炭酸ガスによる地球の温暖化が問題になっていますが、ポリ乳酸は温暖化防止の役割を担うプラスチックとして期待されています。その理由は、石油から造られる一般のプラスチックとは違って、ポリ乳酸は植物を原料とするからです。
ポリ乳酸の製造方法の1例を図1に示します。ポリ乳酸の原料となるのは、サツマイモ、トウモロコシ、サトウキビなどです。これらの植物からデンプンを採り出し、デンプンに酵素を加えて糖に分解します。さらに、この糖に乳酸菌を添加して発酵させて乳酸を生成させます。発酵液中の乳酸を精製し、重合させることによってポリ乳酸が得られます。
このように植物を原料として製造されたプラスチックは、使用後に燃焼させて炭酸ガスが発生しても大気中の炭酸ガスを増加させるおそれがない。つまり、サツマイモやサトウキビは、空気中の炭酸ガスと太陽光線を吸収して植物体内でデンプンを合成し植物中に蓄積しています。したがって、このデンプンを採り出して製造されたポリ乳酸を用いた部品や製品を、使用後に燃焼させて炭酸ガスが発生しても、デンプンを合成する際に植物が空気中から取り込んだ炭酸ガスと等量であり、空気中の炭酸ガスは増加することがありません。このように大気中の炭酸ガス量が変化しないことを、炭酸ガスを構成しているカーボンの名称を使って「カーボンニュートラル」と呼んでいます。
植物を原料として合成されるプラスチックは他にもありますが、ポリ乳酸が最も安価に大量に製造できると考えられることから最も注目されています。
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