条件を考慮し、テイクアウトにも力を入れた。創業当時から、素材へのこだわりを守ることで、地元の常連に愛され続ける飲食店となった。 そして、2008(平成20)年、イタリア・トスカーナ地方で修業を積んだ息子の加藤功さんがオーナーを務める、素材にこだわる本格イタリアン「カスターニョ」を開店した。












ハミングバードで使わないパンの耳を一晩乾燥させたもの。パッパルポモドーロに使用する。
人気メニューのパッパルポモドーロ
トスカーナ地方に古くからあるトマトベースのパン粥


「全てに『やさしい』」ことが経営理念

「ハミングバードのサンドイッチには、野菜をたっぷり入れる。余分な添加物は一切使わない。使う野菜は専業農家である父の畑で採れた有機野菜」松浦代表は穏やかな口調で続ける。 「収穫できない時期は国産野菜を仕入れることもあるけれど、じゃがいもなど定番の野菜はもちろん、カスターニョで使うイタリア・トスカーナ地方特有の珍しい野菜も、息子が私の父と一緒に栽培し、朝採れた野菜を使っているんだよ」(松浦代表) さらに、チーズや生ハムなどの食材も本場イタリアから取り寄せるほど素材にこだわっている。 「自然や人に『やさしい』食材で食を提供し、『やさしい』時間を過ごしてもらう」その理念は松浦代表や従業員の表情にも表れている。


従業員から

両店舗での相乗効果をさらに生かしていきたいです。
カスターニョ オーナー兼メインシェフ 加藤 功 さん
本場イタリア・トスカーナ地方の味にこだわるメインシェフ。「当店のお客さまの多くはハミングバードのお客さまなんです。両店舗それぞれの得意分野やコンセプトなど特色を生かして、地域の皆さまに喜んでいただけるようなサービスを提供し、今後も事業を展開していきたいです」。


父の「思い」と息子の「夢」

より多くのお客さまにこだわりの料理を提供したいという松浦代表の思いとは裏腹に、ハミングバードの店舗条件ではさらなる事業拡大が困難だった。 その一方で、息子の功さんには夢があった。「叔母の経営する日本料理店を改装してイタリア料理店を出店したい」という夢だ。父である松浦代表の「思い」と息子である功さんの「夢」が重なった。父は息子の夢を後押し、息子はイタリア・トスカーナ地方に修行に行った。そして、父は、息子の独立に合わせ、イタリア料理店の出店を決意したのだ。


信頼を寄せるあま市商工会から「経営革新計画」を紹介される。

松浦代表には、ハミングバードの開店以来、あま市商工会に信頼を寄せる担当の早川さんがいた。息子の修行が終わり、ようやく出店の目途がついた頃いつものように相談した。「叔母の経営する日本料理店を改装してイタリア料理店を開店したい。どこで融資を受けるのがいいかな」(松浦代表)、「状況を詳しく教えて下さい。『経営革新計画』の支援策を使って融資を受けられるんじゃないかな」(早川さん)こうして、タイミングよく「経営革新計画」に出会うこととなった。


「申請には苦労したよ。でも、申請して良かった」

「申請書の『経営革新の内容及び既存事業との相違点』の書き方が分からなくて、あま市商工会や中小企業診断士に指摘されては何度もやり直して、苦労したよ。でも、おかげで安い金利で借りることができてよかった」(松浦代表) こうして、「経営革新計画」の承認を得て、「新企業育成貸付」の制度を活用できたのだ。
一般的に、製造業と比べサービス業では事業の新規性を打ち出すことが難しいと言われている。だが、ハミングバードのようにサービス業であっても「経営革新計画」を専門家に支援してもらうことによって、事業を発展させることはできるのだ。



ハミングバードのお客さまが新店舗でもお客さまに


「カスターニョオープンの日、9割のお客さまがハミングバードのお客さまだったのよ。びっくりした」と妻の美千代さんが語る。「カスターニョでランチをして、その後ハミングバードでお茶をしてくれるお客さまもいる」優雅な時間が過ごせるイタリアン、気兼ねなく立ち寄れるハミングバード。両店舗を楽しんでいただけるお客さまの様子を笑顔で振り返る。


「ハミングバードで提供できる商品数が増えた」


さらに松浦代表は、「カスターニョで作るクリスマスチキンはこちらの店舗でも販売しているんだよ。両店舗で取り扱えそうな商品を意識するだけでなく、イタリアンの食材を見ると、今まで使ったことがない珍しいものがあるからサンドイッチで使ってみようと思うようになったんだ。カスターニョで使う生ハムやカマンベールチーズを使ったサンドイッチも作っている。キッシュも商品化したんだよ」(松浦代表) 常にハミングバードで新商品として扱える食材はないか意識するようになったという。


「人材面での交流ができるのがいい」


両店舗の多忙な時間帯や状況によって柔軟に動くことが出来るようスタッフ(妻をはじめ社員やアルバイト)を配置する。「土日はアルバイトのシフトを両店舗で共有できるようにしている」(松浦代表) 両店舗で働くことで、スタッフの接客スキルやモチベーションの向上につながっている。 全てに対する「やさしさ」。それは、松浦代表にとって、お客さまに愛される地元密着の飲食店を営む原点なのだ。


経営革新のポイント



商工会の声


あま市商工会 早川 博之 さん
新規事業に伴い融資の相談を受け、金利の優遇が受けられる経営革新計画をお勧めしました。また、申請時に中小企業診断士による計画・ビジネスプランの支援を行いました。今回のような支援を行えたのは、松浦代表が普段から気軽に商工会に相談にいらっしゃるからです。商工会が力になれることは、多岐にわたります。企業様のお力になりたいので、困ったらちょっとしたことでもよいので、お気軽にお越しください。