現在、当社は製造部門と商事部門に分かれ、製造部門では、感熱紙の発色をコントロールする感熱記録紙用塗工液、建材向けの防水剤、ファインセラミックス成形時のバインダー及び添加剤、ポリウレタン樹脂の成形時に使われる離型剤などが主力製品となっている。 特に感熱紙塗工液は国内シェア80%、世界シェア60%を持つとされ、伊藤敞一社長によると「離型剤や防水剤も国内シェア50%以上はあるのでは」とのこと。高いシェアの秘密は、「商事部門で培ったニーズを吸い上げる力と、乳化分散の技術を業界の状況に対応させながら他社に先行してトップランナーとして用途開発してきた」というところにある。
昭和30年代、まず手がけたのが、建材向けの防水剤である。チップやファイバーなどを接着剤で固めて作るパーティクルボード等の防水剤として使用されている。メーカーとの共同開発で成形時にチップ類と共に混合させることで防水機能を持つことができ、チップ等への水分吸収による材質劣化を防ぐ。
次いで、開発されたのが離型剤である。自動車の座席用クッションやマットレスなどに使用されるウレタンフォームの需要が伸び始めると、発泡時にウレタンが型にくっついてしまう型離れの悪さが発生。型離れを良くする薬液はすでに海外で販売されていたが、満足できるほどの効果はなく、乳化分散を得意とする当社の技術でなんとかならないかという依頼があり、国産で初めて離型剤を開発した。
昭和40年代には、感熱記録紙の発色塗工液を開発。FAX紙やレシート、切符などの感熱紙に塗布されている。発色する温度が高いと、発色させるためのエネルギーが多く必要になるし、低すぎて常温で発色するのでは真っ黒になってしまう。そこで、この微妙な温度調整をコントロールするための薬剤が塗られているのだが、実はこの薬剤、非常に水に溶けにくい性質を持っている。この薬剤を液状にしなければ、紙に均一に薄く塗り広げられない。ここに当社のエマルション技術が活かされ、薬液化を実現しているのである。
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