創業の原点
大塚 幸雄 記事更新日.11.03.01
ワールドバリュー株式会社  代表取締役
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発展途上国でない少子高齢社会の日本では、創業(生業を創る)することは容易ではありません。 全ての市場が飽和状態のなか、新しい考えを持たずに創業することは難しいと思います。
しかし、時代の変化が創業の後押し支援をしてくれます。

■創業の気づき
私は、57歳で遅い創業をしました。
業種は旅行業です。
1971年から海外旅行の企画・販売を担当し、中期は誰でもが知っている企業に出向し新しい旅行会社設立に関わり、最後は人事・総務畑を歩みました。
サラリーマン生活は、まさに日本の海外旅行が黎明期から成熟していった時期と重なります。  


私が歩んだ日本における海外旅行市場の流れを振り返ってみました。 
70年代 少品質大量送客  航空機のジャンボ化が進み、一気に海外旅行ブーム。 
80年代 多品質大量送客  海外旅行の大衆商品化。質低下。 
90年代 多品質低価格送客 バブル崩壊でも海外旅行は成長。 
現  代 多品質少量送客  消費者行動の多様化。旅行者自身の目的意識化。 

このように海外旅行市場を見た時、20世紀の「量」時代から21世紀の「質」時代に変化してきました。この「変化」の原動力は、「人々の意識の変化」でした。 

■創業の決意

「これまでのやり方では通用しない。」  ここに時代が後押してくれる自分が創業する「種」がありました。 
海外旅行業界の「変化」を整理する作業をしました。 
1. インターネットの出現 
旅行代理店の存在仕組みの見直しが必要になった。 
・直販化 航空会社・ホテル等サプライヤーへの直接予約 
旅行会社の必要性がなく、顧客の責任で遂行される 
異業種参入、業界ルールでなく、社会のルールで 

2. IATA(国際運送協会)の形骸化 
旅行代理店の仲良しクラブ意識の喪失とグローバル化が始まった。 
・ 世界同一運賃ではなくなった航空会社独自運賃。 
・ Eチケット コンピューター上での予約管理。
・ 航空券発券手数料 0%、航空券販売では収益が出ない。

海外旅行業界は、日本の国内都合で運営するものでなく、グローバルな考えに基づいて運営されるが、日本の業者も行政も井の中の蛙発想で大変遅れていました。
現状の空港を見てもらえばこの辺のところをご理解頂けると思います。 

これらの劇的な「変化」は、旅行代理店から旅行会社へ変化する世界からのシグナルでした。
21世紀に入る時期から現在まで、既存旅行会社は団体から個への変化の対応と、低価格大量販売から脱却することが出来ず、消費者離れが続いています。 海外旅行の質的変化を推進した顧客は、旅行会社離れを生じ、右肩上がりの成長を前提にした時代の旅行形態から決別しています。 
つまり、「お客様の考える旅行と旅行会社の考える旅行と大変な乖離がある。」と認識しました。 

旅行の新しい価値創造が出来ると考え、社内で試行錯誤しながら議論をしましたが、成功体験の大きな歴史のある会社のなかでは大変難しい作業でした。 

それならば自分で「今までにない新しい旅行会社を創ろう」と05年3月に会社を退職し、6か月以内の会社設立を決意しました。
退職後、レンタルオフィスを借り準備しようと考えていた矢先、大橋英敏氏の著書「起業の落とし穴」を読み、その中に「あいち産業振興機構・新事業支援」の「創業プラザあいち」の紹介がありました。早速申込みをし、入居許可を得ることが出来ました。大橋先生は「創業プラザあいち」の新事業コーディネーターでした。今でもご指導頂いています。 

「あいち産業振興機構」の「創業プラザあいち」は全国でも稀な存在価値の高い施設です。 レベルの高いコーディネーターの先生達の指導で、やる気があれば、創業に立ち向かう不安を事業計画のなかで解消し、背中を押してくれます。

さらに「創業プラザあいち」には「あい創会」というOB親睦組織があります。 創業プラザで準備中に「あい創会」の関りで創業の種が生まれたこともあります。

■創業の原点形成
本格的な創業準備の始まりです。 
まったく新しい旅行会社にするためにはどう考えて事業計画を作成していくか。 
「顧客のため」でなく、「顧客の立場」で考えるが原点です。 
この原点形成は、「量」から「質」への変化の原動力であった「人の意識の変化」があります。
このことは、旅行業界に限らず、日本の産業すべてに共通することでした。 
「人の意識の変化」は、「商品の進化」と「市場の進化」に現れてきました。  
「商品の進化」は、徹底的な価格競争からサービスの「付加価値競争」へ向かうと考えます。
最も重要な顧客に対する付加価値とは、下記の3点と考えています。 

1. ナレッジ・サービス   充実したち知識と知恵を提供する 
2. マインド・サービス  温かさや心配りを提供する 
3. ワンツーワン・サービス 1対1で懇切丁寧な対応をする 
 
「市場の進化」は、私が創業する原動力になったものです。 「企業中心市場」から「顧客中心市場」へ変化するという強い想いです。
現在の旅行業界は「顧客のため」ではありますが「顧客の立場」では考えていない。これを解決するには「顧客の立場」を 深考するしかありませんでした。  

≪事業の展開≫
従来の中間業者 = 顧客のための商品販売を促進
自分が行う中間業者= 顧客の立場に立って商品購入を支援する 
 
ということです。 この2点をベースに旅−新しい価値創造を思考しました。
新しい価値を提供する要件4つを考えました。 
1.価格競争からの脱却と品質追求 
    価格先行商品は、究極的には品質の劣化をもたらし、顧客信頼を裏切る。 
    始めに品質ありき。 
    品質に信頼性があれば、顧客の無用な価格詮索は起こらない。 
2.個人化への対応 
    ワンツワン・マーケティングと顧客がパーソナル・アッテンションを享受していると 
    感じさせる取り組み。 
3.プロフェッショナルの追求 
    Very Special Something New プロフェッショナルであり続ける。 
4.IT時代への対応 
    インターネットを利用する顧客は、直接情報に触れ、旅行会社から離れる。 
    これからの旅行会社の役割のひとつに情報整理・選別がある。 

≪新しい価値創造≫
1.「購買代理」の確立 
  情報過多時代、顧客に代わって適切な情報を収集・検索・提供する。 
  「販売代理」から「購買代理rという代理機能の転換が必要になる。 
  加えて、旅行業は「情報」を正しく伝える情報産業に向かう業界にする。 
 
2.能動的な「顧客ニーズ」創造 
  顧客へ直接に働きかけ、能動的に「顧客ニーズ」を創造する。 
a. 顧客に対して能動的に「提案」すること。 
b. 顧客を能動的に巻き込んで「協働」すること。 
 
何度も何度も自問しながら、創業原点の柱を確立しました。 
 
旅―新しい価値創造は、次のような文章にまとめました。 『「お客様が納得する旅行」を提供する。これを実現するには、「購買代理」「能動的な顧客ニーズ創造」の仕組みを具体的に構築し、実行する。』 
以前であったならば、「顧客の立場」で商品開発、市場での販売は人手が掛かり過ぎ、この事業計画は夢物語になるのが常識でした。  
しかし「インターネット」の出現と利用拡大が時代の変化とともに実現可能になりまた。手間と経費が掛かる情報伝達コストが劇的に低下したことが実現可能にしたのです。  
時代が後押ししてくれました。
 

■創業の原点の具体化
新しい価値創造の実現は、今までの業界の常識・システムを否定することでした。
 


お客様が納得する旅行」を提供する。これは、「ライフスタイル提案旅行」でもあります。 具体的な例の一部をご紹介します。 
 
1.上質な非日常である海外旅行を提案し、ライフスタイルに新たな価値観を生み出す。 
 
2.「選別された旅の素材」へのニーズとこだわり 
お客様が求めるものは、「自分仕様」の旅行であり、それに基づいた「個別相談」が 究極のサービスになる。このサービスをインターネットで提供する。 旅はアナログ。旅の形成を話しながら、情報はデジタルが基本。 その情報は「HP上で自ら旅行の日程が組めるよう予約情報検索機能を提供する。」 「情報過多の旅行情報を整理・選別し、信頼のおける情報を提供する。」こと。 「料金の高い素材がいい」という考えは持っていません。お客様に本当に合った素材は無限にある。 
 
3.「自分流の旅を創る」 
旅行に行こうと思い立った時から何かワクワクしてくる。 
旅には3つの楽しみがある。 
a. 行く前の楽しみ(どんなところかな) 
b. 行っている間の楽しみ(思っていたより感激) 
c. 旅から帰りしばらく経ってからの楽しみ(あの石畳をまた歩いてみたい) 
 
私達は、全ての楽しみを大切にします。特に行く前の楽しみを大切にします。 
「自分で旅を創る」「暮らすように旅」する旅行をコンセプトに旅の素材・情報を テーマ別に情報を提供し、一緒になってご自分の旅を創ります。 
 
4.「たまり場」 
気ままに、継続的に集うコミュニティの場を提供し、語らいの中から旅行需要を創造する新しいタイプの旅行販売を展開します。 
絵画・写真・書道等の展示や世界経済教室、創業準備をする人の顧客とのトライの場など顧客参加、異業種交流の場として事務所の一部を開放しています。 
最初に「旅行ありき」でなく、人々が集まり、話し、楽しさが増した時、人はいつも「旅行の話を始めます。」そんな「たまり場」です。
 


5.「安心」・「安全」は、高齢化・シングル社会の最大価値軸です。 
多様な価値観を持つ今の時代に、限られた商品・サービスではカバーしきれない多様なニーズがあります。既存商品・サービスに何らかの「不」(不安・不満・不便)を持つお客様が必ず存在します。何らかの「不」を感じているが、選択肢が多いためにお客様が自分にとって相応しい解決策をどう選んだらよいか分からないケースが多々あります。 
 
その解決策は、旅行会社単独でできるものでもなく、異業種との協業で問題を解決する。そこには、新しい価値創造ができ、お客様に提供できます。 
 
この安心・安全の考えは、「創業プラザあいち」で準備中に浮かんだ創業の「種」です。 
その「種」とは、異質なもの同士が共生・協働することで絶大なパワーが発揮される。 
「創業プラザあいち」のOBで組織する「あい創会」は、いろんな異業種の集まりです。 それも、創業意欲旺盛な優秀な人達の集まりです。 
 
創業時、それ以降も「あい創会」メンバーの知恵と力を借り、お互いに「お客様の立場に立った」問題解決をし、お互いに利益を上げるようにする。 創業の「種」でなく事業の「種」を生み出すことが出来る組織を目指したい。  
「あい創会」で新旧の仲間を得ることが出来たのは私にとって本当の財産になりました。 
 

■日本とアメリカの創業の違い
日本での「創業」について感じていることを述べます。 私の実感として日本は創業に対して非常に厳しい環境にあります。一度失敗すると、それに対して復活することは、ほぼ100%不可能なシステムしかないからです。 事業を継続するためには創業から数年で資金が必要になる場合があります。その資金を得るには、1.増資 2.銀行融資 3.ファンドです。アメリカの友達とよく話しますが、アメリカではファンドがメインです。 
 
また、一度失敗しても再度トライできるシステムがあります。日本では考えられないことです。アメリカの創業を支援する姿勢が、「モノを作る」日本と違い「モノを創る」技術が世界を引っ張っていく力になっています。 
 
銀行の融資は、過去の決算実績を中心にした査定です。 時代が変わる中「事業計画も聞かない」で融資判断する姿勢は80年代のシステムそのもので変化がないです。よく言われる中小企業に対しての「セーフティ・ネット」は、実績がなく創業間もない会社は利用できないシステムです。  
 
少子高齢化の日本において「創業はその国の未来である」と考え、創業者が多く出る環境を少しでも早く作らねばならなりません。今から始まる時代の大変化に日本は遅れてします。  
 
ワールドバリューの今までとは違った旅行を扱う会社を理解して頂くために創業時に考えた 「創業の原点」をお話しました。時代の変化によって事業方針は変化しますが、今でも原点は変わりません。
 
「自分にとって本当の旅行」をお考えの方は、是非お話をお聞かせください。 ワールドバリューは皆様のご愛顧賜りますようお待ち申し上げます。