「あたりまえのことをあたりまえに」皆様から選ばれる会社に
代表取締役社長 市川 尚宏  
三栄鶏卵株式会社
■主要事業
鶏卵販売業
■問い合せ先
三栄鶏卵株式会社
〒444-0917 愛知県岡崎市日名西町2-30
Tel.0564-24-4455
http://sanei-keiran.com/

卵は毎日の食卓に上り、日本人1人当たり毎日約1個の卵を消費しているほど身近な食材である。だからこそ、「新鮮・おいしい・安全」を追求する必要がある。「あたりまえのことをあたりまえに」取り組み、皆様から選ばれる会社を目指しているのが、三栄鶏卵株式会社だ。

三栄鶏卵株式会社は、養鶏業者から卵を仕入れ、厳しい自社の管理体制の下で洗卵、選別、包装、保管を行い、スーパーマーケット等の小売店へ出荷・販売している。

会社の起源は、1891年(明治24年)、創業者の市川伊八氏が岡崎市で米穀問屋を開業したところから始まる。1916年(大正5年)には、2代目の市川八左衛門氏が飼料・肥料の卸売りに商売替えし、「市川飼料店」を立ちあげた。その後、第2次世界大戦を経て、高度経済成長期に突入した1960年代前半に3代目社長の市川三衛氏が、飼料販売で培ったノウハウを活かして鶏卵販売事業を開始した。卵を販売するスーパーマーケット等の量販店が店舗拡大するに伴い、鶏卵事業の売上も順調に伸びたことから、1980年に事業を拡大し、鶏卵部門を三栄鶏卵株式会社として組織変更した。しかし、現在の社長(4代目)である市川尚宏氏が会社を継いだ2004年には、日本の経済成長が鈍化し、鳥インフルエンザの風評被害の影響等で売上が前年度より3割落ちた状況であった。

同社のブランド卵「まんげつ濃厚卵」

「現状維持はマイナスである」

市川社長は「現状維持はマイナスである」を経営理念としており、社長就任から常に新たな取組にチャレンジしてきた。その中で、取引先の金融機関から「経営革新計画」の制度を知ったのは、社長就任して早々のことだった。市川社長にとって、新たな事業展開を支援する経営革新計画は利用しやすい制度であり、設備投資を行うにあたり経営革新計画の融資等の支援策を活用することを検討した。


「トップクラスの生産性」と「品質管理の向上」

三栄鶏卵株式会社の主要販売先は県下でチェーン展開しているスーパーマーケット等の量販店である。量販店は特定の曜日に卵の特売日を設定することが多く、そのため顧客からの受注量も特定の曜日に集中し、作業時間を延長することでその増加に対応していた。その結果、勤務時間の制約事情からパートタイマーの確保が難しくなってきた。更に、消費者の食に対する安全・安心ニーズも益々高まっており、@日によってバラツキのある顧客からの受注に対応しながら、A品質の向上を図るという2つの課題を同時にクリアーすることが求められていた。

そこで市川社長は、業界内でも「トップクラスの生産性」と「品質管理の向上」を実現できる生産ラインの確立を、経営革新計画のテーマとして取り組んだ。 「経営革新計画」の承認を受けたことで、支援策である「設備資金貸付制度」を用いて融資を受けることができ、高性能鶏卵洗卵選別包装施設を設置した。


経営革新計画の支援策を利用して設置した高性能鶏卵洗卵選別包装施設

現状の人員で生産性の向上を図る。

設備投資前に比べて、生産能力が1.3倍に増加した。また生産ラインの室温を常時25度以下に抑える温度管理を徹底し、更なる品質の向上を図ることが可能となった。

これらの取組により、現状の人員数を維持しながら、生産性向上、品質向上を図ることができ、経常利益の増加に繋がった。市川社長は「売上高を目指すより、いかに利益を出せる会社にするか」が重要であると語る。


経営革新計画の支援策を利用して設置した高性能鶏卵洗卵選別包装施設
時代の荒波を乗り越えてきた秘訣

2012年には、シンガポール向けに卵の輸出を始めた。「当時はどうすれば販売の許可を得られるのか手探りの状態で、大変だった。」と語る市川社長。今では現地に出店している日系企業を流通ルートとして、一定の売上高を確保している。

ただ海外展開については、売上拡大を目指すことも目的だが、海外展開をするぐらい元気で面白い取組をしている企業であると、社員や取引先等に思われることのほうが重要だと考える市川社長。 「何よりも、従業員のモチベーションが上がったことが大きな成果。自分たちの卵が、海外で売られているのだから…。おかげで、新聞などで取り上げていただき、従業員の家族の人や地域の方たちにも関心を持たれはじめた。これからも三栄鶏卵株式会社を応援していただけるようにと考えている。」と語った市川社長の言葉を聞いたとき、明治に創業し、大正、昭和、平成と、時代の荒波を乗り越えてきた秘訣の一端が見えた気がした。


経営革新のポイント