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2005.10月号 No.42 通巻243 10月03日発行
名城大学理工学部材料機能工学科 
教授  安藤義則 
印刷用ページ
【科学技術は今(20)】
カーボンナノチューブを大量供給する「名城ナノカーボン」
ナノテクの代表的な物質のひとつにカーボンナノチューブがあげられる。鋼鉄の数十倍の強さを持ち、いくら曲げても折れないほどしなやかで、薬品にも耐え、銀よりも電気を、ダイヤモンドよりも熱をよく伝える。コンピュータを今より数百倍高性能にし、エネルギー問題を解決する可能性まで秘めている……。この夢のようなカーボンナノチューブはなかなか大量に作れない悩みがあった。今回は、大学発ベンチャーを設立し、カーボンナノチューブの画期的な合成について研究をすすめる名城大学 理工学部材料機能工学科 安藤義則 教授の研究室を訪問した(取材は(財)科学技術交流財団上原政美、(株)UFJ総合研究所松山豊が担当)。
大学発ベンチャー 
有限会社名城ナノカーボン
―  まず、先生の研究内容についてお教えください
安藤 われわれの研究室では、カーボンナノチューブの合成についての研究をしています。カーボンナノチューブは、いろいろなところで話題になっていますが、炭素の原子が組み合わさってできた管(チューブ)状の物質です。私のところにあった試料を用いて、隣の研究室にいらっしゃる飯島澄男教授が発見した物質です。
 
―  炭素がサッカーボール状に集まったフラーレンとともにナノテクの代表選手ですね
安藤 そうですね。われわれは、愛知県が進めている、知的クラスター創成事業の堀先生のプロジェクトである、ナノアッセンブリシステム開発に入れていただいています。
―  知的クラスター創成プロジェクトというと、先生も関与されて設立された大学発ベンチャーの有限会社名城ナノカーボンの関連ですね
安藤 ナノアッセンブリシステム開発プロジェクトの中で、われわれが設立した有限会社名城ナノカーボンは、ナノカーボンを大量に生産する技術を提供する形で参画しています。
―  他にはどのような企業が参加されているのでしょうか
安藤 豊田中央研究所、スポーツ用品のミズノの関連会社、真空装置メーカーのアルバック(ULVAC)ですね。こうした企業と共同研究を行っています。
カーボンナノチューブの大量生産に成功
―  カーボンナノチューブをどうやってつくるのでしょうか
安藤 アークプラズマジェット法といわれますが、触媒となる金属入りの黒鉛電極を鋭角に対置させてアーク蒸発することによって作製できます。カーボンナノチューブが生まれる場所は、電極の周りの空間にできる「すす」の中に含まれています。
―  「すす」の中に含まれているのですね
安藤 チューブの壁が単層ではなく、二層以上になっている多層カーボンナノチューブの場合は、陰極の上に堆積する物の中に多く含まれています。したがって、単層カーボンナノチューブを高い収率で生産するには、なるべく、陰極堆積物が少なく、真空槽の雰囲気全体に、炭素の「すす」が得られることが望ましいのです。
―  なるほど
安藤 普通は、陽電極と陰電極を直線状に対置させますが、電極を斜めに鋭角に対向させて、アークの炎が直接陰極に乗らず、周りに流れるように工夫したのです。われわれは、1日に100gという、従来とは桁違いの効率でカーボンナノチューブを生産することに成功しました。
触媒金属の除去が課題、さらに新たな製造方法を開発
安藤  しかし問題があります。こうしてできた単層ナノチューブのSEM像(走査型電子顕微鏡写真)をみると、触媒で使用したニッケルの粒子が黒い粒子状に見えます。このニッケル粒子は不純物なので取り除かなければなりませんが、周りに厚くついているアモルファスカーボンを除いてニッケルの粒子も取ろうとすると、ナノチューブもダメージを受け てしまって、精製したときの収量が落ちてしまうのが欠点となっています。
 
―  そうですか、精製するのが難しいという問題があるのですね
安藤 はい。また、熱分析をすると、370度程度という低い温度でナノチューブがなくなってしまうこともわかり、この方法でできたナノチューブは、熱的にも強くないということがわかってきました。
―  ちょっと困った課題ですね
安藤 こうした問題を解決するために、違う製造方法を生み出しました。電極の触媒に鉄を混ぜて、また反応させる槽の雰囲気の不活性ガスに水素を加えて成功しました。装置を作動し始めると、5分程で巨大な単層カーボンナノチューブのくもの巣のようなネットができます。
―  すごい量ですね。まるで黒砂糖の綿菓子のように電極周りに生まれてくるのですね
安藤 そうですね(笑)。ここにあるのができあがった単層カーボンナノチューブのくもの巣です。1ℓの容器にいれて質量は1gしかありません。できた「すす」を TEMでみると、触媒の鉄粒子の周りにアモルファスカーボンがついていますが、厚くないので、少し加熱して、塩酸で洗い流せば鉄がとれ、精製が非常に楽なのです。
 
大量に供給できるカーボンナノチューブを使った用途開発
安藤 最初にお話した方法は1日100gという量のカーボンナノチューブを含む「すす」ができますが、純度は3割くらいとあまり高くないです。これは精製にコストがかかるので、無理に精製せず、触媒が入った状態で複合材料として使えればよいと考えています。実際に樹脂に塗って、透明度や導電性の高い膜として使えるようにした樹脂メーカーがあります。
―  すでに応用開発を実用化しているのですね
安藤 鉄を触媒とした方法は、アークプラズマジェット法に比較すると少なく、1日10g程度できます。こちらは純度が高いので、単体としてシート状のペーパーや糸、触媒の担体、あるいは複合材としての利用が考えられます。有限会社名城ナノカーボンは、応用開発を希望する企業にカーボンナノチューブを販売するほか、応用開発の受託研究、ナノカーボンを利用した開発のコンサル、用途開発も行っていく予定です。
―  共同研究先で愛知県の会社はどれくらいありますか
安藤 あまり多くないですね。豊田中研のほかは、樹脂メーカーぐらいです。このあたりでは樹脂など材料系企業が多いのですが、愛知県の企業は、現在作っている製品にどう活用するかについて様子を見ているのではないでしょうか。東京や関西の企業では、この技術を利用して、どういうビジネスを立ち上げるかを考えているような違いがあるかもしれません。愛知県からも関心を持つ企業がもっと増えてほしいですね。
―  ありがとうございました
PROFILE
安藤 義則 (あんどう よしのり)

名城大学理工学部材料機能工学科 教授

学位 工学博士(名古屋大学)

<専門分野>
結晶物理、応用物性

<研究テーマ>
カーボンナノチューブの作製と応用

<主な研究業績>
弾性ひずみを持つ結晶のX線回折(1964-1972) Al-Cu合金の電子顕微鏡的研究(1970-1975) ガス蒸着金属超微粒子の研究(1975-1980) ガス蒸発法によるSiC超微粉の研究(1978-1990) フラーレン・カーボンナノチューブ研究(1991-Present)

連絡先
名城大学 理工学部 材料機能工学科 ナノ 材料研究室 
〒468-8502 名古屋市天白区塩釜口1−501
TEL: 052-838-2409 (ダイヤルイン)
FAX: 052-832-1170
E-mail: yando@ccmfs.meijo-u.ac.jp

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