「資源に無限の夢を」経営理念で全社一丸、価値ある仕事を

代表取締役 星河 秀樹

記事更新日.2018.06

アルメック株式会社

■問い合せ先
アルメック株式会社
〒474-0001  大府市北崎町遠山143番地

役割を終えた多様な金属製品は、種類ごとに選別・加工され、溶解して新たな金属製品として生まれ変わる。リサイクル業界は人間の体に例えて「静脈産業」とも言われ、「動脈産業」である製造業を支える存在として重要な役割を果たしている。 時代の移り変わりと共に業界を取り巻く環境は大きく変化し、社会のリサイクル意識の高まりにつれて適正処理への要求は年々高まり、世界的なテーマにもなっている。また、発生するスクラップも単一組成ではなく金属やプラスチックが一体となって製品を構成している「複合物」が増加しているなど、処理能力向上と共にリサイクルの技術やノウハウといった独自能力を磨き、企業価値を高めていくことが求められるようになってきた。 そのような中、50年を超える歴史を持ち、鉄・非鉄金属の高品質な再生原料を製造することで金属リサイクルの円滑な循環に貢献しているのがアルメック株式会社である。



1990年代よりリサイクル産業として脚光

アルメック鰍フ前身、星河商店を創業したのは星河仙吉氏。創業は1959年、戦後復興から高度成長へと差し掛かる時代であった。典型的な家族経営から始まった星河商店は取引先にも恵まれ、工場の拡張や設備投資も積極的に行い、業績を拡大させていった。 1995年には11,000uの用地を確保した大府工場の開設に漕ぎ着けた。それまでは創業の地である豊明工場で業務を行ってきたが年々手狭となっており、待望の新工場であった。処理能力拡大により大型・大量のスクラップに対応出来るようになり、交通の便が良い立地も功を奏し、顧客数も大きく増加した。 1990年代後半からは環境に関する社会的な関心が大きく高まり、2000年以降には「容器包装」「家電」「食品」「建設」「自動車」に関するリサイクル法が毎年のように施行されるなど、当社を取り巻く環境や要求も大きく変化していく事となる。





パブリックカンパニーとして組織づくり

「この頃から『リサイクル産業』として大きく注目を浴び、社会的責任も一層高まりました。お客様も多様になり、業種ごとに受け入れるスクラップ材の種類や量、現場の状況も変化するなど、会社としてそれまで以上に柔軟に対応する必要性が高まってきました。そこで、組織づくりや人材教育に力を入れることとなりました。評価制度や退職金制度を刷新し、2005年の大府新社屋建設時には60名が収容できる研修室を設け、落ち着いて学ぶことができる場を整備するなど、ハード・ソフトの両面で人材が定着する環境作りを積極的に行いました。」と当時を振り返る現社長の星河秀樹氏。

大きな変化の一つが社名変更である。2008年の創業50周年を機に社名を「星河金属梶vから「アルメック(ARMEC)株式会社」へと変更する。従来と全く異なる社名として、こころ新たに事業に取り組むことを宣言し、社会的存在意義の高いパブリックカンパニーへの飛躍を目指す決意を示した。 「ARMEC」の造語に含まれるアルファベットには以下のような意味を込め、リサイクル事業を通して環境保全を図り、社会に貢献していこうという思いを表現している。  A(All 「すべて」「皆」)、R(Recycle 私たちのコア事業であるリサイクル)、M(Material 「原料」「素材」)、E(Environmental Preservation 「環境保全」)、C(Contribution 「寄与」「貢献」)

新社名のもと、新たなステージで価値観を共有できる人材を育成していこうという考えから2009年に社内読書会「木鶏クラブ」を開始した。 社内木鶏クラブとは月刊誌「致知」を用いて行う読書会のことで、各自がテーマを読んで感想文を書き、議論を深める会である。@先達の経験や考え方を、読書を通じて学び取るA本を読み、感想を書き、発表するというプロセスを通じて社員の仕事に必要な基礎的能力を養うB社員間のコミュニケーションを活発にする、と言った狙いがある。 当社は2010年の第1回社内木鶏全国大会へ出場し「感動賞」を受賞、2016年12月には通算100回を達成するなど、当社にとってなくてはならない取り組みとなっている。




新しいステージでの仲間を増やすため、新卒採用を始めたのもこの頃である。同業他社はまだほとんど実施していなかった2008年からリクルート活動を初め、2009年4月に第1期生となる7名が入社、以降毎年採用を続け、2018年4月現在では正社員46名中20名が当社生え抜きの新卒社員となった。 会社説明会では社長自らが「アルメックが大切にするモノ・コト・ヒト」と題してプレゼンを行い、思いを伝えている。採用試験は人物重視を標榜し、計4回の面接を通して採用を決定している。 説明会の運営は若手社員で構成される「リクルーター」が主力を担い、学生に近い目線での企業説明を行うと共に、若手の能力を磨き高める重要な機会にもなっている。


全員参加の経営理念づくりで共通の価値観を

時代背景や当社に求められる社会的責任の変化、社内でも大半がここ10年で入社した人となると、新しい企業像や経営の仕組みが求められてくる。

当社では2015年8月より「経営品質」の取り組みをスタートさせ、「顧客本位」「従業員重視」「社会との調和」「独自能力」の4つの柱を重視して企業運営を行ってきた。全社員で経営品質の学びを深めていく中で、2005年策定の経営理念を更に発展させ、100年企業を見据えた新たな理念を作りたいという意見があり、2016年5月から8月にかけて新理念策定プロジェクトを行った。 新理念と言っても全く新たに作り出したのではなく、当社がこれまで積み重ねてきた「良い考え」「良い習慣」「良い行動」を大切にしつつ、未来のより強い組織、強い個人、安定した業績の実現に向けた羅針盤として、社内で用いられてきたキーワードを丁寧に掘り起こし、磨きを掛け、再構築したものである。策定には各部門長が主体的に関わることで「社員一人ひとりが共感できる理念」を目指した。 完成時には全社員に向けて発表会を行い、その後も毎日の朝礼で唱和を行うなど、理念の浸透と実践に向けた取り組みを継続して行っている。経営理念・ビジョン・考動指針・目指す企業文化などは「Our Philosophy」というリーフレットにまとめられ、全社員が常に携帯している。社名の由来や創業者の想いも掲載し、原点を忘れないようにしている。




「資源に無限の夢を」経営理念で全社一丸、価値ある仕事を

共通の価値観で働きコミュニケーションが濃密になることで、会社の方向性に対する理解も早まり、社員の成長が急激に進むと共に社内の雰囲気は劇的に変化した。経営品質の4つの柱の実践にむけ、近年のアルメックは従来よりも更に早いスピードで変化を続けている。

価値観を共有しコミュニケーションを高めるための仕組みも積極的に導入している。例えば2017年から導入したコミュニケーションツール「TUNAG」は、仕事の合間や休憩時間でも各自のスマートフォンで閲覧でき、時間的・空間的壁を越えることができる。食事会の写真やサンクスメッセージのアップだけでなく、安全意識向上に向けたメッセージや健康に関するコラムなど、幅広い情報を載せることで目指す企業文化(ワクワク・ニコニコ・ドンドン)の実現に向けた後押しをしている。

誰もが働きやすい職場にしていくために「あいち女性輝きカンパニー」「愛知県ファミリーフレンドリー企業」の認証を取得、近年注目を集めている「健康経営」の取り組みもスタートさせ、「健康経営優良法人認定(中小企業部門)」の認定も得た。現在は「おねむり保健室」のコンサルティングを導入し、睡眠の質を高めることで社員の健康度を高めるというユニークな試みを実践している。

顧客とのコミュニケーションにおいては2009年1月に創刊した営業新聞「アルメックニュース」を毎月発行し、現在は113号、累積発行部数は23,000部を超えた。

誰でもできることを、誰もができないぐらいやり続ける

「木鶏クラブやアルメックニュース、経営理念の唱和など、当社は一度始めたことは結果が出るまで取り組み続けます。創業者は『誰でもできることを、誰もができないぐらいやり続ける』という言葉を遺しました。愚直にやり続けることが得意な社風でもあります。それで積み重ねるものができ社員が語り部になった時、それがまた風土として定着していくのだと思います。」

当社の強みは取り扱いアイテムの幅広さと、様々な加工方法を用意してお客様のご要望に的確にお応えできる体制を整えていることである。しかしながら金属リサイクルを取り巻く状況は決して安閑としていられるものではなく、一例として、製鋼メーカーを初めとするリサイクル原料のユーザーは受入基準の厳格化の方向にあり、信頼できる企業からしか受け入れないという動向が強まりつつある。

これらの流れを受け、今後も末永く当社を選んでいただくために「顧客満足度調査」を定期的に実施し、その向上を目指している。頂いたご意見を基に問題解決のご提案をするなど、単なる出入り業者の一つではなくパートナーとなれるよう努力を続けている。技術的には環境に配慮したリサイクル能力を磨いており、2018年には「業界初の『水を使ったJIGによる金属残さの選別』」のテーマで2018愛知環境賞「優秀賞」を受賞した。



来年2019年には創業60周年を迎える。「今後は総合リサイクル企業、もっと進めてサーキュラーエコノミー(リサイクルにはなるべく回さず、詰め替えや再製造、しっかりしたものを作り長く使用する、シェアするなど多様な資源循環を目指す考え方)にまで踏み込んで社会に役立てられるような企業、それを生きがいとして喜んで・喜ばれて働ける企業にしていきたいと考えています」と星河社長は将来像を語った。

 

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久