創業サクセスマニュアル~専門家による創業取扱い説明書~

公益財団法人あいち産業振興機構


セールスプロモーション【広告宣伝/広報】広く知らせる、多くに知ってもらえる手法

起業や創業をすると同時に、もしくはその準備段階で、きちんとした広告戦略策定の必要性が重要になってきています。「広告宣伝」は、顧客や取引先の皆さんと直接コミュニケーションできる大切な機能です。もちろん、的確な広告宣伝を行わないと、費用をかけるだけで顧客も集められませんし、売上も計上できません。わかっていても、創業者の皆さんはなかなかアイディアが浮かびません。また、その効果も予測できないので不安感いっぱいです。本当は、広告宣伝に長けた知り合いや専門家に相談するのが手っ取り早いと思いますが、そんな人物も周りにはそうそういるわけでもありません。今回は、そんな「広告宣伝」について基本的なことをお伝えします。

「広告宣伝」は長期型戦略。「販売促進」は短期型戦略

まず、皆さんは「広告宣伝」と聞いて何を想像しますか?有名なタレントを起用したテレビCMですか?ラジオ、新聞、雑誌。インターネットでのホームページやブログ、メルマガ、検索エンジンに上位で掲載されていること。電車内の中吊り、ビルの屋上などに設置されている屋外看板や大型ビジョン。新聞に折り込まれてくるチラシ。街頭で配っているティッシュやクーポン券。毎日1通は送られてくるダイレクトメール。あなた自身の名刺やショップカード、お店の構え・ファサードも広告として活用されているかもしれません。どれもみんな当たっていますし、間違いではありません。
よく混同しがちなのが、「販売促進=販促」と「広告宣伝」です。前者は、商品や製品の購買時点での活動や購買に結びつけるための短期的な動機付け活動を主にしている「プッシュ型」の戦略活動です。それに対し、後者の「広告宣伝」活動は、商品や製品の存在を広く媒体(新聞やテレビなどのマスメディア、インターネット、看板など) を通じて告知し、企業イメージの醸成やロイヤリティの形成など購買意欲を高めるという「プル型」の長期型戦略という点が大きく異なるところです。

「広告宣伝」は、事業の成長とともにあっという間に必要になる

「広告宣伝」というと費用がかかるなどの理由で、起業したての頃は関係ないもの、会社がもっと大きくなってからのこと、と考えている人が多いと思います。でも、広く一般に告知することの重要性や告知する内容を吟味することは、特に起業する時にはじっくりと検討しなければならない大切なことです。
私の知り合いでパソコンスクールを15年前にたち上げた方がいます。その後のITブームやキャリアアップ・スキルアップブームに乗って、あっという間に全国各地に教室を展開することになりました。その間、広告活動が後追いになり、スクールの表現コンセプトが統一できず、結局は数年後、店名も含め全面的に広告制作物を刷新することになってしまいました。
ここでのポイントは、起業するとあっという間に広告が必要になる時期がくる急成長型の事例が後を絶たないということです。そのためにも事業をたち上げたときから、戦略として「広告宣伝」を考えておかなければなりません。広報活動や販売促進をする場合も、「広告宣伝」の考え方との一貫性をもって実行していくことが重要です。

「広告宣伝」は遠くに感じても、案外近いところにあって、重要な企業活動です。ぜひ、起業家自らの手で、満足する広告を作っていけるようヒントを提供していきたいと思っています。では、「広告宣伝」で何を訴えていくのか。次の3点がポイントです。

【一つ目は、オリジナリティです】
この広告を見れば、どこの広告か分かるようにする工夫が必要です。これを、広告表現上では「トーン&マナー」、縮めて「トンマナ」といったりします。たとえば、“iichiko(いいちこ)”という焼酎の広告展開は大変参考になります。皆さんもどこかで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。駅のポスターであったり、テレビCMであったり、雑誌広告であったり、どれも商品は隅に小さく商品写真が載っているだけで、あとは“いいちこ”のロゴタイプと印象的な風景写真というパターンですね。これこそシンプル・イズ・ベストという、トンマナのオリジナリティが徹底された事例です。

【二つ目は、継続性です】
なかなか費用もかかることなので、広告を続けることは難しいと思っていませんか。広告といっても、新聞やテレビばかりではありません。広くいえば自社の店舗の看板も広告ですし、飲食店のニューも、広告の一種です。つまり、広くお客さんにモノやコトを伝える媒体はすべて広告と思って、対応することが大切なのです。メニューだったら、季節毎に変えていくとか、手配りのチラシも月1回は必ず行うとか、手間や費用をかけ広告を続けていかなければブランドはすぐに忘れられてしまいます。少しづつでもいいので、続けていくことが大切なのです。

【三つ目は、統一性です】
一つめのオリジナリティと二つめの継続性をベストミックスさせていくことが統一性です。表現と機会の合致といってもいいでしょう。経営だって同じですよね、統一した考えのもと、続けてこそ成果が表れてくるモノです。まさに、ブランドというのは経営そのものだと言われるのは、この辺に理由があるのです。ブランディングを進めることは、経営戦略と切っても切れない関係なのです。

以上が「広告宣伝」を行う広告戦略づくりに必要な訴求ポイントです。また、「広告宣伝」活動とともに、「広報」活動も大切な戦略です。こちらは、単純にいいますと“お金をかけない”広告活動と言ってもいいでしょう。いわゆる、パブリシティという新聞やテレビなどに取り上げてもらい知名度をあげるという手法です。起業時のお金のないときには意識したい活動手法です。
そのひとつが「プレスリリース」です。でも、なかなかうまく活用されていないのも事実です。その理由は、「プレスリリースなんて、どうせ取り上げられないよ」とか、「送ったって、いつ取り上げられるか分からないよ」なんて、最初から悲観的かつ消極的な考えを持つ起業家が多いからです。確かに、新商品や店舗のオープンといった時期が限られている案件については使い勝手は悪いかもしれません。しかし、お金をかけて行う広告とセットでプレスリリースを使うといった戦略ならどうでしょう。広告とは違った反響があると思いますよ。消費者にとってみると、企業からの押し付け広告ではなく、マスコミといっためがねを通しての情報ということで、ニュートラルな気持ちで接することができます。余分な先入観なしに、薦められるとつい試したくなる、そんな心理的な過程を活かすのがプレスリリースの効用なのです。


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