ここで管理職が使っている「なぜ」は、責任追及の「なぜ」です。原因追求の「なぜ」ではありません。
つまり、木村君に指示をしっかりしなかった山田君を責めているわけです。
確かに指示をしっかりしなかった山田君が悪かったとしても、このように責められていては、山田君のモチベーションは下がることはあっても高まることはないでしょう。また問題の原因を探ることにもならないでしょう。
このように、「なぜ〜ない?」という「なぜ+否定形」の質問は部下を責めることにつながりやすいのです。
「なぜ、できないの?」
「なぜ、うまくいかないの?」
「なぜ、お客さんにちゃんと確認してこなかったの?」
「10年働いていて、なぜ、こんなことにも気づけないの?」
などなど・・・。
これらの質問を受けた部下が、現状の問題を解決して、新たな行動を取っていくとは思えませんよね。
では、原因追求とはいかなるものでしょうか?
それを理解するためには、トヨタの「5回のなぜ」の根底に流れる考え方をお話すると分かりやすくなります。
トヨタの考え方では、「なぜ」を使ったとしても、決して人を責めることはありません。問題が起きたとしても、それは人が悪いのではないのです。仕事の仕方、進め方、仕組みの中に何がしかの悪い点があって、その悪さが、たまたまある特定の人に現れてしまった、だからその悪さを探って、仕事の仕方、進め方を変えていこうと考えるのです。
決して人を責めることはありません。
つまり、問題を起こした部下が悪いのではなく、その問題を起こさせるような仕事をさせていたことが悪いと考えて、その仕事のまずさを追求して行く「なぜ」なのです。
ご理解いただけましたでしょうか?
ですから、「なぜ」を使うなというのは、「責任追及のなぜ」を使うなということであり、「原因追求のなぜ」はどんどん使っていただかなければいけません。
コーチングで説明されたことを表面的に捉えてしまうとこの本質を見誤って、単純に「なぜ」を使ってはいけない、とコミュニケーションを窮屈にさせてしまいかねません。
この点はしっかりとご理解くださいね。
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