手抜きじゃないのに、簡単!美味しい!
あなたの時間と家族のほほえみ(第1回)
長瀬栄子氏 / 寺川宏季氏 記事更新日.07.02.05
株式会社 松屋栄食品本舗
■問合せ先
株式会社 松屋栄食品本舗
代表取締役 長瀬 由和  
〒480-0000 愛知県犬山市落添20-1
TEL : 0568-67-3688 /FAX : 0568-67-3706
ECショップ:簡単料理のほほえみ☆キッチン
http://www.smile-kitchen.jp/
会社サイト:
http://matsuyasakae.jp/
Email:info@matsuyasakae.jp
 

■事例企業の概要

今号から新たな事例企業をご紹介する。

犬山市で、食品の製造・販売(たれ・調味料・惣菜・その他)を主業とする株式会社松屋栄食品本舗だ。同社は、昭和45年に焼肉<松屋(犬山市犬山駅前)>の店主が自店で使用の焼肉のタレをびん詰にしてスーパーで発売したのが始まりである。平成元年には惣菜部門が独立し、有限会社サンクックデリカを設立。平成3年には有限会社さかえ(食堂)を開店、平成7年には静岡県周智郡に静岡営業所を開設するなど、めざましい発展を遂げている。

今号を含め3回にわたりご紹介する内容は、同社が初の試みとして取り組んだネット販売事業の立ち上げから、公開までにおける奮闘記だ。本事業の立ち上げスタッフは、現代表取締役長瀬氏のご夫人であられる長瀬栄子氏と、おもに商品パッケージデザインを担当している寺川宏季氏のお二方だ。

まずは本新事業立ち上げに至った経緯をお伝えしておきたい。
長瀬社長はかなりの美食家である。「もっともっと美食を食したい・・・。ネット上に求める理想的な美食サイトはないだろうか?」という疑問が事の始まりだ。インターネットを駆使し、求める美食サイトを探し回るも、その数は極めて少なく供給が間に合っていないことを感じる。そこで、一般的な食品を取り扱うECショップではなく、希少性も含め、こだわり抜いた上質の食品を扱う美食サイトを自社運営できれば、意外と新たな事業として成り立つかも知れないとの結論に達し、事業立ち上げに至ったのだ。 第1回目の本稿では、おもに事業立ち上げに伴う企画フェーズの重要ポイントについてご紹介していく。

 

http://www.smile-kitchen.jp/

■事業価値は「時間の提供」

新事業立ち上げに際して、まず討議したのがECショップ立ち上げの目的だ。何のために本事業を立ち上げるのか?前段でも触れたが、そもそものきっかけは長瀬社長の欲求からである。この事業については、社長の想いをより深く的確に理解する人材に任せることが重要との認識から、ネット事業部の陣頭指揮は長瀬夫人と決まった。当初は、こだわりの美食を中小企業経営者向けに提供しようという方向性が考えられたが、再三なる討議の末、日ごろ長瀬夫人が抱く主婦の悩みを解決することを、ECサイト立ち上げの目的とすることに決めた。『主婦の方々に時間と心に余裕を持っていただき、家族にほほえんでもらうこと』。ただし、文章中の「主婦」は次のような特徴を持った主婦層として、スタッフ間で共有した。
(1)
30代〜50代の主婦  
(2)
働いている  
(3)
時間に余裕がない  
(4)
子供は中高生以上  
(5)
自由に使えるお金がある     
(6)
家計を握っている  
(7)
自分の時間が欲しい      
(8)
食に対するこだわりがある     
すなわち、長瀬夫人ご本人と極めて境遇の近い方々をターゲットにしようというのである。わが子たちもようやく自立し始め、手のかからない年齢に達したものの、自らが勤めていることで、なかなか自分のための自由な時間が取れない。母親としては「少しでも美味しく栄養価の高い料理を食卓に並べたい」と日々強く思っているが、料理に費やせる時間が取れないなど、まさに現代の女性の社会参画情勢がもたらす課題を解決したかったのだ。

これを受け、ECサイトコンセプトおよびECサイト名は図1の通りとなった。

 

図1

■損益計画=目標設定

新たな事業として立ち上げるにあたっては、事業の撤退時期についても検討しておく必要がある。当社では、3ヶ年の損益計画を策定した。策定に際しては「月商=平均客単価×販売客数」「固定費」「変動費」「目標利益」の項目について、それぞれ目標数値を設定した。

「平均客単価」については、セット商品群を主力商品としていきたいという販売方針に基づき、やや高めの金額設定とした。また配送料についてはこれまで取り組んできた本業との兼ね合いから、宅配会社との間で、良い条件での契約が可能となったため、一定額以上は無料配送とすることができた。

このような目標設定の中でも、きわめて難しい設定は「販売客数」だった。そもそも一体何人の訪問者があるか予測が困難だったため、数値設定のしようがなかった。しかし最終的には、今回のECサイトで想定する検索キーワードの月間検索実績数×2%に設定することで同意した。「2%」という数値についても相当な議論があったが、最終的にはサイト訪問者の2%程度には、問い合わせてもらえるECサイト制作を目指そうという結論に達し合意した。いずれにせよECサイト立ち上げ3年目には、1000万円の利益が創出できない場合には全撤退することと決めた。

中小企業を対象に、ホームページ戦略策定・SEO対策・アクセス解析・ 運用支援と企業ホームページ全般のプロデュースを行っている。
リップル http://www.rip-ple.com/
あいち専門家グループ http://www.asg.name
今回着目したいポイントは2点ある。

1点目は、顧客ターゲット設定の際に「主婦」のプロフィールを明確にした点だ。単に「主婦」といっても、実際にはさまざまなプロフィールの「主婦」が存在する。プロフィールを明確にできたことで、設定した「主婦」のニーズも明確になったということを理解できる。

そして2点目は、2%の設定である。実際に2%の設定は統計的にはかなり高い確率と思われる。しかし、この数値を設定しないことには、損益計画を立てることはできない。なるべくなら根拠ある数字を設定したいところではあるが、今回の事例でご理解いただける通り、顧客層・取扱商品・ホームページ品質・検索エンジン上位表示など変動要素が多岐にわたるため、仮説設定が精一杯なのである。たとえ論拠のない数値であったとしても、目標設定することはおざなりにしたくない重要なポイントと思う。

次回は今回に引き続き、ECショップ企画段階における重要なポイントについてご紹介していく。