創業サクセスマニュアル~専門家による創業取扱い説明書~

公益財団法人あいち産業振興機構


戦略策定から実行計画作成まで【基本戦略】フレームワークを使っての戦略策定方法

『戦略』という言葉が、日常的に使われています。しかし、その言葉の意味や重要性についてはあまり深く語られてはいないようです。『戦略』と『戦術』が混同されていたりします。
『戦略』とは何なのでしょうか?例えば『戦略』と検索エンジンに入力すると、「戦術の上位概念として、一般に師団やそれ以上の大戦闘単位の軍事行動を計画・組織・遂行するための通則をさす。国家戦略や企業戦略のように非軍事的な分野に応用されることも多い。」(YAHOO!百科事典(日本大百科事典(小学館)))と表示されます。軍事用語の転用です。同様に『戦術』について調べると、「戦略の下位概念で、一般には師団より小さい戦闘単位の軍事行動を計画・組織・遂行するための通則をさす。攻撃・防御、陣地戦・遭遇戦といったいくつもの形式に分けられるのが普通である。」(同出)とのことです。
これをもう少し噛み砕いて言うと『戦略』とは全体が動く大方針、『戦術』とはそれに基づいた具体的行動を伴う小方針である、ということです。
つまり、『戦略』を決めると、それに基づき各部門(個人等の小組織でも同じ)で『戦術』が決められ実行される、ということです。
『戦略』は、「考え方のカタマリ」であるとも言えます。従って戦略策定の時点では、金銭的な支出はありません。しかし、『戦術』には具体的行動が伴います。つまり金銭の支出が発生する、ということになります。
『戦略』の誤りは、『戦略』に基づいて実施されたすべての『戦術』を無意味化させます。つまり、『戦略』策定の失敗は、事業に金銭的な損失を発生させることになります。大きな企業、小さな企業、自営業それぞれに『戦略』には、社運がかかっている場合があります。『戦略』の誤りは致命的となる可能性がある、ということです。
また、「戦略など考えても意味がない。そんなことをしているよりも営業に行くべきだ。」というご意見もお聞きします。しかしこれは、例えば設計図を書かずに家を建てるようなものです。設計図を書かずに家を建てる人はいませんが、経営の世界ではよくある話です。高度成長やバブル時代を経験しているような方はこの方法を信奉していました。これは人口が増え、市場が拡大していたから通用したのです。しかし、今は違います。供給が需要を大きく上回り市場が縮小する中で、自社が選ばれ続けなければなりません。やみくもに営業をしても選ばれる商品やサービスを提供できるわけではありません。選ばれるための『戦略』が必要となります。
以上が、『戦略』の意味と重要性です。次に、『戦略』の策定についてお話しします。
手順としては、まず「SWOT分析」、その次に「クロスSWOT分析」を行って策定します。
「SWOT」分析とは組織の内部環境と外部環境を総合的に分析するフレームワークです。組織の強み(S)、弱み(W)、機会(O)、脅威(T)について明らかにします。「クロスSWOT分析」とは、「SWOT分析」で明らかになったそれぞれの要素を掛け合わせて『戦略』を検討するためのフレームワークです。

フレームワーク

組み合わせには4つのパターンがあります。
①「強み」×「機会」
②「強み」×「脅威」
③「弱み」×「機会」
④「弱み」×「脅威」
これらをそれぞれ検討するわけですが、この中で重要なのは①「強み」×「機会」です。
そもそも『戦略』とは、「選び」「捨てる」ことです。4つのパターンにすべて対応できる『戦略』を策定することは不可能です。また、無理に対応しようとして作った『戦略』は無意味なものになったり、実行不可能なものになったりします。そもそも『戦略』とは組織の生存領域を確定するためのものです。それは①「強み」×「機会」の中にあります。②~④は補助的なものと考えるべきです。また、『理念』や『思い』もこの段階で『戦略』に落とし込みます。
考え抜いて作った『戦略』は、「選択」と「集中」を伴うものです。従って大きなリスクをその存在そのものに内包しています。しかし、『戦略』を定めずに事業を進めることは、リスク以上の自殺行為となります。


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