ひとつひとつ 手間を惜しまず昔ながらの方法で作られていく「和ろうそく」
ゆらぎの魅力を体感していただきたい
磯部亮次 記事更新日.06.07.05
磯部ろうそく店 代表者
■お店紹介
・ 主力商品・サービス/ ろうそく・天然香木・線香
・ 住 所/ 岡崎市八幡町27 
・ TEL 0564−24−0245 FAX 0564−24−0241
・ E−mail candle@sun-inet.or.jp
http://www.sun-inet.or.jp/~candle/
・ スタッフ数/ 7人
・ 創業年度/ 江戸中期 
和ろうそくの始まりは、室町時代のころといわれている。以来、祈りの人びとの心に光明を与え、貴族や武家、商家の富の象徴として使いつづけられてきた。

現代になると「和ろうそく」の優しく小さな炎は、癒しの効果も認められ、落ち着いた時間(とき)を過ごしたい人たちの間で、静かな楽しみとなっている。

■創業300年、八代目としての抱負は
『和ろうそく』の存在が忘れられかけた時代の中で、かたくなに手技を受け継ぎ、工房を守り続けていますが、300年の伝統と技法をただ伝承するだけでは、未来はないと思います。当り前のことが難しくなった今だからこそ、まっとうな素材、まっとうな作品を追求しながら、歴史的価値を次世代へ継承していくことが大切な仕事だと思っています。

根気のいる作業を何度も繰り返し、複雑で熟練の技から生まれる『和ろうそく』は心もとない灯りですが、ほのかな光を暮らしの中で楽んでみてください。いつもと少し違った日常を演出してくれますよっ!!

一本一本のろうそくに心を込め、まっすぐに素材に向かう磯部氏

■職人(商人)としての生き方、座右の銘
『一期一会』を大切に、モノづくりに対峙しています。
つくるのは一度に沢山ですが、灯すのは、たった一本のろうそくです。
お買い求めいただいたお客さまに、一本のろうそくの炎に共鳴していいただく。
その瞬間を見極めて、一本一本、ムラのないよう心をこめて製作しています。
■磯部でしかできない モノづくりの理念とは
天然素材のハゼの実は、まさに循環型社会にぴったりの素材だと思います。ハゼの木は、手入れをし、実を採ってやらないと成長しない植物です。環境に、健康に、これほどの適材は見当たらないのではと思っています。
しかし、生態系の破壊がすすみ、いつまで原料の供給が続くかが心配の種。い草でつくる灯芯、ハゼの実から絞る純植物性ワックスの和ろうそくは、煤も煙も少なく大気も汚染しない理想的な光源と自負しています。
愚直に、昔づくりに徹していますが、新しいモノづくりにも情熱を注いでいます。その一つの例が『岡崎キャラクター和ろうそく』で、地元の中学生のアイデアを製品化し、岡崎らしい商品として人気を得ています。

地元中学生とのコラボレーションから生まれた
“岡崎キャラクター和ろうそく

■今後の夢、目標
職人たちが磨き伝えてきた技術と、より高い品質のモノを作ろうとする情熱だけでは、後継者がいなくなるのは時間の問題。伝統の技を守り伝承していくためには、職人の社会的地位、誇りをどう高めていくかにかかっています。
国の伝統工芸品の指定を得るのも方策と思います。一人では解決できない難題ですが、職人、匠、工芸家、デザイナーたちが力を合わせ、何としても国の指定を勝ち取りたい。仕事の合間をぬって飛び回っているが、時間がないのが悩みです。

すべてが手作業の伝統の技
後継者問題は大きなテーマだ

■お客さまの信頼を得るためにしていること
デパートや各地の物産展等イベントに積極的に出展し実演することで、お客さまの声を聴き反応をじかに肌で感じることができます。新しい商品づくりのヒントを得て、道を切り拓きたいとの人生観からです。
『絵ろうそく』のイラストも現代の感性を採り入れるなど、トレンドにも対応しています。ネット販売も早くから手がけ、提案型の情報発信をしています。
■地場産業と匠の復権にかける活動を仕掛ける
“おかざき匠の会”の創立メンバーとして、職人・匠の復権と新しい技の研鑽、新市場の開拓に力を注いでいます。愛・地球博(エキスポ)の市民地球村に参加したことで、ネットワークは想像以上に広がりました。
今春から始まったMHKの朝ドラ『きらり』の放映もフォローの風と受け止めています。この機会に岡崎伝統の技、歴史に培われた職人衆が産み出す商品を、さらに大きくはばたかせたいと願っています。

サイズ、形、色、絵柄もさまざま
伝統とトレンドを融合させた新しいスタイルを追求している

株式会社ブレーンプランニング代表取締役。
マーケティングプランナー、コンサルタント。 業務改革、経営指導の他、都市再開発、商業施設計画、中心市街地活性化等に関する企画、指導を行っている。
●伝統工芸とモダンが一体となった店づくりを
店に一歩足を踏み入れると、手づくりの温もりと歴史が語りかけてくる空間がある。
老舗の風格と現代の生活シーンにマッチした、モダンな感性と伝統が共生する売り場づくり、そんな仕掛けがほしい。
お客さまとの交流、交歓の場である店(工房)は、価値を共創する場でもある。  
●細かい気配りが、お客さまの心を動かす
心を癒す、非日常の世界を創り出したい――お客さまの期待は“モノ”ではない。お客さまの期待は、磯部という匠がろうそくに寄せる熱い思いであり、より良いモノを生活の中で使いこなし、美しいインテリアを演出する灯りの提案であり、アイデアである。一葉の栞、一枚のラッピングにも個性を主張し具現化すること。
「お客さまに感動を与えれば、感動が大きな波として返ってくる」。