測色技術とその利用
記事更新日.12.05.01
あいち産業科学技術総合センター
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■目で見える色
繊維産業のみならず全ての産業において、製品イメージにおける色の重要性は高いものがあります。 しかしながら、色は人間の目を通して見えるものであるため、物が置かれている環境や見る人の個人差により、実際に見えている色は異なります。
晴天の下で見える色と曇りや雨の天候の下で見える色は異なり、室外で見える色と室内の蛍光灯の下で見える色も異なります。
このため、古くから織物工場では、通称「ノコギリ屋根」といわれる形にして屋根の北側にガラス窓を付け、北からの光で安定的な明かりを取り入れて、織物の色合いを見る工夫をしています。
同じ色のものでも、面積が大きいほうがより明るく鮮やかに見え、背景が白い場合と黒い場合では、黒い背景におかれているほうがより鮮やかに見えます。
個人差については、加齢とともに目の水晶体が変化していくため、当然のことながら年齢差により見えている色が異なってきます。また、人種の違いにより見えている色は若干異なっているとのことです。 以上のことから、製品の色を評価する時に、人間の目だけで色の差を判断するのは難しいため、測色機を用いて、客観的に色を数字で表すことが必要となってきます。

■色を立体的に数字で表す
色を数値で表現する方法として最も古いのは1905年に発表された「マンセル表色系」で、明るさの「明度」、色あいの「色相」、鮮やかさの「彩度」で表されます。
 その後、1931年以降は国際照明委員会CIEにより、人間の目と同じ3つのセンサで色を測り、X(赤)、Y(緑)、Z(青)の色刺激を表示したCIE表色系が普及するようになりました。
 現在では、1976年にCIEで規格化され、日本でもJIS Z8729 において採用されて広く普及している「L*a*b*表色系」で色を数値で、下図のように立体的に表すということが一般的です。
明度はL*で表し、白を100、黒を0として、数値が高くなればより明るいということを表します。
色相と彩度を示す色度をa*、b*で表します。+a*は赤方向を表し、-a*であれば補色の緑方向です。+b*は黄方向を表し、- b*であれば補色の青方向です。それぞれ数値が高くなるに従って、色が鮮やかとなり、逆に数値が低くなれば、くすんだ色を表します。
このように、色をL*a*b*の数値を用いて数字で表すことにより、客観的に評価することができます。

■測色機による測定とその利用
測色機を用いてL*a*b*により色を表すことで、この結果を用いて色の違いを数字で表すこともできます。
色の違いである色差は、L*a*b*表色系における2点間の距離の差で、次の式で表されます。
色差 僞*ab=(儉*)2+(兮*)2+(冀*)2
なお、一般に色差が0.5以内であれば、色の差はない目安とされていますが、人間の眼には0.5以内であっても微妙な色の違いがわかることもあります。
最もよく使われる具体的な例としては、見本の色と実際の生産品の色との色差を測定して基準以内であるかを確認することです。
また、太陽光に対する製品の色の劣化度合いを調べるために、製品の耐候性試験前後の色を測り、色差を出すことにより、変退色性を評価することができます。
さらに、繊維産業においては、糸や布を染める染色工場では、測色機を用いて、取引先から求められている色見本を表現できる染料の配合割合をコンピュータで計算させることも行われています。各種の染料を様々な濃度で染め、染色後の測色データをコンピュータに保存させておき、その結果を元に、色見本に最も近い色を出す染料の配合割合を計算させるというコンピュータカラーマッチングも行われています。