経営革新の基本的事項
神谷 正仁 記事更新日.07.05.07
神谷経営研究所 代表
■PROFILE
1958年愛知県生まれ。
会計事務所勤務後、昭和63年4月に中小企業診断士登録。 平成9年に代表に就任し現在に至る。
中小企業基盤整備機構経営支援アドバイザー、中小企業大学校講師、名古屋商工会議所エキスパート、商工会連合会(愛知県・三重県)エキスパート及びシニアアドバイザー、(財)愛知産業振興機構診断員  他 

<資格>
 中小企業診断士
<専門>
 経営革新(第二創業)及び創業支援、経営戦略構築支援、地域振興、商店街活性化、マーケティング 他 

連絡先:神谷経営研究所 
 〒446-0026 愛知県安城市安城町拝木71番地
 TEL: 0566-75-0083  FAX: 0566-75-0256
 E-mail:m.kamiya@chive.ocn.ne.jp
昨年度に引き続き「経営革新Q&A」の執筆を担当することとなりました。第1回目は経営革新の基本的事項のため内容が昨年度と重複しますがご了承下さい。
Q  
経営革新とはどのような取り組みをいうのですか?
A  
経営革新とは「本業を強化」するものです。現在行っている事業の中で、 「核」となる事業を見極め、経営資源(設備・人材・商品等々)の有効活用を図り、本業の隣の事業に何があるかを考え、本業の中の「不採算事業」を切り捨てつつ、進出可能な事業に進出する。そしてこの新事業(新手法・新分野)を「核」または「準核」へと育成しつつ、その時点での「不要事業」や「不採算事業」を切り捨て、「事業転換」を図っていくものであり、常に「本業強化」を図っていくものです。そして数年後に事業変革を達成する。これが経営革新の考え方であると考えます。
この計算式の意味は、従業員に変革意識を求めるのであれば、(A)変革の必要性を理解(納得)させ、(B)変革が成し遂げられた暁には、状況がどれだけ改善されるかというビジョンを示し、(D)変革プロセスの早い段階で前向きな効果を生み出すことによって、何をやろうとしているかを示す必要があります。(当然のことながら、これらの中で最も重要なのは、組織に変革の必要性を気づかせることです。)   (X)こういった取り組みに要するコストよりも、大きな成果が期待できれば(C)変革(経営革新)が成功する見込みは高いということを表しています。
Q  
経営革新の進め方にはどのようなタイプがありますか?
A  
経営革新のタイプ(考え方)には2つのタイプがあります。一つは、仕入コストと経費の徹底的な削減を行い、一気に「負の清算」を実行しながら新商品の投入によって売上高の増加を図るタイプで日産自動車が代表的な事例です。もう一つは、日々の詳細な改善を積み重ね、ある日気が付いた時、改善をスタートした時の手法と全く異なった手法で、製造や経営が行われていた。というタイプでトヨタ自動車の手法であり、結果的な経営革新タイプといえます。前者のタイプをV字タイプの経営革新、後者をJ字タイプの経営革新と呼ぶことができます。J字タイプの特徴は、従業員全員のコンセンサスが得られており、不要部分は自然淘汰的に捨てられていることです。不要部分に在籍していた人員も改善を重ねるうちに、必要部署への転籍を果たすという効果もあります。このように様々な特徴を持つJ字タイプですが、最大の欠点は時間を必要とすることです。体力がある間に、常に新規事業への着手・改善を行わなければならないことです。そしてそれは、社員自らが「改善発案」を行うことが可能な土壌(企業風土)を必要とします。
これらの土壌を持たない、あるいは、緊急を要する「革新」が必要である企業は、短期的なV字タイプを選択することが必要と思われます。その後、一定の成果を得た後にJ字タイプに路線を変更すれば良いのです。
Q  
経営革新の必要性と成功のためのポイントについて教えてください
A  
企業が存続していくためには恒常的な経営革新への取り組みが必要であり、その目的(必要性)は次の4つに大別されます。
1.経営革新取り組みの必要性
(1)
経営環境変化への対応のため
 企業を取り巻く経営環境は日々刻々と変化しています。為替レート・株価・金利等々ですが、中でも最も重要な変化は競合企業の変化や消費者(あるいはユーザー)のトレンドの変化です。こういった経営環境の変化に対応していかなければ、成長どころか経営の継続も困難になってきます。
(2)
利益の創出・拡大のため
 企業を存続させるためには、利益の創出が不可欠ですし、その拡大がなければ企業は成長しません。利益を出し、拡大させるためには、売上を拡大し、経費を減少させるという2つの方向性しかありません。残念ながら現在出ていない利益を出すため、あるいは、減少している利益を拡大するために経営革新が必要なのです。
(3)

経営基盤強化とその拡大のため
 経営基盤とは、資産・商権・取引先・人材・人脈・情報・・・etc.です。これらの基盤がどれ一つでも欠けた場合、あるいは劣化(陳腐化)した場合、企業はどうなるかを考えれば明白です。自社の基盤を点検し、その鮮度を保たねばなりません。自社原因以外の危機がいつ襲ってくるかわからないのです。特に中小企業にとっては、自社原因以外の危機回避は不可能に近いですが、基盤点検と情報の鮮度管理(維持)によりある程度の予測は可能となります。この努力こそが経営革新と考えます。

(4)
企業体質の活性化のため
 (1)〜(3)までの内容を達成すれば、企業は活性化します。しかし、ひとつ注意するべき点があります。それは、「成功した手法は次回も成功するとは限らない」ということです。毎回地道に自社の手法を点検し続ける必要があるということです。経営者をはじめとして全従業員が、自身の部署・立場で行うことが必要です。そして、疑問点・問題点が発生した場合、直属の上司・同僚を含めて問題解決に当たり、その経過と結果が経営者に即時報告される体制が必要となります。風通しの良い企業風土をつくる「革新」に全社員が取り組むことによって、企業体質を活性化させます。
 
2.経営革新成功のためのポイント 
 経営革新を成功させるための計画立案と実行のためには次のポイントについて考慮する必要があります。
(1)
経営革新の必要性を明確に提示
 何故、自社において経営革新が必要なのかを全社員に明確にすることが必要です。例えば、売上が減少している、経常利益が減少している、経常損失である等々です。こういった現状を公表し、革新が必要であるという雰囲気を社内につくらねばなりません。
(2)
結果の提示
 次に、革新プランが成果を出せば会社はどうなるのか、従業員の待遇はどうなるかを明確に提示することが必要です。要するに「夢」を提示することが必要であるということです。
(3)
革新プラン策定の進め方
 プランの立案を効果的に進めるためには、プロジェクトチーム(経営幹部・現場長・スタッフの代表)をつくり、検討を重ねていくことも重要です。このプ   ロジェクトチームには、第三者(指導機関や経営コンサルタントなど)も含めて行うことも効果的に進めるためには有益です。
(4)
情報の公開(進捗状況の開示)
 全従業員に革新プランの進捗状況を常に公開することも大切です。(公開することで全従業員に安心感が出てきます。)
(5)
革新タイプ(手法)
 少しずつ変革するのではなく大規模な変革を目指す必要もあります。(必ずしも大規模でなくてはならないということでなく、企業の実態に合わせて行うことが必要ということです。)
(6)
有言実行及び有限実行
 従業員のみでなく、関係者全員に対して「有言実行」が大原則です。取引先(得意先・仕入先・取引金融機関等)にも公表することが有益です。(ある意味で腹を括らねばなりませんが・・・。)こういった取り組みによって、「必ず実現するんだ(やらねばならない)」という状況をつくることも、革新を達成させるためには必要な取り組みです。また、何時(いつ)までに実現するかという「有限実行」も必要です。
(7)
強い革新意識
 現状に甘んじず、常に改善・成長させていくことが必要なんだという強い意志を持ち続け、企業革新(改善)に取り組むことが必要です。→ 旺盛な企業家精神と絶えざるイノベーションが必要です。