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工業製品適応可能なバイオプラスチックの開発
愛知県産業技術研究所  記事更新日.10.01.05
■問合せ先
愛知県産業技術研究所 
TEL0566(24)1841  FAX0566(22)8033   
http://www.aichi-inst.jp/
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近年、二酸化炭素の増加に伴う地球温暖化や化石資源の枯渇問題がクローズアップされており、石油資源に代わって再生可能資源である植物の活用が脚光を浴びています。トウモロコシやサトウキビなどのバイオマス由来のエタノールが、ガソリンの代替として注目されて久しいですが、反面、食糧価格の高騰に繋がり問題となっています。

一方、プラスチック業界においても、バイオ由来のプラスチック材料の開発が、関心を集めています。今日、バイオプラスチックの主なものは、脂肪族ポリエステルを基本骨格とするものが大半であり、とりわけポリ乳酸が注目を集めています。

ポリ乳酸は、バイオエタノールと同様、サトウキビなどのバイオマスから誘導され、従来の石油を原料とするプラスチックや合成繊維に比べて、原料の採取から製造に至る工程で使用されるエネルギー量や二酸化炭素の発生量が非常に少なく、環境に配慮したプラスチックの代表と言われています。

従来、ポリ乳酸の用途としては、育苗ポットやゴミ袋といった生分解性を活かした製品や、手術の縫合糸、組織再生用足場、ドラッグデリバリーシステム用のマトリックスなど生体吸収性を利用した医療分野での用途展開が主流でした。しかし、近年はバイオマス由来であることに視点が変わり、生分解性を逆に抑制し、耐久性を高めることにより工業用部材及び日用品への需要を高める動きが着々と増加しています。

ポリ乳酸は、脂肪族ポリエステルの中では成形加工性に優れており、フィルムや繊維にする場合には、溶融押出後に延伸操作を行うことにより高分子鎖の配向結晶化が起こり、力学的強度や靱性、耐熱性の向上を図ることが出来ます。しかしながら、汎用的成形方法である射出成形では、延伸操作を伴わないので、結晶化が進まず、成形時間が非常に長くかかるという問題がありました。またプラスチック成形品の重要な基本性能の1つとして耐衝撃性が挙げられますが、ポリ乳酸は耐衝撃性も劣るため、改善が必要とされています。

耐衝撃性が低いこと、即ち硬くて脆いという欠点を改善する手段として、ゴム成分のブレンドや可塑剤の添加が有効であると考えられます。しかし、ゴム成分をブレンドする方法では、樹脂とゴムが均一に混ざり合わないため、充分な耐衝撃性改善効果は認められません。また、可塑剤を添加する方法では可塑剤のブリードアウト(樹脂からの経時的な析出)や耐熱性の低下といった問題があります。

そこで愛知県産業技術研究所では、ゴム成分のブレンドや可塑剤の添加による弱点を克服するために、アロイ化(ポリマー同士の混合により新しい特性を持つポリマーを得ること)に関して種々の検討を行ってきました。その結果、ポリ乳酸にPBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)と呼ばれる生分解性樹脂及び有機過酸化物の一種をブレンドすると、上記問題点を改善できることを見出しました(図1)。

これは、ポリ乳酸とPBATが、加熱溶融で発生した有機過酸化物ラジカルにより架橋形成した結果、互いの樹脂の親和性が向上し、均一に混ざり合うようになったためであると考えられます。本アロイ化により、ポリカーボネートに匹敵する耐衝撃性を付与することができ、これは工業用部材や自動車部品などに必要な耐衝撃性を示したと言えます(図2)。

また同アロイを200℃で融解後、一定速度で冷却し、偏光顕微鏡により冷却時の結晶化挙動を観察したところ、ポリ乳酸に比べて著しく結晶化が速いことが分かりました。

現在、バイオプラスチック材料は、一部の車種のマットレスなどで実用化されていますが、プレス成形で加工しているために、成形時間が長いなどの弱点があります。しかし、ここで紹介した技術を応用すれば、成形時間を短縮し、工業用部材などの射出成形品に広く展開することが可能になるものと期待できます。

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