意匠糸について
尾張繊維技術センター

記事更新日.16.01

あいち産業科学技術総合センター 
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1. はじめに
意匠糸とは素材や色などの異なる糸を複数本組み合わせ、太さの変化やループ形状を持たせた装飾的な外観の糸であり、婦人衣料用のジャケットやインテリア織物などに使用されます。意匠糸は一般的に芯糸、浮き糸(ハナ糸)、押さえ糸からできており、外観によって非常に多くの種類があります。 ここでは、意匠糸の種類や作製方法についてご紹介します。

図1 代表的な紡糸法(イメージ図)

2. 意匠撚糸機   
意匠糸を作製するための撚糸機は製造工程上、二工程意匠撚糸機と一工程意匠撚糸機に分けられます。二工程意匠撚糸機は、一工程目で芯糸と浮き糸を撚り合わせて飾り部分を作り、二工程目で浮き糸のほつれなどを防ぐための押さえ糸を巻きつけるため、二回以上の撚糸工程が必要になります。

これに対し、一工程意匠撚糸機は中空スピンドルを用いることで一工程で意匠糸を製造することができます。芯糸と浮き糸は仮撚を加えられた状態で回転する中空スピンドルの内部を通過します。この際、中空スピンドルの外側にあるボビンから押さえ糸が供給され、芯糸と浮き糸に巻きつけられます。中空スピンドルから出てきたところで仮撚りはなくなり、引き揃えられた状態にある芯糸と浮き糸の周りに押さえ糸が巻きついた状態の意匠糸が得られます。

図2 当センター湿式紡糸機の概要

3. 意匠糸の種類 
1.リングヤーン、ループヤーン
 芯糸に対して浮き糸を多く供給し、芯糸の周りに浮き糸で連続的にループを形成させた糸です。ループが大きいものはループヤーン、浮糸の量を少なくしたものはリングヤーンと呼ばれます。また、浮き糸に強撚糸を用いることで、ループを崩して角状の突起を持たせたものはスナールヤーンと呼ばれます。

2.ノットヤーン、スラブヤーン
 浮き糸を多く供給する区間を不連続にすることで、芯糸に対して浮き糸で節をつけた糸をノットヤーンといいます。長めの大きな節を持たせたものはスラブヤーンと呼ばれます。

3.カバリング糸
 芯糸と鞘糸からできる糸で、芯糸の周りに連続的に鞘糸が巻き付けられた糸です。一方向に巻き付けるシングルカバーと S、Z両方向から巻き付けるダブルカバーがあります。芯にゴム糸やポリウレタンを用いることで、ストレッチ性を持たせた糸を作ることができます。芯糸を摩耗や擦れから保護したい場合などにも使用されます。
 意匠糸にはその他にもモール糸やリリアン糸などがあります。


図3 繊維断面拡大図(左)、ボビン巻繊維(中)、試作フェルト(右)

尾張繊維技術センターでは、一工程意匠撚糸機(オゼキテクノ叶サトライツイスターON−700NF−U)を所有しており、機器の貸し出しも行っています。お気軽にご利用ください。