鉄鋼材料は、乗用車を始め、様々な機械や設備の中の構成部品などに多く用いられています。多種多様な金属の中でも鉄鋼材料が構造材料として最も信頼性のある材料と考えられているからです。しかし、製造過程や使用・管理上のミスで使用中に割れ・破損等の不具合が発生することがあります。このような場合、破損の原因を調べて壊れなくするための有効な対策を立てなければなりません。形あるものは必ず壊れるといわれますが、問題はその壊れ方です。どうして壊れたか、その原因
究明のてがかりは破断面に残されています。そこで破断面をよく観察して、その特徴を捉えると破損の原因を明らかにすることができます。
ここでは破断面の特徴から破断原因が推定できたいくつかの例をご紹介しましょう。
■ 延性破面 材料に力を加え、その力を徐々に上げ、力がある限界(材料の強度)を超えると、破壊が起こると同時に一部塑性変形します。このため、破断面には微細な変形の痕が観察されます。電子顕微鏡などで拡大して観察するとゴルフボールの表面につけられた凹凸に似た形状をしています。この痕のことをディンプルと言います。破断面には無数のディンプルが細かく分布しています。写真1にこの破面を示します。この場合、力がかかった方向にこのディンプルが変形し、まっすぐ引っ張られて破断したことが分ります。ディンプルの大きさは色々ですが、元の金属の結晶粒の大きさとはあまり関係ありません。ディンプルの中心部に炭化物などの介在物を見かけることがあります。
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