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植物性乳酸菌 
〜私たちはこの身近な微生物と共に生きてきた〜
愛知県産業技術研究所  記事更新日.06.09.01
食品工業技術センター
■問合せ先
〒451-0083 名古屋市西区新福寺町2丁目1番の1
TEL 052-521-9316  FAX 052-532-5791
http://www.aichi-inst.jp/kenkyujo/shokuhin.html
印刷用ページ
近ごろ、植物性乳酸菌の使用を強調した新商品が各種出回っており、人気を得ています。 例えば、植物性乳酸菌で発酵させた野菜飲料が今年に入って相次いで発売されましたが、予想を上回る売れ行きに生産が追いつかず品切れが続出し、販売地域縮小に追い込まれたものもありました。他にも、植物性乳酸菌で発酵させたヨーグルトをはじめ、植物性乳酸菌で発酵・発芽させた発芽玄米や植物性乳酸菌を含むというサプリメントなどの健康補助食品が多数販売されています。いったい、「植物性」の乳酸菌とはどういうものでしょうか。なぜ今、植物性乳酸菌が注目を集めているのでしょうか。

まず乳酸菌と聞いて、皆さんの中にはヨーグルトやチーズをイメージされる方が多いと思います。もともと乳酸菌とは、その名のとおり乳酸を多量に作る菌のことで、糖類をエネルギー源として乳酸を主要な代謝産物とする(消費した糖に対して50%以上の乳酸を作る)細菌の総称です。写真は分裂中の乳酸菌の電子顕微鏡写真です。現在、乳酸菌は発酵食品などの食品製造にとどまらず、バイオプリザベーション(乳酸菌が作り出す抗菌物質の作用により食品貯蔵性を高める方法)において、また、プロバイオティクス(腸内環境を改善するなど安全で身体によい影響を与える微生物)として、さらには、ポリ乳酸を原料とする生分解性プラスチックの生産といった工業分野など、幅広く活用されています。

乳酸菌の電子顕微鏡写真(撮影倍率20,000倍)

ところで、今から約20年前に、乳酸菌をその生息する環境により区別しようとする考え方が研究関係者から提唱されました。すなわち、乳(ミルク)およびその加工品や畜肉の発酵にかかわる乳酸菌を「動物性」乳酸菌、発酵した野菜、果物、穀類、芋類、豆類などに認められる乳酸菌を「植物性」乳酸菌、という具合に分けて考えようというものです。

乳酸菌は、その生育に栄養豊富な環境を要求する細菌で、その点動物性乳酸菌が生息するミルクは哺乳動物の赤ちゃんのための完全無欠な食料であり、栄養素が完璧にそろった最適な環境といえます。一方、植物の場合は何らかの原因で細胞に傷がつくことにより細胞内容物が漏出してはじめて栄養物が供給されるわけですが、植物細胞から供給される栄養素はミルクと比べて不完全なうえ、微生物の生育を阻害する刺激成分なども漏出してくるため、植物性乳酸菌は動物性乳酸菌より過酷な環境の中で生息しています。植物に由来する糖質の種類、栄養素、生育阻害物質の組み合わせにより植物が作り出す環境は多種多様であり、個々の環境に適応できた乳酸菌だけが各々定着していることを考えると、その環境の数だけ多様な植物性乳酸菌が存在していることになります。表に植物性乳酸菌と動物性乳酸菌の性質を比較したものを示します。

植物性乳酸菌 動物性乳酸菌
生息場所 野菜、果物、穀類、芋類、豆類などの植物 乳(及びその加工品、畜肉)
エネルギー源となる糖質 ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、その他多糖類多様 乳糖のみ
生息場所の糖濃度 濃淡まちまち 一定
生息場所の栄養素 不十分・バランス悪し
(でも生育可)
豊富・バランス良好
(でないと生育不可)
生息場所に存在する
微生物生育阻害物質
刺激化合物
(タンニン酸、カテキン類、アルカロイド類、イソチオシアネート化合物類等)
植物由来各種酵素類
(酸化酵素、還元酵素等)
なし
食塩耐性 高耐塩性菌あり なし
乳酸菌の種類 多い 少ない
現在の乳酸菌研究の多くは動物性乳酸菌を対象にしたものであり、これまでに整腸作用、抗菌作用、抗腫瘍作用、免疫賦活作用、アレルギー症状の軽減、血清コレステロールの減少、血圧降下作用など、ヒトの健康を維持する保健効果があるという機能性が科学的に証明されてきました。それに対して、植物性乳酸菌の研究はまだ発展途上でこうした機能性についてあまり明らかになっていませんが、動物性乳酸菌と比較して栄養が不十分な過酷な環境でも生き抜くことができることから、動物性乳酸菌よりもさらに強い活性や、これまでにない新機能を持つものが見つかるのではないかと期待されています。すでに、植物性乳酸菌がヒトの胃や十二指腸などといった胃酸や消化液にさらされる苛酷な環境を生きたままくぐり抜け、小腸や大腸にまでたどり着く可能性が高いことを示唆する実験結果が出始めており、腸内の免疫力活性化に優れていることが分かってきました。

実は植物性乳酸菌は日本を含む東アジアから東南アジアにかけての地域に住む人々にとっては馴染みの深い微生物です。日本の伝統的な発酵食品である味噌、醤油、日本酒、糠漬けをはじめ、韓国のキムチ、中国のザーサイ、インドネシアのテンペなど、これらの地域には植物を主原料とする伝統発酵食品が数多く存在し、これら発酵食品の発酵過程に乳酸菌が関与しています。日本人が食の洋風化に伴い乳および乳原料発酵食品を日常的に口にするようになってまだ日が浅いですが、植物性乳酸菌が関与する伝統発酵食品の摂取には遥かに長い歴史があり、植物性乳酸菌は日本人にとってより付き合いの長い乳酸菌といえます。植物性乳酸菌の研究がさらに進み、その機能性が明らかとなって、今後ますます日本人の健康維持や長寿に重要な役割を果たすことが期待されます。

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