ワイヤーハーネスの便利屋さん
記事更新日15.07

代表取締役社長      谷口 修二

【問い合わせ先】
ホッコー株式会社
愛知県春日井市下条町1151-1 
TEL 0568-85-3711・FAX 0568-83-8215
HP http://www.hokko.com/index.php

今回はワイヤーハーネスの便利屋機能(困ったらホッコー、ホッコーなら何とかなる)を前面に打ち出した『あいちの製品』です。「ものづくりそのもの(製品そのもの)にある特徴」より「差別化したものづくり」を提供している『あいちの製品』紹介です。

皆さんは飲料やタバコの自動販売機の中を覗いたことがありますか?
自販機内の温度管理からお客様が選んだ商品のボタンと自販機内商品のストックと連動、つり銭の計算等あらゆる情報をつなぐ配線で詰まっています。このような情報をつなぐ線(ワイヤーハーネス 注1)の製品紹介です。

ホッコー株式会社は、名古屋市中区に本社を構え、春日井工場(愛知県春日井市)を中心拠点に京都と海外関連会社(中国:大連名興工業有限公司 / 香港北興有限公司 / 北興国際貿易(上海)有限公司)を束ねてワイヤーハーネスとケーブル加工(注2)に特化した企業です。(注3 注4)

※注1)ワイヤーハーネスは複数の電線を束ね、端部にコネクタを取り付けた物です。電線を束ねたことにより機械の組立工程を簡略化、機械空間の縮小化、振動による擦れ合いを削減化等の利点を享受できます。

※注2)ケーブル加工とは、絶縁体と保護被覆で覆われた電線です。その先端にコネクタを取りつけます。

※注3)ホッコーの由来は中国黒龍江省のチチハルと言う北方の場所で創業。戦前の1930年代に北方で興した食糧運搬の会社「北興商会」を経て「ホッコー」となりました。

※注4)中国上海地域における事業基盤強化を目的に、上海に現地法人『北興国際貿易(上海)有限公司』(以下 北興国際貿易)を2013年3月に設立し、営業を始めました。


■ ものづくりが必要な地から出発

戦後の復興期、電力会社が電気を供給するために名古屋では電線が必要でした。同時に名古屋にある大企業の工場内で機械を動かすためにも電線が必要でした。そのため、京都から名古屋に出張所を構えて電線販売業を始めました。

春日井工場はJR中央線春日井駅の南に位置し、名古屋への電線供給保管機能を備えていました。今では多品種少量生産工場ですが、その当時は人の背丈ほどある電線を巻いた出荷電線ドラムや木製の電線巻き芯が所狭しと積まれていました。「切ってもOK、束ねてもOK」を合言葉に電線販売に邁進していました。




■ ものづくりへの取りかかり

日本の復興と共に、変化する社会の需要に対応し、業種や系列にとらわれる事無く、ビジネスの輪を拡げ、内容も電線販売から製造加工へと進みました。すなわち、家電から産業機械等製造業を支えるFA設備・産業機械に使うワイヤーハーネス、自動販売機内に使うワイヤーハーネスの製造加工です。

愛知県は自動販売機用の缶コーヒ―が生まれた地でもあります。高速道路のサービスエリアに設置された缶コーヒー自動販売機(ポッカコーヒー)から今日の自動販売機大国へ発展しました。

また、愛知県は遊戯機(パチンコ)発祥の地であり、パチンコ関連企業も多数あります。
1980年代の「777」「フィーバー」からパチンコのデジタル化が本格化したこととコンピュータによる一括管理方式(モニターを使ってホール全体を管理)が電気配線の需要に働きかけました。この2つの産業に関わったことが今日のホッコー株式会社を支えています。



■ 繊維産業を参考に

戦後の日本は繊維産業を中心に復興を目指しました。その後は自動車産業です。これらの産業は多数の企業を系列の中に組み込まれた産業構造になっています。
1969年1月にアメリカ大統領ニクソンが選挙機関中に発した繊維産業保護の公約をキッカケに繊維不況が始まります。(綿を売って縄を買うのか! 荒れた国会運営や城山三郎の「官僚たちの夏」が思い出されます。)系列の中に入れば業界不況のリスクが増します。そのため、特定にこだわらない多様な取引先の開拓を目指しました。

パチンコ製造関連や飲料やタバコの自動販売機製造関連と特化した製造シフト中で、特に自動販売機製造への依存度が高いことを危惧していました。
また、飲料の自動販売機は冬に製造して夏に出荷するサイクルのため、夏は仕事が少ない状況でもありました。そのため、ハーネスは内職として外注化していました。



■ ハーネスの便利屋を目指して

年間を通じて安定した工場の稼働を実現するには新規開拓が必要です。
自動車産業は生産ラインに乗せる義務があり相当なプレッシャーでもあります。他方、特定の産業に依存しないためには特徴を出す必要があります。

ハーネスそのものに複雑な技術を導入するのではなく、ハーネスの便利屋(面倒な仕事もOK)をモットーに差別化を試みました。すなわちQCD+Sです。品質(Quality)、価格(Cost)、納期や入手性(Delivery)とスピード(speed)です。大き過ぎず、小さ過ぎず、小回りが利く(効く・聴く 注5)ことをコンセプトにした差別化です。

注5)取材中、谷口社長の説明から、クライアントのニーズに耳を澄ませて聴き、双方のコスト削減に効果を出し、最終的に利益につながることを連想して筆者が利く、効く、聴く を思い浮かべました)


■ ものづくり1

ワイヤーハーネスの工程は以下の通りです。
隣接保管倉庫から原材料移動して工場へ → 線材切断 → 電線被覆剥ぎ(スリップ)→ 端子圧着(圧接) → 端子半田付け → 組立 → 電導検査 → 梱包 → 出荷保管棟へ移動 → 出荷の流れです。

組立工程では、図面を見ながら電線を束ねる作業があります。図面が読める、そして図面に合わせて作業し易い作業台を準備する等スキルが必要です。(カンバン方式に対応させ、納品先の生産ラインでは、ワイヤーハーネスを単純に機械に接続するだけの作業になります。)

ケーブル加工ではセル生産方式(屋台式生産)を導入しています。その理由は、ケーブル加工は重量があること、そして熟練の技術を要するためです。そのため、定年退職後継続雇用者を活用しながら生産しています。

※中国大連工場 蘇州工場は量産品を製造出荷し、国内工場は多品種少量を主体に製造しています。



■ ものづくり2

電線の色と端子を組わせると無限大のワイヤーハーネスが誕生します。実際にお客様は困ったときはホッコーに頼ることが多々あります。
隣接保管倉庫棟の2階は電線と端子が保管しています。色別に整然と棚に保管された端子と電線が並んでいます。例えば、工場が黄色200個必要と要求があれば、入荷ロット1000個の中からそれを準備します。しかも、このような管理を数名のスタッフで行っています。ここにものづくりの特徴があります。
春日井工場内を見渡すと製造工場より倉庫棟や出荷棟にスペースを割いています。QCD+Sの実践がこのような配置を招いていると実感しました。


■ まとめ

今回は製品そのものにフォーカスするではなく、製造準備と製造のすみ分けに特徴を置いた「あいちの製品」でした。
特定産業に軸足を置くのでなく、「医療機器」「遊戯機(パチンコ)」「自動販売機」「生活機器」「建設」「自動車」「産業機械」など、全方位に向けて出荷先を分けています。それを可能にするために、製造に必要な在庫管理とその組合せに特徴があります。 今回は無限大の多様なニーズに対応するため、フレキシブルな国内生産ラインの中から取材テーマに絞ったレポートですが、中国(大連)の生産ライン体制を構築、加えて製品開発、改良にも積極的に取り組んでいる企業です。

http://www.hokko.com/
https://jgoodtech.smrj.go.jp/corporations/918?locale=ja

 

取材・文 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行