〜歴史に息吹を〜煉瓦ソムリエの職人技
記事更新日15.05

専務      木村 隆之

【問い合わせ先】
加賀耐火煉瓦株式会社
愛知県名古屋市中区千代田2丁目2-30
TEL 052−241−3651・FAX 052−241−3655
HP http://www.taikarenga.com/

今回はレンガのソムリエが職人技を使って歴史建造物に息吹を与えた「あいちの製品紹介」です。
加賀耐火煉瓦株式会社(昭和28年に創業)は、名古屋市中区で煉瓦(レンガ)・耐火材の販売と施工を一貫している会社です。60年以上の歴史と経験で培ったレンガのスペシャリストが半田赤レンガ建物に息吹を与えました。

※半田赤レンガ建物は、愛知県半田市榎下町8番地にあります。
その竣工は古く、1898年(明治31年)10月に丸三麦酒株式会社のビール工場として誕生しました。戦前はビール工場として46年、戦中は中島飛行機製作所の衣糧倉庫として、戦後は日本食品化工株式会社の工場として平成6年9月まで使用され、その後平成8年に半田市が買取りました。

100年以上この地に建ってきた半田赤れんが建物ですが、老朽化や改修による構造体の欠如など、耐震上の不安がありました。このため平成26年から27年にかけて耐震補強工事と施設公開のための内装設備の改修が行われました。耐震補強はカブトビール工場時代の姿を残すために、レンガの壁の中に鉄筋を入れて補強する方式を主体として行われました。


■ さまざま施工に関わっている

加賀耐火煉瓦株式会社の先代や現社長が赤レンガの施工に携わったものは、旧名古屋高等裁判所 明治村(赤レンガ道路、千早赤坂小学校花壇)枇杷島公園 久屋公園など多数あります。

■ 愛知県は煉瓦(レンガ)の産地

煉瓦は粘土を主材料として製造されます。瀬戸、三河は良質の粘土があり、各々焼き物の産地です。そのため、明治から戦前までは煉瓦製造が盛んでありました。戦後はその他の建材の普及により煉瓦の製造は衰退するものの、株式会社岡田煉瓦製造所、岡本煉瓦株式会社、美濃窯業株式会社などで生産されています。

■ 耐火煉瓦とは
耐火煉瓦とは、窯炉その他の高温で使用される構造物の素材として用いる高温に耐えられる煉瓦です。赤煉瓦は、耐熱性を目的に製造されたものではありませんので、常に200度を超えるような環境では使用できません。(今回の半田赤レンガ建物では使用していません。)

■ 熟練とは

明治維新、富国強兵策として様ざまなレンガ工場が建設されました。西洋諸国から入ったレンガ積み方式も多数です。古い建物を一目見て、このレンガ積みはイギリス式、フランス式等瞬時に積み方を察知することから始まります。 現場においては、古いレンガを剥がし、想定外の事態が出てきます。当たり前のことですが、毎回現場に来て初めて分かる課題に対処できることも熟練の技です。 また、レンガ規格が戦前と戦後で異なるため、積み上げる際に高さが異なります。高さがことなれば、目地もズレます。そのため、高さを合わせるためにレンガを削る地道な作業も必要です。半田赤レンガ建物にもこの熟練の技が見事に活かされています。


■ 古いレンガをリユース

今回は名古屋市千種区にある鍋屋浄水場で使用されていた赤レンガを再利用しています。なぜなら、今回の半田レンガ建物は、古いレンガが醸し出す風合いを求めているからです。


■ 修繕作業中の現場@

建物外周には足場が設置され墜落・飛来落下防止のためメッシュシートが張られています。


■ 修繕作業中の現場A

写真に示す部分は、窓枠の上部アーチを一部補修した所を示します。台形のレンガをはめ込みながらアーチ形を整えます。このアーチ型左半分の補修部分も、全体工事が終わるころには馴染み、全体的に調和されると思われます。



■ 修繕作業中の現場B

リアル感と歴史的な重みを残す工夫として、レンガのすき間に草木の種子が入り、風月に耐えながら茂っている状態を残しながら補修を進めます。



■ 修繕作業中の現場C

写真に示す通り外壁からレンガが突き出しています。この突出し部分を修理しました。突き出した部分が落下しないようイギリス積みの特徴を活かした熟練の技術が隠されています。

■ 主なれんが工事

加賀耐火煉瓦株式会社では、耐火煉瓦を使って以下の施工をしています。
・金属熱処理 熱処理路
・木材加工 ボイラー
・火葬路
・鋼材 ベル炉
・自動車部品製造 煙道
・清掃工場 ごみ焼却場
・養鶏場 熱風炉
・うなぎ屋 炭火蒲焼き炉
・研究施設 焼却炉
・金属熱処理 熱処理路
・公園 バーキュー炉

加賀耐火煉瓦株式会社
赤煉瓦倶楽部半田

 

取材・文 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行