創業サクセスマニュアル~専門家による創業取扱い説明書~

公益財団法人あいち産業振興機構


戦略策定から実行計画作成まで【アクションプラン】戦略の具体的行動への落とし込み

「『戦略』を作っても意味がない」ということをよく聞きます。なぜでしょうか?
それは、次のような状態が考えられます。
① 『戦略』が常に変更され、一貫性がない
② 『戦略』が具体的行動にまで落し込まれていない。
③ 『戦略』がすべての構成員に浸透していない。
③はある程度の規模の組織で発生する問題です。ここでは①と②についてお話します。

①はワンマン社長(一人で行っている事業を含む。)の率いる組織で発生します。『戦略』は、一旦決めたら、簡単には変更すべきではありません。変更すると当然それに伴って実行された『戦術』も無意味となり、損害が発生するからです。社員(がいる場合)は、何をしていいのか分からなくなり、やる気がなくなります。
では、なぜ『戦略』の変更が発生するのでしょうか?
それは、検討が足りないからです。『戦略』には「選択」と「集中」が伴います。従って当然にモレが出ます。検討が足りないと、モレに対して割り切りができていないと、モレに気がついた時点で目先のチャンスロスに揺らぎが発生し、『戦略』の変更となります。また、少し活動してみて上手くいかないと簡単にあきらめる場合もあります。また、『戦略』の継続を裏付ける体力(資金力)も戦略策定時に織り込んでおかなければなりません。体力不足により『戦略』を変更するということは、当初の『戦略』策定の誤りであると言えます。従って、『戦略』の策定には『徹底的な検討』と、決定した方針を貫き通す『覚悟』が必要です。

②については、『戦略』から有効な『アクションプラン』が導き出されていないということです。『戦略』が策定されていても、具体的に誰(一人で行っている事業を含む。)が何をしていいのか明らかにされていなければ、ほとんど意味がありません。
では『戦略』からどのようにして『アクションプラン』を導き出せばよいのでしょうか?それには「バランススコアカード」の考え方が有効です。「バランススコアカード」とは本来業績評価システムとして開発されたものですが、現在は経営戦略を研究する手法としても活用されています。
まず、事業の「財務目標」を設定します。同時に、策定した『戦略』に含まれる「課題」を抽出します。次にその「解決策」を検討します。それら「課題」と「解決策」を「バランススコアカード」の4つの視点(①財務の視点②顧客の視点③内部プロセスの視点④学習と成長の視点)で分類します。分類した要素を重要成功要因として、そこから生じる事実を変動要素として、「戦略マップ」を作成します。「戦略マップ」とは、最終的に財務目標を達成するための要素を因果関係で繋げた図です。これに「行動の尺度」と「目標値」、「時期」を定めて「ガントチャート」に落とし込みます。「ガントチャート」とは作業の行程管理を行うために作成する表です。これが『アクションプラン』となり、事業を行うためのPDCAサイクルのP(実行計画)部分ができたことになります。


「創業プラザあいち」の卒業生、チャネルクリエイト合同会社の三浦代表に戦略策定とアクションプランについてお聞きしました。
三浦代表は、2011年9月に名古屋市中区栄で創業され、年間150日以上が出張という、大変忙しい日々を送っておられます。
大学卒業後建材会社に就職され営業を担当されましたが、当初は営業の方法が分からず、「どべ」の状態が何年も続いたとのことです。ところが工夫を重ねるうち、29歳ごろから「営業」が楽しくなり、成績が上がったことにより役職に就くことを求められたということです。昇進し退職時には支店長として業務をこなされていましたが、独立の夢をかなえるため退職され、創業プラザあいちに入居されました。
「「創業プラザあいち」に入り、戦略を策定するための準備段階としてSWOT分析を行おうとしたら、手が震えて止まった。分析ができなかった。」とのことでした。いざ、自分自身の棚卸しをしようとしたら、自分には何もないような気がしてしまったようでした。しかし『創業プラザあいち』利用中の6カ月間を使って、自分自身をしっかり見つめ、自分の強みを見極める作業を続けました。そして当初は「営業サポート」と考えていた事業の柱を「営業指導」とする戦略を立案されました。
「営業サポート」から「営業指導」への変更は言葉としては似ていますが、内容的には似て非なるものです。自己の強みと外部環境を分析して修正されました。三浦代表の強みとは、「営業力」ではなく、営業力を努力によって身に付けたその「過程」です。それに気付き、その強みを核として戦略及び計画が策定され、現在着実に実行しておられます。悩みに悩んで、自分を追い込み、徹底的に考えて作った戦略ですので揺らぎがありません。9月で一応事業の区切りがつくとのことで、新しい計画の実行(家具の製造・販売)にも着手しつつあります。

2016年の売上目標は1億円とのことです。ただし、今期(2013年9月期)の売上目標は達成することができませんでした。原因について分析し、計画を修正し次期の売上目標達成に向けて活動中ということです。 三浦代表は創業から休みをとっていないということです。心配で休んでいられない、とのことです。休むことも含めて計画を作ることをお勧めします。強制的に休む仕組みを作れば、休むことも仕事のうちということになります。健康管理も事業主の仕事です。


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