将来を見据えホームページに先行投資!(第3回)
大矢静生 記事更新日.06.00.00
有限会社大矢設備  代表取締役
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有限会社大矢設備
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■前回までのあらすじ
前回はトップページの重要性と、毎月の定期的なアクセス解析の必要性を中心にお伝えした。今回も前回に引き続きアクセス解析ログの情報をもとにしたホームページ戦略を中心にお伝えしていこうと思う。
■統計値から自社のアクセス解析ログを分析
アクセス解析ログには「リンク元ドメイン」という項目がある。これは、ユーザーがどの検索エンジンを使用して自社のホームページへ辿り着いたのかがわかる情報だ。インターネットの世界における検索エンジンには多くのネットユーザーが利用しているYahoo!(YST:Yahoo Search Engine Technology)、パソコン上級者に人気なGoogle、マイクロソフト社が運営するMSNがある。これらの検索エンジンを検索シェア別で見ると「Yahoo!(66%)、Google(15%)、MSN(10%) 引用:Web資料館」という結果だ。
大矢設備における当時の検索シェア状況は「Yahoo!(47%)、Google(2%)、MSN(31%)」と、統計値と比較すると歪な結果となっており、明らかにGoogle対策が弱いことが理解できた。GoogleのSEO対策としては、ホームページ間において相互リンクを積極的に行うことが推奨されている。Googleは「多くの良質なページからリンクされているページは、やはり良質なページである」という考えに基づき、検索エンジンを開発していることによるものだ。
検索エンジンには、クローラーと呼ばれるプログラムがインターネット上を巡回し、ホームページ情報を集めて掲載するロボット型検索エンジンと、一般的な分類項目ごとにホームページを整理して掲載するディレクト型検索エンジンがある。SEO対策として、これらの著名なディレクトリ型検索エンジンに掲載されることは、自社サイトへリンクを張ってもらうことになるため有効な手法とされている。
そこで大矢設備では、良質なページ=Yahoo!カテゴリと捉え、Yahoo!カテゴリ(登録審査サービス名:Yahoo!Japan - ビジネスエクスプレス)への登録審査申請を行うこととした。審査申請は\52,500-を支払うことで、誰でも審査を受けることができる。Yahoo!の検索シェア66%からぜひ登録申請しておきたいディレクトリ型検索エンジンの1つだ。
またさらに、「ダクト工事」「空調設備」などの検索キーワードで出力された上位サイトのうち、公的サイトやポータルサイトなどへ対して相互リンク依頼も実施した。このような地道な努力の結果、現在のリンク元ドメインは「Yahoo!(60%)、Google(13%)、MSN(20%)」と統計値に近い値になっている。
■細かなメニュー項目への分類でユーザーニーズを取り込む
当初のホームページ戦略としては、個人商店や一般個人向けに「空調設備機器販売および設置工事」の売上構成比を約30%程度まで高めることであった。アクセス解析ログによると、大矢設備のホームページに訪れるユーザーは主に「ダクト、空調ダクト、空調工事、ダクト工事」の検索キーワードで訪れていた。しかしこれらの検索キーワードで訪れたユーザーは当社が見て ほしいと考えるページを、どれくらいの割合で見ているのかチェックするには至ってなかった。そこでこれらを検証するため、検索キーワード別移動ページ統計を取ることとした。その結果「ダクト、空調ダクト、空調工事」における検索ユーザーの約40%は「トップページ→空調換気排気ダクトページ」へと移動しており、本来こちらが見て ほしいと考える「空調エアコンページ」はあまり見られていないということを知った。
当初設定した目標は、実のところ大矢設備の経営戦略に基づく目標設定というよりは、インターネットで一般的に広く受け入れて貰えるだろうと考えた分野での目標設定だった。大矢社長はアクセス解析統計の結果から「見られているページを考えるとインターネットにおいても、弊社がもっとも開拓したい顧客層を取り込めるはずだ!」と考えた。そこで、これまでのメニュー項目を見直し(画像1)、ユーザーニーズ ごとに分類・整理した情報掲載を行うことで、意図したページへの誘引とわかりやすい情報構成へ改訂することとした。これまで「空調換気排気ダクト」メニューとしていたものを、「スポット空調ダクト、局所排気ダクト、厨房排気ダクト、排気・排煙設備ダクト」の4分類へと変更することで、幅広いさまざまな排気ダクトニーズへヒットするようになり、PV数・Visit数共に急増する結果となった(図表1)。
 

画像1

 

図表1

■「経営指針書」を軸としたホームページ戦略の舵取り
大矢設備がネット戦略に本腰を入れて約1年になるが、この間における受注案件実績が気になるところだ。集計してみると図表2の通りであった。
 

図表2

この数値結果については業種業態で、その良し悪しは分かれるものと思うが、一般的に「新規顧客に販売するコストは既存顧客に販売するコストの5倍かかる」と いわれていることから、ホームページ活用で新規顧客を獲得できていることは高く評価してもよいかと思う。

大矢設備では年度初めに全25ページからなる「経営指針書」というものを全社員へ配布することで企業経営の舵取りを行っている。「経営指針書」は「経営理念・経営方針・経営計画」の三項目から成り立ついわば経営の地図に価するものだ。その中では、ホームページに関する中期的な考え方とそれに伴う明確な目標値が定められており、目指すべきホームページ戦略が全社的に理解できるよう示されている。さらに、ホームページ運用委託先などの関係ビジネスパートナーへも指針書を配布することで、内外を通じて包括的に戦略目標を達成しようと徹底している。
中小企業を対象に、ホームページ戦略策定・SEO対策・アクセス解析・ 運用支援と企業ホームページ全般のプロデュースを行っている。
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一般的に、アクセス解析ログはその結果だけで意思決定を完結させてしまうものであるが、今回の事例のように検索エンジンシェアなど外部機関が発行する統計情報などをつき合わせることで、アクセス解析ログ単体では見えなかった問題点が浮き彫りになる場合がある。さまざまな統計情報とアクセス解析ログを比較することで、思わぬ気づきが得られる好例だ。またメニュー項目においても、汎用的な文章表現でメニュー表記している場合には、ユーザー視点から見直していただくことをぜひオススメしたい。一般的に広くユーザーニーズを取り込もうとすると、ピントがボケやすく、訴求力の低下に つながっていることが多いためだ。

そして最後に経営的な視点からとくに重要と考えるのは、ホームページ戦略をいかに多くの関係者へ展開するかだ。担当者が推進することは容易だが、それを取巻く関係者を巻き込んでいくことで、目標達成のスピードに大きな差が生じるものと考える。 これまで全三回にわたり、大矢設備のWeb戦略をお伝えしてきたが、次回からは別企業の事例をご紹介していく予定だ。