お客様に選ばれ続けるパートナーになるために

代表取締役 清水 文博

記事更新日.2016.2

清水工業株式会社

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清水工業株式会社
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長年積み上げられた溶接、プレス、製缶技術が強み

プレスにより月産何万と量産される自動車用排気部品から、バイクショップとタイアップで少量企画したマフラー、単品生産のハーレーダビッドソンのカスタムボディフレームまで、プレスと溶接により加工される部品の数々。そこには清水工業株式会社の現社長、清水文博氏の『お客様に選んでいただけるカスタマーサービス』への想いがある。



清水工業株式会社は大正13年に清水五郎鋸刃物製造の創業に始まり、昭和35年に法人化し現在に至る。

「創業者の刃物鍛冶としての腕は広く知られていたようで、長野からも歩いて鋸を買いに来ていたようです。また関連した鍛造・板金技術も高く、自動車メーカーが板金成形の際に発生する歪の取り方などを聞きに来ていた、という話も聞いています」と創業者から数えて3代目となる現社長の清水文博氏。

先代は、こうした技術をベースに溶接、プレス技術・製缶技術へと展開し、自動車部品や金型の製造にも進出する他、当時オールスチール製であったパチンコ台の前の据え付け型並び椅子を、日本で初めてシャフト以外の樹脂パーツ化に成功、重量を2/3にするなどアイデアと技術力で多様な事業展開をしていた。


社長就任時の決断

現社長が社長就任したのは平成12年。

「当時は、自動車部品の試作、製造の他、金型事業も手がけていました。しかし、経営者の立場では、金型事業があることで経営の動きが非常にわかりにくくなっていました。自動車部品は当月仕入・翌月売上、試作はそれよりも短いサイクルで動いていたのに対して、金型は着手から売上までのサイクルが長いものでは半年かかっていました。利益が本当に出ているか、その間の資金繰りがどうなるか、2つの違うサイクルが動くことにより決算書を見ても分かりづらい状況でした。そこで、思い切って金型事業をやめメンテナンス機能だけにし、試作とプレス・板金加工に集中しようと考えました。比較的付加価値の高い試作と加工量があり安定的に稼働が見込める製造とを組み合わせることで経営を安定させようとしたのです」。


『選ばれる』ための体制構築

その時、考えたのが、経営を安定させるため継続的にオーダーを受けるにはどうしたら良いかということ。つまり、『協力工場としてお客様に満足していただくためには、どのようなパートナーであれば良いのか』ということである。

例えば、部品製造部門では、顧客のマシン構成や他の協力工場の設備を分析した結果、単発の200tのプレスを6台並べることにした。

「プレス業界では300tのプレスや150tのプレスを導入している企業が多いのですが、200tのプレスが最適設備という加工も結構あるのです。当社のお客様でも同様でした。150tのプレスでは加工できず、かといって300tプレスで加工したとすると、動作するマシンが大きく、金型費用から稼働の電気代、ツール代など様々なコストが大きくなるためコストが割高になってしまいます。こうしたニッチだけれども一定のボリュームが計算できる市場を狙い、200tプレスを中心に展開しました」。


試作部門については、溶接の職人も多くいたことから、この技術がより重要視される『排気系』の試作を中心に手がけることにした。「排気」があるのは車、バイクなどの燃料機関があるものに限定されるため、試作を手掛ける企業としてはニッチな分野となる。しかし、その分競争も少なく顧客にとって特別な存在になりうるのではと考えた。

「排気系の部品は円筒状のパイプを曲げ、パイプと部品、あるいはパイプ同士を溶接することが基本となります。そうなると溶接箇所が直線ではありませんし、厚さの異なる部品同士の溶接も必要となります。排気漏れは許されませんので、ハイレベルな溶接技術が当然のものとなります。幸い当社には職人がたくさんおり、対応が可能でした。加えて、単なる溶接だけでなく、製造部門との連携により、プレスからアッセンブリまでの対応できますので、試作品だけでなく完成部品の加工も可能です。仮にお客様の生産ラインで部品が不足する『緊急事態』が発生した場合でも、当社は完成仕様部品を供給することができますので、お客さまにとっては柔軟な生産調整のためのバックアップ役となるわけです」と、試作からアッセンブリまで一貫加工できる対応力が顧客メリットだと考えている。


加えて、試作を専門とする企業は小規模なところも多く、技術の継承を行うための人員や設備を揃えるのが難しいケースも多いが、当社は部品製造等、一定の事業規模があるため若手の技術者の育成に時間もコストもかけることができる。人材育成面からも将来的に技術を維持向上し続ける体制を作ることで、顧客には『安心して継続的に取引を続けられる』というメリットも提供できることになる。


『選ばれ続ける』ための取り組み

現在では製造部門と試作部門との売上比率は概ね5:5と、清水社長就任当初の狙い通り、経営の安定に寄与する結果となっている。しかし「選ばれる『協力工場』」であり続けるために、将来に向けての取り組みにも余念がない。


「将来に向け、高張力鋼と呼ばれる強度の高い鋼板のプレス加工技術の向上を狙い300tのサーボプレスを導入しました。高張力鋼は従来の9mmの強度を6mmで実現できるため軽量化の材料として注目されています。しかし、強度が高いことから、プレス加工をすると割れの発生割合が大きくなるなど課題も抱えています。そこでプレス時の力が柔軟に調整できるサーボプレスを導入、動作調整の最適点の検証など、注目素材への加工技術の向上を進め、お客様から選ばれるための取り組みを続けているのです」と語る清水社長である。




取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久