国・県の支援制度紹介と効果的活用について
生田 始 記事更新日.09.07.01
(財)あいち産業振興機構 技術担当マネージャー

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昨年後半のサブプライムローン問題に端を発した米国の金融危機が世界中を駆け巡り、足下はまさに世界同時不況の嵐の真っただ中という様相にあります。特に自動車産業が中心の当地域では打撃が大きく、中小企業さんの売上は、5割、6割減が当たり前という状況にあり、必死に耐えている様子がうかがえます。

このような状況ですが、企業は指をくわえて待っているわけにはいかないということでしょう。このところ新事業に関わる補助金など、相談件数が大変多くなっております。国においても5月末に補正予算が確定し、経済産業省では大型の中小企業支援策を打ち出しましたが、県内で実施した制度説明会には企業の参加が殺到し、急きょ説明会回数やら会場の追加を行うなど、企業の積極姿勢が垣間見られる状況です。

今回はこのような状況を背景として、補助金を中心とした国・県の支援制度紹介と、その効果的な獲得方法や活用方法について触れてみたいと思います。
■公的支援制度て何?、補助金て何?
Q:
新技術の開発に取り組んでいます。新事業に進出のための公的支援制度があると聞きました。どのような制度があるのか教えてください。
A:
中小企業が新しい事業に挑戦する際には、不足する経営資源を補うためにも国や地方自治体が行なっている公的支援制度の活用を検討してみるべきです。公的制度は大きく分けて補助金を交付する事業と、経営相談、設備資金、新事業展開、販路開拓等の支援を行う実務の支援事業があります。補助金はお金中心の支援、実務支援は事業の中身の支援といえます。

一口に公的支援制度といっても、その中身は多種多様です。新たに展開する事業に最適な制度を選択することが最もリスクの低い方法ですが、どのように選択するのか分からないのが実情だと思います。このような場合、中小企業を支援する公的機関の窓口に行かれることをお勧めします。例えば、「あいち産業振興機構」では、事業計画の立案支援や国・県の制度の紹介など親身に対応しております。
Q:
自社のアイデアを基にして新事業に進出したいと考えています。しかし、金融機関からの融資の見込みが立たず資金不足が課題となっています。このような中、補助金の話を聞きました。補助金とはどのようなもので、どのような活用が可能か教えてください。
A:
補助金とは、国や県から支給される事業資金で、お金を返済する必要のないものです。それに対して融資というのは、金融機関など資金の貸し出し元に対してお金を返済するものといえます。従って、有効なビジネスプランをお持ちなら、積極的に補助金を活用すべきです。

補助金の受給額ですが、どれだけの資金が補助してもらえるのか把握していただきたいと思います。補助金で事業資金の100%を確保できるものではなく、通常国は補助率1/2、県の場合は2/3という場合が多く、残りは自己資金で賄うことになります。例えば事業費1,000万円の事業をする場合、国の制度が1/2の補助率であれば500万円が補助され、残りの自社負担分は銀行さんからの融資ということもありますが、県の補助金で賄うこともありえますので、制度ごとによく調査されるとよいと思います。 また注意される点として、補助金は1年単位で、事業完了後の年度末に精算金として支払いされますので、その間にかかる費用は全て自己負担になってしまいます。このように後払いシステムのため、企業さんがとりあえず立て替えることになります。その場合、お付き合いのある金融機関に申請書と採択結果を提示して「つなぎの融資」をお願いするなど、準備が必要になります。
Q:
どこに申請したらよいですか?
A:
補助金の公募元が申請先になります。国や県であったり、市町村ということになります。例えば、ものづくり分野における新技術開発に関わる補助金について取り上げますと、国の場合は経済産業省ですが、申請時の相談は出先機関の中部経済産業局や中小企業基盤整備機構中部支部に行うことができます。また県の補助金の場合は県の担当部門になりますが、国、県の制度を問わず、私ども「財団法人あいち産業振興機構」では窓口相談に対応可能です。

このように補助金というのは公共団体が補助している場合が多いのですが、補助金の金額についても大まかに知っておく必要があります。国・県・市町村という分類でまとめましたが、補助してもらえる金額もこの順序に沿っています。つまり、国が一番金額が大きくて1,000万円〜10,000万円、その次に県200〜500万円ということになります。事業規模等に応じた制度選択を行い、その制度を統括する機関に申請するようにしてください。
■どのような補助金があるのか
Q:
技術開発の他に、高齢者の雇用に関する補助金も検討したいと思います。中小企業が活用できる補助金はどのようなものがあるのですか。
A:
経済産業省関連の技術開発、厚生労働省関連の中高年雇用促進など様々な補助金があります。技術開発の補助の場合、既にある優れた技術を基にして製品化に至る経費を補助するものであったり、機器を購入するお金を補助するという性格のものです。また、販路拡大を促進するような補助もあります。販路拡大に掛かる費用を支援するもので、例えば、見本市で展示して販路を拡大するという場合には、その出展費や旅費といった補助が受けられるものです。

補助金の募集期間は短く、公募開始から締め切りまで1ヵ月ほどしかありませんので、早めの情報収集が必要です。情報収集の方法はインターネット利用が効率的ですが、各機関のホームページを定期的に閲覧するなど小まめなチェックをお勧めします。また、公募を知ってから申請書を書きあげるのは至難の業ですから、情報収集を怠らないようにしてください。収集先として、以下のように一覧としましたので参考にしてください。

<ガイドブック等>
あいち産業労働ガイドブック(愛知県産業労働部)
中小企業施策利用ガイドブック(中小企業庁)
<お奨めのサイト>
ネットあいち産業情報 補助金・助成金一覧((財)あいち産業振興機構)
あいち産業労働ガイドブック Web版(愛知県産業労働部)
補助金等公募案内(中小企業庁)
<メールマガジン登録>
愛知県(あいち産業労働ニュース)
中部経済産業局(中部METIニュース)
中小企業庁(e-中小企業ネットマガジン)
■補助金の効果的活用法
Q:
新事業の開発に取り組んでいます。現在、試作の段階まで進んでいますが販売の目途が立ちません。販路開拓等、何か適切な補助金制度を教えてください。
A:
補助金申請をしようとする時に、まず自社が行う新事業がどの段階にあるかということを考えてください。例えば、新技術を活用した新製品の開発を行う場合、第一段階は開発テーマの発掘です。この時点では、基本的にアイデアだけがあるという状態であり、事業開始の入り口(前段階)といえましょう。ただ、残念ながらこの段階に対する補助金はありませんが、窓口相談としては「あいち産業振興機構」マネージャーが対応していますので、事業の進め方等についてお尋ねください。

第二段階ですが、テーマ決定の次は市場のニーズ調査になります。基本的にはインターネットが充実している状況にありますので、Web検索で足りる場合も考えられます。一方本格的に実施する場合には、なかなか補助制度自体が少ない現状なのですが、あいち産業振興機構では「有望ビジネス事業化サポート事業」という制度がありまして、専門家の派遣等によりニーズ把握などに支援が受けられることが可能となっています。ただし競争的制度ですので、制限がある点に留意してください。

第三段階は、前段階でニーズが十分あることが分かったなら、技術面を中心に本格的な事業展開を図るわけです。この段階の資金手当てが最も重要で、人件費や設備機器費用など経費の拡大とともに、研究・開発や事業化に対する補助制度に注目していくことになります。この段階の補助制度はかなり多いのですが、それだけ競争率も高い点を理解しておいてください。

第四段階は、製品の量産準備も整い、あとは売るだけというような段階です。これに対する制度も少なく、企業さんにとって一番困っている問題と思われます。この段階では、補助金というよりも実務の支援が課題となりますので、この点を中心に支援内容を紹介したいと思います。県レベルでは、「あいち産業振興機構」が行う「有望ビジネス事業化サポート事業」*1)や、「有望ビジネスマッチング交流会」*2)などの活用がお勧めです。また、国の事業としては「新連携」「販路開拓事業」などがあり、販売のための支援が活用可能となっています。

*1)「有望ビジネス事業化サポート事業」:(財)あいち産業振興機構が行う制度で、ビジネスプランの評価から技術面、販売面の専門家の無料派遣など、一貫的なサポートを行うものです。本年度改変された新しい制度ですので、お勧めします。
*2)「有望ビジネスマッチング事業」:(財)あいち産業振興機構が行う制度で、新分野進出を図る企業のビジネスプラン発表会と、連携企業との出会いの場をセットすることにより、将来性あるビジネスを支援するものです。

このように、事業の段階(フェーズ)に合った適切な制度を選択するのがカギになるのですが、その場合、比較的採択されやすい県レベルの制度と補助金額の大きい国レベルの制度を、どのように活用するかといった点に配慮するのがよいと思います。

次回(8月号)は補助金の申請書の作成方法や書き方などについてのQ&Aです。