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2005.11月号 No.43 通巻244 11月01日発行
宿澤経営情報事務所
代表  宿澤 直正
(中小企業診断士)


ナレッジマネジメントとは、「情報」をさらに発展させた「知識(ナレッジ)」という目に見えない資源をどのように活用すれば経営をより良い方向に導けるかという「考え方」なのです。
「知識」に状況に応じた工夫を加え、新たな付加価値をうみだすもの、すなわち「知恵」です。この「知恵」こそが、中小企業にとって、差別化の貴重な武器であり、それを生み出すことこそが、ナレッジマネジメント導入の最終的な目標になると考えます。
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【特集 技術マネジメントとナレッジマネジメント】
第2部 ナレッジマネジメントを組織に根付かせるには
ナレッジマネジメント導入の悲しい実情
私が今までに、ご訪問させていただいた中小企業の中には、「ナレッジマネジメントを導入したけど効果が出ない」という企業が何件かありました。そういった企業を訪問すると、実は、ほとんどの企業が「ナレッジマネジメントを導入していない」という実情に遭遇します。そこにあるものは、高性能なサーバーマシン、一人一台のパソコン、そして、まさに何でもできそうな高機能なソフトウェアです。それらが誰にも利用されることなく、稼動している様子をみると、中小企業の大切なIT投資がこのような形で使われてしまったことに、悲しさと悔しさを覚えます。
では、「ナレッジマネジメントを導入していない」とはどういうことでしょうか。そもそもナレッジマネジメントとは、コンピュータやソフトウェアといった「物」のことではありません。よって、それらを購入してインストールしたとしてもナレッジマネジメントを導入したことにはならないのです。ナレッジマネジメントとは、「情報」をさらに発展させた「知識(ナレッジ)」(以降、知識とナレッジは同意)という目に見えない資源をどのように活用すれば経営をより良い方向に導けるかという「考え方」なのです。その「考え方」を導入した経営をして、初めて「ナレッジマネジメントを導入した」といえるのです。
中小企業にとっては、「情報」という経営資源は非常に大切です。なぜなら、これらはお金を払えば簡単に調達できるものではないからです。資金力では大企業にはかないませんが、この自分たちでコツコツと収集し、自分たちしか持っていない「情報」という経営資源は、大企業をはじめとする他社との差別化につながっていくのです。
なぜ、ナレッジマネジメントは組織に根付かないのだろうか
「ナレッジマネジメントを組織に根付かせるには」を考える前に、まず、「なぜ、ナレッジマネジメントは組織に根付かないのだろうか」を考えてみたいと思います。
ナレッジマネジメントの失敗事例を調べてみると、やはりコンピュータシステムの導入に重点がいってしまっているケースが多くみられます。社内LANを構築し、最新のソフトウェアを導入して、「さぁ、情報共有を行いましょう」と上司がトップダウンで号令をかけるだけで、その「情報共有の目的」ですら社員に伝えられていないというパターンです。このような場合、社員はどんな情報を提供すればよいのか、何のために使うのかわからず、戸惑うばかりです。
では、どのような導入の仕方をするべきでしょうか?それは、ナレッジマネジメントとは経営をより良い方向に導くための「考え方」であるという言い回しに答えがあります。
会社の経営計画を立てるときには、その会社のおかれる環境分析をして、その会社にあった経営計画を立てるように、ナレッジマネジメントも、その会社にあった導入方法を考える必要があるのです。決してソフトウェアのようにインストールマニュアル通りには行かないことを認識すべきです。
●会社が必要とする情報はなにか? 
●社員が欲しい情報は何か?
●社員は情報をどの用に活用しているか? 
●情報を共有する組織風土になっているか?
 
などを十分検討することをせずに、安易な導入をすれば、それは社内の混乱を招くことになってしまうでしょう。
日報でみるナレッジマネジメント導入事例
ここに、ある飲食店があるとします。その飲食店では、みんなのわかる場所に一冊のノートを置きました。営業時間が終わると店員全員が、このノートにその日に感じた出来事を一言ずつボールペンで書いてから帰ります。翌日、営業時間前に店員みんなでそのノートを読んで、その日に気をつけることをミーティングで確認します。
この例は、きわめて正しい形でナレッジマネジメントをスタートさせた例だといえます。では、なにが「きわめて正しい形」なのでしょう。ポイントは5つあると思います。
(1) みんなのわかる場所にノートを置いたこと 
(2) ノートやボールペンはみんなが使える道具であること
(3) みんながノートへの書き込みに参加していること 
(4) みんながノートを読んでいること
(5) その日に気をつけることを確認していること
こうして、みんなで書き綴った日報は、問題点や改善内容、アイデアが詰まった宝の山なのです。

しかし、宝の山が膨大になってくると、次の欲求が生まれてきます。それは、「今、この時に役立つ宝を、素早く的確に探したい」という欲求です。ナレッジマネジメントとは発展していくものなのです。

ナレッジマネジメントの発展は以下のように3ステップで考えることができると私は考えています。

第一ステップは、みんなで「日報」を書き、読み、議論をすることです。このスタートがとても大切です。みんなが自分の意見でお店が良くなると実感することで、ナレッジマネジメントへの取り組みのモチベーションが上がります。また、みんなのレベルに合わせて、まずはノートに日報を書き、それを継続することから始めます。 

第二ステップでは、日報をパソコンに打ち込んでみます。ここで初めてパソコンが検索の道具として登場します。課題・問題が発生したときに素早く検索したいという欲求に応えるために、パソコンが便利なので活用します。

第三ステップでは、みんなで日報を、問題、課題、対処方法などに分類してパソコンに登録するようにします。問題の優先順位や対処のノウハウをみんなで議論しやすくなり、それが知識となっていきます。  

ここまでいけば、立派なナレッジマネジメントであるといえます。

ナレッジマネジメントを組織に根付かせるには
ナレッジメネジメントを導入することによって、経営に良い影響が出始めたとします。ここまでいけば、「ナレッジマネジメントの導入ができた」と胸をはって言えると思います。しかし、ここで満足しては、やはりナレッジマネジメントは組織に根付かないのです。それはなぜでしょうか?
ナレッジマネジメントを組織に根付かせるには、図のようなサイクルを回していく必要があります。ナレッジの元になる「情報」という経営資源は「生もの」なのです。中には不変の摂理のように腐らない「情報」も存在しますが、ほとんどは賞味期限が短いものばかりです。
そのため、「収集」した情報の「整理と選別」を常に行う必要があります。賞味期限切れやあまり使われていない情報を間引くことで、有益な情報、使われる情報のみが残っていきます。その結果、利用者は必要とする情報に素早くたどり着くことが可能となり、より多くの利用者が次の「活用」のステップに進むことになるのです。こうして、図にあるようなサイクルを継続することにより、ナレッジマネジメントの生み出す価値は、年々大きくなっていき、組織に根付くどころか、組織になくてはならないものになっていくでしょう。

最後に
最後に、先の導入例で述べた一冊のノートを活用したナレッジマネジメントの発展の経緯を思い出してみてください。はじめはただの「データ」でした。「データ」とは「素材であり、そのままではあまり使いこなせない事実や数値」です。ステップ2では「情報」になりました。「情報」とは「データを意図や目的をもって加工したもの」です。ステップ3でようやく「知識」になりました。「知識」とは「情報を何かに利用できる形、目的達成のために役立つ形にしたもの」です。
しかし、実は、次のステップがあるのです。それは「知識」に状況に応じた工夫を加え、新たな付加価値をうみだすもの、すなわち「知恵」です。この「知恵」こそが、中小企業にとって、差別化の貴重な武器であり、それを生み出すことこそが、ナレッジマネジメント導入の最終的な目標になると考えます。
PROFILE
宿澤直正(しゅくざわ なおまさ)

1967年生まれ。

<職歴>
NECソフト(株) (1991〜1998)
中部日本電気ソフトウェア(株) (1998〜2002)    
中小企業大学校52期中小企業診断士養成課程卒(2003)
ダイスビュー有限会社(2004)
宿澤経営情報事務所設立(2005)

<資格>
中小企業診断士
情報処理技術者・上級システムアドミニストレータ
ISO9001(QMS)審査員補
2級FP技能士(中小事業主資産相談業務・資産設計提案業務)
日商簿記検定2級

<得意分野>
経営課題を解決する経営戦略立案
業務フロー作成による業務分析    
ホームページの有効活用提案(SEO/SEM)
ナレッジマネジメントの導入 など  

<連絡先>

宿澤経営情報事務所

〒458-0830 愛知県名古屋市緑区姥子山五丁目106番地
TEL 052-624-8259
FAX 052-624-8214
会社URL http://www.shukuzawa.com/
 

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